特定の生物学的標的に対する小分子を迅速にスクリーニングできるようにした最近の技術進歩は、創薬プロセスを大きく向上させている。創薬と生物学的経路の解明には、標識を用いない高感度のスクリーニングを可能にする新たなデバイスの引き続きの開発が重要である。プロテインキナーゼが細胞シグナル伝達イベントに関連していることから、多くの疾患の治療に向けた生物学的標的としてこれらのキナーゼが注目されている。Proceedings of the National Academy of Sciences誌の3月1日号でWangらは、シリコンナノワイヤー(SiNW)を結合したキナーゼ(Abl)のナノセンサーを用いて、Ablとその天然リガンドであるATPとの相互作用を標識せずに検出する方法と、Ablアンタゴニストとの競合的阻害作用について報告している。
同氏らは、SiNW電界効果トランジスタ(FET)デバイスを使用して溶液中のタンパク質-リガンド結合を検出できることを示した。この研究から、マイクロフルイディクスチャネル内でタンパク質と結合したナノワイヤーを使用してタンパク質-リガンド結合の阻害をモニターすること、したがってこのワイヤーを小分子の生物学的スクリーニングのためのセンサーとして使用できることがわかる。同氏らの初期の研究は、AblとSiNWをつなげてATP結合を検出するためのAblナノセンサーをつくることに関係したものであった。負の電荷を帯びたATPの濃度が高くなると、これに対応して伝導率の変化が大きくなり、低濃度のATPでは特徴的な直線関係がみられるが、高濃度では飽和状態に達することを見出した。
次に同氏らは、逆にこのセンサーがATP-Abl結合阻害の検出器として効果があるかどうか検討した。ATP濃度を固定した場合に、AblアンタゴニストであるGleevec(イマチニブ)1(負の電荷を帯びていない)の濃度が高くなると、ATP結合で生じる伝導率変化のシグナルがこれに対応して減少することを見出した。ATP濃度の関数として伝導度の変化を測定したところ、Gleevecは競合的阻害物質として作用していることが示された(図1)。ATP-Abl結合の定量結果はこれまでに発表されている研究結果と一致しているが、同氏らが得たGleevecのKi値は、これまでに報告されている反応速度データを用いて求めた値よりも幾分低かった。そこで同氏らは、ATP-Abl結合センサーを使用し、AblアンタゴニストとしてGleevecのほかに類縁構造の3つの化合物をテストした。その結果、Gleevecはその構造類似体よりも強力な阻害物質であることが示され、これまでに発表されているデータと一致した。
同氏らは、濃度依存性のATP-Abl結合とGleevecによるその阻害が、SiNW FETデバイスの伝導度を測定することでモニターできることを実証した。SiNW FETを基にしたシステムを用いたリガンド-タンパク質相互作用の研究はまだ予備的な段階であり、また、表面プラズモン共鳴(SPR)など標識を用いない他の技術の動力学的分割も達成されていない。しかし、このシステムには、タンパク質の必要量がわずかなことや、大規模集積アレーに拡大できる高い感度と電位など、標識を必要としない他の方法を超える利点がいくつか存在する。