タンパク質標識法により、タンパク質機能の理解に著しい進歩がもたらされてきた。しかし、現在使用できる標識法には不便な点があり、有用性に限界がある。タンパク質融合体、たとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させた融合体などは高い特異性を示すが、タグのサイズが大きいためにタンパク質の機能を妨害することがある。アプタマーなどペプチドを用いたラベルはそうでもないが、現在使用できるペプチドのタグは特異性が低いか、比較的不安定な非共有相互作用に依存している。Nature Methodsの2月号でChenらは、ペプチドのタグを用いた特異性の高い共有結合による標識法を報告している。この方法は2つのアプローチの利点を併せ持つ。
ビオチンリガーゼであるBirAは、15残基の受容体ペプチド(AP)内にある特定のリシル側鎖をビオチン化することが知られていた。同氏らは、APのタグを付けたタンパク質の検出にこの反応を利用するために、ケトンを含有するビオチン類似体(ケトン1、図1)を合成し、これを改良型「取っ手」として使用した。In vitroでBirAは、ケトン1がAPの受容体リジンに移動する反応を効果的に触媒した。ここで用いたAPは、シアン色蛍光タンパク質融合体と既に融合されたものであった(CFP-AP)。フルオレセインヒドラジドとケトン1の化学選択的反応が起こり、その結果ヒドラゾンが減少することで融合タンパク質が蛍光標識される。発現されたCFP-APは、抗体を用いた方法よりも高い感度で哺乳類細胞溶解液中に特異的に検出された。
細胞表面上に内因性ケトンが存在しないことを利用し、同氏らは生細胞の細胞表面タンパク質を標識して視覚化した。膜貫通ドメインに融合させることで細胞表面を標的にしたCFP-AP発現細胞(TM-CFP-AP)で、形質転換細胞において特定の膜に限局した標識化が観察された。その感度は20分以内に細胞1個あたりに検出される標識受容体のコピーが約106個というものであった(図2)。GFPは、上皮成長因子(EGF)受容体(EGFR)に融合させると受容体の機能を崩壊させることが知られている。これに対して、AP-EGFRは細胞内分布とEGFに対する反応が野生型EGFRに類似していた。このことからこの標識法は、受容体トラフィッキングへの新たな洞察を可能にするかもしれない。
Chenらが考察しているように、この標識法には限界がある。そのひとつは、細胞内にはケトンを含有する小分子が存在するため細胞内タンパク質の標識化は困難を伴う可能性があることである。さらに、標識化のタイムスケールによって、検討できる生物学的プロセスが限定される可能性も考えられる。こうした限界は考えられるものの、この方法は、細胞-細胞相互作用などの基本的な生物学的プロセスを研究するうえで、重要な新しい道を切り拓くことになるかもしれない。