Nature Physics Published online: 22 September 2005 | doi: 10.1038/nphys146
凝縮系物理学
基礎としてのボーズ・アインシュタイン凝縮体
一滴に秘められた、優れた動力学に関する磁気共鳴画像が、非混和液間の相互作用についての理解を深めてくれるであろう。
ボーズ・アインシュタイン凝縮体は興味深い形態であり、基礎物理現象の高精度測定を行う上で有効な手段でもある。
ボーズ・アインシュタイン凝縮体(気体の極低温雲中で原子、あるいは分子が渾然一体とした量子状態に凝縮して生じる物質のエキゾチックな形態)の研究によって、物質の波動性に対する新たな理解が得られる。ボーズ・アインシュタイン凝縮体はそれ自体が研究に値するが、David HarberらはPhysics Review Aで別の見解を発表した1。David Harberらは、周囲の微妙な変化に対してボーズ・アインシュタイン凝縮体の挙動が高感度であることを利用して、量子力学的現象であるカシミール・ポールダー効果を実に正確に測定した。
昔から哲学者は「自然は真空を嫌う」と比喩的に述べているが、量子力学的にはまさにその通りである。宇宙の奥深くでも、ハイゼンベルクの不確定性原理によれば、ほぼ完全な真空では仮想粒子が常に生成と消滅を繰り返し、沸騰し泡立っている。その結果、帯電していない2枚の平行な導体板を十分近づけると、その間と両側の気泡真空は弱い引力を生じる。この現象は、カシミール効果2として知られている。同様の現象でカシミール・ポールダー効果3として知られる現象は、導体表面近くの中性原子(あるいは原子集団)の間に力を生じる。いずれも1948年に理論的に予言されたが、これらの効果によって生じる非常に小さな力を測定するには精密な実験を行わなければならず、実験的に証明されたのはほぼ50年もたってからであった4,5。
カシミール効果とカシミール・ポルダー効果を確認するための実験には感度の限界があり、これは比較的短い距離でのみテストできることを意味する。特にカシミール・ポルダー効果では、長い距離では予想された変化を測定することは不可能であった。しかし、ボーズ・アインシュタイン凝縮体の出現によって、この点は解消された。
ボーズ・アインシュタイン凝縮体は、絶対0度近傍の温度でのみ存在することができる。また、その特性と挙動は周囲の変化や他の外部からの影響に極めて敏感である。この感度は、惑星地殻の密度変動によって引き起こされる地球重力場の変化の検出から、ボーズ・アインシュタイン凝縮体を基礎としたジャイロスコープを搭載した飛行機の動きのモニターまで、超精密測定を行うのに理想的である。Harberら1はこの感度を利用して、石英ガラス表面付近に置かれ磁気的に閉じ込められたルビジウムボーズ・アインシュタイン凝縮体に作用する力の測定を行った。ボーズ・アインシュタイン凝縮体を振動させ、その振動周波数を測定することによって、ボーズ・アインシュタイン凝縮体に作用する力を求めることができる。また、シリカ表面への接近による寄与も推定される。
著者らの方法により、カシミール・ポルダー力をかつてないほどの精度で、しかも以前の研究よりも数倍大きい5〜10μmの原子面間隔で測定することに成功した。同時に、理論的に提唱された別の非ニュートン力(いわゆる湯川型の力)の発生に対して、より厳密な制限を加えることができた。著者らは今後、今回の研究と距離は同じであるが、高い表面温度で生じる熱によるカシミール・ポルダー効果からの偏向の研究に、この方法を応用したいと考えている。
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References
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