Nature Physics Published online: 8 September 2005 | doi: 10.1038/nphys127
生物物理 | 統計物理 熱力学 非線形力学
非平衡
RNAなどの生体分子の折り畳みとほぐれは、非平衡熱力学の有用な検証となる。
原子間力顕微鏡と光ピンセットの技術は、単一分子程度の小さな系の特性研究に利用できる。例えばらせん形分子であるリボ核酸(RNA)は、機械的な引き伸ばしによって折り畳んだりほどいたりすることができる。一般に、分子は2つの形状間を高速で変化する。変化は非常に速く、周囲と熱平衡状態を保てないことが多い。したがって、そのような実験から有用な熱力学データが得られるとは考えられなかった。しかし、今週のNatureでDelphine Collinら1は、この分子の平衡状態について知ることが可能であることを示した。また、Delphine Collinらの研究は非平衡熱力学での最近の理論的な進歩をより確かなものにした。
古典的熱力学は、エネルギーが系内で移動するプロセスが熱を消費しないほどゆっくり起こるという意味において、平衡状態にある系あるいは少なくともそれに非常に近い系を扱う。しかし、近年の概念的進歩により、この可逆性を決定づける限界からはるかに離れて仕事がなされる系に関する熱力学的データが得られると期待される。非平衡径路に沿って消費された仕事は、Crooksのゆらぎ原理2によって平衡状態の自由エネルギーと関連付けることができる。引き伸ばされたRNA分子の場合には、折り畳まれた状態からほどけた状態に遷移することにより得られる有効仕事量(平衡状態の自由エネルギー)は、エネルギーが途中で消費される場合でも、この2つの状態間を遷移するのに必要な力を繰り返し測定することによって決定することが可能であることを示唆している。
Collinら1は、一連の実験でCrooksのゆらぎ原理を検証した。Collinらは、U字形のRNA分子およびRNAの三重らせん結合の折り畳みとほぐれに関するデータから驚くほどの精度で、折り畳まれたRNAの自由エネルギーを求めた。実際この方法の感度は高く、34対ある塩基のうちの1対によってその組成(4つの塩基、アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルから成る)が変化するRNA分子の折り畳みの自由エネルギー差を明らかにしている。
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References
- Collin, D. et al. Verification of the Crooks fluctuation theorem and recovery of RNA folding free energies. Nature 437, 231?234 doi:10.1038/nature04061 (2005) | Article | PubMed | ChemPort |
- Crooks, G. E. Entropy production fluctuation theorem and the nonequilibrium work relation for free energy differences. Phys. Rev. E 60, 2721?2726 doi:10.1103/PhysRevE.60.2721 (1999) | Article | ChemPort |
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