Nature Physics Published online: 28 July 2005 | doi: 10.1038/nphys011
化学物理 火炎をシミュレートする
Andreas Trabesinger
火炎に関する数値モデルは、燃焼物理の分野に新たな見識をもたらし、もはや理論や実験の単なる補足ではなくなりつつある。
工業用、家庭用を問わずガス・バーナーは、エネルギー効率が高く、同時に汚染物質の排出量が少ないことが求められる。そのようなガス・バーナー開発の進展には、燃焼化学分野での成果や乱流火炎の実験が大きく貢献している。しかし、これらのアプローチにはいずれも限界がある。乱流は複雑な現象であり、その化学反応速度についてはまだ完全に理解されていないということ、また火炎3次元構造およびその内部プロセスを完全に解明することは相当数の実験を要することがその理由である。John Bellら1は、全米科学アカデミーに発表した論文の中で、最先端のコンピュータ・シミュレーションは、燃焼化学研究と乱流火炎実験との重要な橋渡しとなり、新たな見識をもたらすものであると述べている。
彼らの研究は、乱流V型火炎と呼ばれる種類の火炎について行われたものであるが、この火炎はNOxエミッションという点で好ましい特徴を有している。実験では、メタン・空気予混合燃料を直径5 cmのノズルから噴出することによって火炎を形成する。このノズルには、それに交差するように細い棒が取り付けられており火炎を安定させることができる。乱流は、ノズルの若干上流側に設けられた多孔板から発生する。
Bellらは、同じシナリオで、輸送プロセスと詳細な化学反応速度について20種類の化学種と84種類の素反応を考慮したシミュレーションを行い、12 cm四方の立方体の内部で燃焼する火炎を再現することができた。以前の研究では、火炎のシミュレーションの対象は2次元のみ、あるいは3次元であっても一辺が最大1 cmの立方体に限られていた。このように、1,000倍の大きさのシミュレーション・モデルを用いることで、著者らは実験室規模の火炎を詳細にわたって再現している。
実験と比較すると、このモデルが火炎の基本的形態および火炎内部のダイナミクスを極めて正確に再現していることが分かる(図1)。著者らは、この強力なツールを用いることで、火炎の内部メカニズムや実験では解析できない側面について徹底的に探索できると述べている。

図1:実際の火炎に匹敵するシミュレーション
Bellらのシミュレーション・モデルでは、乱流V型火炎(写真左)と実験室で発生させた火炎(写真右)とがよく一致していることを示している。
図のサムネイル画像は参考文献1((C)2005 全米科学アカデミー)からの許可を得て引用した。
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References
1 Bell, J. B. et al. Numerical simulation of a laboratory-scale turbulent flame. Proc. Natl Acad. Sci. 102, 10006−10011 doi:10.1073/pnas.0504140102 (2005)|Article|PubMed|ChemPort| |
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