Mycobacterium tuberculosisは創薬の標的とするには一筋縄ではいかないことが分かっており、この数十年間というもの新しい抗結核薬が登場していない。しかし、多剤耐性結核菌が見つかったいま、新しい治療薬が早急に必要とされている。Andriesらは、マイコバクテリアのATP合成酵素を標的とする新しいクラスの薬剤群であるジアリルキノリン化合物を見出したことをScienceの2005年1月14日号に報告している。
全細胞分析により同氏らは、Mycobacterium smegmatisの増殖を阻害する新しいクラスの小分子としてジアリルキノリン化合物を見出した。化学的最適化により最も活性の高かった阻害薬R207910がMycobacterium tuberculosisに対して抗菌活性を持っていることが分かり、その活性は現在の主な抗結核薬であるリファンピシンやイソニアジドを上回っていた。
ジアリルキノリン化合物は既存のキノロン系抗生物質の類縁物質であるが、構造がはっきり異なっていることから作用様式も異なると推測される。同氏らは、この薬剤の標的を特定するためにマイコバクテリアの複数の種のR207910耐性株を選択した。ところが、通常キノロン耐性が見つかるDNAジャイレース遺伝子変異が、どの株にもみられなかった。ゲノム全体のシーケンシングを行ったところ、ATP合成酵素のF0サブユニットの一部であるatpEの点変異が各耐性株に見つかった。野生型M. smegmatisにatpE変異体を導入するとR207910に耐性を示したことから、R207910はATP合成酵素を標的とすることが確認された。
In vivoでマウスに活性を示すのに必要なR207910の血清濃度は、ヒトでも十分に耐えうることが初期の研究から示唆されている。現在、臨床に向けた開発が行われており、薬剤耐性結核菌に対する新たな手段となるかもしれない。