Practice Point

パクリタキセル溶出ステントは急性冠症候群患者に対して安全かつ有効か?

原論文

Moses JW et al. (2005) Outcomes with the paclitaxel-eluting stent in patients with acute coronary syndromes: analysis from the TAXUS-IV trial. J Am Coll Cardiol 45: 1165-1171

PRACTICE POINT(診療のポイント)

急性冠症候群患者には薬剤溶出ステントの使用を推奨すべきである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

薬剤溶出ステントは、ステント内再狭窄を低減するうえで有効であるが、プラーク破裂や血栓形成が認められることの多い急性冠症候群(ACS)患者に対して安全に使用できるか否かは研究で証明されていない。

OBJECTIVES(目的)

パクリタキセル溶出型のTAXUS®ステント(Boston Scientific Corporation, Natick, MA)は、ベアメタルステント(BMS)と比べて、ACS患者の転帰を改善することができるか否かを検討すること。

DESIGN(デザイン)

前向き二重盲検多施設共同TAXUS-IV試験は、安定または不安定な虚血性症候群を有する18歳以上の患者を対象とした。今回のサブスタディでは、不安定狭心症で非ST上昇心筋梗塞を最近発症した患者のみを解析の対象とした。組み入れ基準は、native冠動脈に直径2.5~3.75mmの対照血管と長さ10~28mmの単一の新規病変を有し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を必要とする患者とした。除外基準は、急性のST上昇心筋梗塞、血管造影で認められる血栓、冠動脈の完全閉塞とした。

INTERVENTION(介入)

全患者に対してPCI施行前にクロピドグレル300mgとアスピリン325mgを投与し、パクリタキセル溶出ステント群とBMS群に無作為に割り付けた。PCI施行後、両群の患者にクロピドグレル75mgの連日投与を6カ月以上、アスピリン325mgの連日投与を無期限で継続した。1、4、9、12ヵ月後とそれ以降5年間は年1回、患者の臨床的追跡評価を行った。9カ月後の追跡評価では血管造影検査も行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

この試験では、標的血管の血行再建術、心筋梗塞、心臓関連死を含む主要な有害心イベントの発生率を評価した。

RESULTS(結果)

組み入れた患者1,314例中450例がACSを有し、このうち237例にパクリタキセル溶出ステント、213例にBMSを留置した。30日後の時点では、ACS患者に対するパクリタキセル溶出ステントの効果はBMSと変わらなかった。しかし1年後には、パクリタキセル溶出ステント群のACS患者はBMS群のACS患者と比べて、標的病変の血行再建術施行率(3.9%対16.0%、P <0.0001)、標的血管血行再建術施行率(6.5%対17.7%、P=0.0003)、主要な有害心イベント発生率(11.1%対21.7%、P=0.003)が有意に低かった。さらに、パクリタキセル溶出ステント群は、BMS群と比べて心筋梗塞の発生率が37%低かった。パクリタキセル溶出ステントを留置したACS患者と非ACS患者を比較した多変量解析では、1年後にステント内再狭窄がないことがACSから独立して予測されることが判明した(ハザード比0.27、95%CI 0.08~0.97、P=0.044)。さらに、BMS群に割り付けられたACS患者と非ACS患者の多変量解析では、ACSによって再狭窄の発生が独立して予測されることが判明した(ハザード比2.03、95%CI 1.05~3.92、P=0.0035)。

CONCLUSION(結論)

ACS患者において、TAXUS®ステントはBMSと比較して安全であり、標的病変の血行再建術施行と主要な有害心イベントの発生頻度を有効に低下させる。

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COMMENTARY(解説)

J Eduardo Sousa*, Eduardo Missel, Alexandre Abizaid and Amanda Sousa

FRISC II試験1、TACTICS試験2、 RITA-3試験3で証明されたように、複雑で脆弱な病変に対するBMSとPCIの併用によって、特に糖蛋白IIb/IIIa阻害薬を併用した場合、30日後の虚血イベントが有意に減少した。このような改善にもかかわらず、追跡6カ月後の再狭窄の発生頻度は依然として高い。したがって、シロリムス溶出型およびパクリタキセル溶出型のポリマーベースのステントは、この晩期の有害転帰を克服するために魅力的な選択肢となる。予備的なデータから、薬剤溶出ステントはACS患者に対して安全で、BMSより有効性が高いことが示唆されている。

現在までに存在するデータは、以前の無作為化試験や登録症例に関する事後解析に限定されている。RESEARCH登録4では、ACS患者198例を対象にシロリムス溶出型のCypher®ステント(Cordis Corporation, Miami Lakes, FL)が評価され、BMSを留置したACS患者から成る対照群と比較された。糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の使用量はBMS群のほうが多かったにもかかわらず、最初の1カ月間の主要な有害心イベントの発生率は両群で同等であった(6.1%と6.6%、P=0.8)。ステント血栓症の発生率は、シロリムス溶出ステント群の患者でわずか0.5%、対照群患者で1.7%であった(P = 0.4)。

薬剤溶出ステントを留置したACS患者と安定狭心症患者を対象にしたもっとも大規模な比較試験は、シロリムス溶出ステントを留置したACS患者1,887例とシロリムス溶出ステントを留置したACSのない対照患者2,982例を比較したGerman Cypher Registry5である。亜急性のステント血栓症、死亡、非致死的心筋梗塞の発生率は同等で、シロリムス溶出ステントはこの条件下で安全かつ有効であることが証明された。標的血管に対する血行再建術の施行率も、追跡6カ月後の時点で同等であり、シロリムス溶出ステントによる再狭窄の減少はACS患者でも当てはまることが確認された。

Mosesらが行った今回のTAXUX-IV試験の事後解析で得られた結果は、これらの予備的研究の結果に類似しており、標的血管に対する血行再建術の施行率が顕著に低下し、追跡初期と後期の転帰が同様であった。冠動脈で血栓が形成されやすいACSにおいてさえ、追跡1年後の時点で、パクリタキセル溶出ステントを留置した場合の亜急性血栓症の発生率はBMS患者と同等であったことから、安全性は大きな懸念とならなかった。この条件下におけるパクリタキセル溶出ステントの有益性は、新生内膜増殖の抑制だけにとどまらない。興味深いことに、Mosesらは多変量解析によって、パクリタキセル溶出ステント群ではACSが、12カ月後に再狭窄がないことに対する独立した予測因子であることを明らかにした。BMS群ではその逆が認められた。もう1つの予測外の利益は、標的血管に対する血行再建術の施行率と主要な複合有害心イベントの発生率が、パクリタキセル溶出ステント群では9~12カ月の間不変であったのに対し、BMS群では上昇したことであった。この事実から、パクリタキセルの抗炎症作用と抗増殖作用が、ACS患者の転帰に重要な役割を果たす可能性があるという仮説が導かれる。

以上をまとめると、シロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントはともに、このACS患者集団に対して安全かつ有効である。これらの新しい医療器具は、臨床で初めて使用されて以来、その適応は拡大し続けている。しかしながら、クロピドグレル療法の期間と用量や、糖蛋白IIb/IIIa阻害に関して、最適な補助的薬物療法の構成は依然として不明であるため、今後の研究でこれらを評価しなければならない。

Acknowledgments

The synopsis was written by Hannah Camm, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. FRagmin and Fast Revascularization during InStability in Coronary artery disease Investigators (1999) Invasive compared with non-invasive treatment in unstable coronary-artery disease. FRISC II prospective randomised multicenter study. Lancet 354: 708–715 | ISI |
  2. Cannon CP et al.; TACTICS TIMI 18 Investigators (2001) Comparison of early invasive and conservative strategies in patients with unstable coronary syndromes treated with tirofiban. N Engl J Med 344: 1879–1887 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Fox KA et al. (2002) Interventional versus conservative treatment for patients with unstable angina or non-ST myocardial infarction; The British Heart Foundation RITA-3 randomised trial. Lancet 360: 743–751 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  4. Lemos PA et al. (2003) Early outcome after sirolimus-eluting stent implantation in patients with acute coronary syndromes: insights from the Rapamycin-Eluting Stent Evaluated At Rotterdam Cardiology Hospital (RESEARCH) Registry. J Am Coll Cardiol 41: 2093–2099 | Article | PubMed | ISI |
  5. Zahn R et al.; German Cypher Stent Registry (2005) Incidence and predictors of target vessel revascularization and clinical event rates of the sirolimus-eluting coronary stent (results from the prospective multicenter German Cypher Stent Registry). Am J Cardiol 95: 1302–1308 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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