サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)は、細胞増殖とプログラムされた細胞死(PCD)のいずれをも刺激することができる。TNFα刺激によって起こる結果は、NF-κBとJun N末端キナーゼ(JNK)などの下流エフェクターの活性化に依存する。PCDの負の調節因子であるNF-κBのある細胞では、TNFαは一過性のJNK活性化を引き起こす。しかし、NF-κBのない細胞では、TNFαはJNKの構成的活性化を引き起こし、PCDを招く。Cell誌の3月11日号で鎌田らは、JNKホスファターゼにおける触媒性システイン残基の活性酸素種(ROS)を介する酸化によって、JNKの構成的活性化が起こることを示している。
NF-κBの欠損した線維芽細胞では、TNFαは細胞へのROSの蓄積を引き起こし、JNKの活性化を維持し、細胞死を招いた。野生型では、NF-κBの既知の標的であるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)がTNFαに応答して発現されたが、NF-κBの欠損した線維芽細胞ではこれが発現されなかった。NF-κB欠損細胞でのMnSODの異所性発現はROSの蓄積を減少させ、PCDを抑制した。同氏らは、in vivoではROSがNF-κBとJNKのクロストークを仲介すると結論している。
タンパク質のチロシンホスファターゼは、触媒性システイン残基の酸化によって不活性化されることが知られている。同氏らは、in vitroで過酸化水素がこのシステインの可逆的酸化を引き起こしてスルフェン酸(-SOH)とし、JNKホスファターゼ活性を用量依存性に阻害することを見出した。NF-κB欠損細胞では、TNFαが野生型JNKホスファターゼの酸化を誘発するが、活性部位のシステインがセリンに変異したホスファターゼには酸化を誘発しなかった。活性型チオレドキシン系を含む細胞では、JNKホスファターゼの酸化は可逆的であった。
同氏らは、TNFαがROSの生成を誘発するメカニズムを提案しており、このメカニズムはNF-κBの標的によって抑制されるか、あるいはJNKホスファターゼの不活性化またはPCDを招き得るとしている(図1)。今後は、TNFαによるROS生成のメカニズムを決定する研究が必要であろう。TNFα刺激は、JNKが一過性に活性化されるか構成的に活性化されるかによって、肝臓を再生させることも肝不全を起こすこともできる。したがって、ROSを抑制することは肝損傷を治療するうえで重要な要素であると考えられる。