EuroSCOREは心臓手術後の長期成績を正確に予測できるか?
原論文
De Maria R et al. (2005) Predictive value of EuroSCORE on long term outcome in cardiac surgery patients: a single institution study. Heart 91: 779–784
PRACTICE POINT(診療のポイント)
EuroSCOREは、心臓手術後の長期死亡率を予測し、後期成績のリスク補正を可能にする。また手術の適応を判定し、外科医と施設の品質監視を可能にする
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
開心術を受けた患者19,000例以上のデータを用いてヨーロッパ心臓手術リスク評価システム(European system for cardiac operative risk evaluation:EuroSCORE)が作成された。このスコアシステムは検証済みで、心臓手術後の周術期死亡を予測するための正確なモデルとなっている。
OBJECTIVES(目的)
EuroSCOREを用いて、心臓手術を受けた患者の長期無イベント生存率を予測できるか否かを明らかにすること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
この単一施設観察研究では、2000年1月~2002年8月に心臓手術を受けた成人患者に対し、EuroSCOREを用いて長期死亡率を予測した。入院時と手術時に患者の情報を記録した。National Death Indexと、患者の退院およびその後の入院の詳細を含むRegional Health Databaseを用いて成績を追跡調査した。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
複合主要エンドポイントは、死亡または心血管イベントによる入院とした。
RESULTS(結果)
この研究では1,230例の患者(平均65歳、男性68%)を対象とした。EuroSCOREは、低リスク患者の1.22±0.82から高リスク患者の10.85±2.24の範囲で、平均は4.53±3.16であった。全体で、366例を低リスク(EuroSCORE 0~2)、442例を中リスク(EuroSCORE 3~5)、288例を高リスク(EuroSCORE 6~8)、134例を超高リスク(EuroSCORE 9以上)に分類した。高リスク群または超高リスク群患者の入院期間は、中リスク群、低リスク群患者に比べて有意に長かった。高リスク群、超高リスク群患者では、死亡率も有意に高かった(低リスク群0.8%、中リスク群1.1%、高リスク群4.5%、超高リスク群9.7%、<I>P</I><0.0001)。合計34例(2.8%)が最初の入院中に死亡した。残りの1,196例のうち227例は、死亡または心血管イベントによる入院の複合主要エンドポイントに達し、969例は心血管イベントを発症せずに追跡期間を完了した。この試験の経過中に44例(3.7%)が死亡したが、そのうち20例には死亡前のイベントはなく、24例は心血管イベントによる入院中に死亡した。多変量解析によると、最初の心臓手術後に生存していた患者1,196例において、EuroSCOREは長期の全死因死亡率に対するもっとも優れた独立した予測因子であった(ハザード比1.55、95%CI 1.03~2.34、<I>P</I><0.0001)。EuroSCOREが高い患者はそれだけ死亡リスクも高かった。高いEuroSCORE、2種類以上の疾患、96時間以上集中治療を受けること、これらはすべて、死亡または心血管イベントによる入院の独立した予測因子であった(すべて<I>P</I><0.0001)。多くの場合、治療と追跡の費用はEuroSCOREの上昇とともに増加した。
CONCLUSION(結論)
EuroSCORE は、心臓手術後の患者において、心血管イベントのない長期生存を正確に予測できる。
KEYWORDS(キーワード)
心臓手術, EuroSCORE, リスクスコア
COMMENTARY(解説)
Karol E Watson, Benjamin Ansell, and Gregg C Fonarow
FRISC冠動脈石灰化は心血管イベントの予測を可能にし、また石灰化の進行は将来のイベントを予測することが示されている1。脂質低下療法は心血管イベントリスクを減少させるため、高脂血症の閉経後女性に対して積極的脂質低下療法を行えば、標準的脂質低下療法よりも効果的に冠動脈石灰化を遅延させるであろう、というのがBELLESの前提であった。1年後、両治療群では石灰化の速度に差はなかった。しかしこれは、冠動脈石灰化の知見に照らして道理にかなっているであろうか。
細胞生物学的、分子生物学的研究によって、冠動脈石灰化は、リン酸カルシウム結晶が受動的に蓄積されるのではなく、制御された過程であることが明らかになっている。研究により、この過程の制御における、脂質と炎症刺激の予想される役割が特定され、また疫学的研究により、高脂血症と血管石灰化との関連が示されている。冠動脈石灰化は、年齢に関係なくLDLコレステロールと相関し、またin vitroでは、炎症刺激によって血管内皮細胞の石灰化が促進される。酸化を抑えたLDLコレステロールとイソプロスタグランジンE2、および炎症性サイトカイン、単球-マクロファージ系の活性化は、骨芽細胞マーカーであるアルカリホスファターゼの発現と石灰化を促進する2。以前の研究では、脂質低下療法はサルとヒトにおいて、冠動脈石灰化を阻止することが示唆された3。しかし現在では、Aradらの無作為化プラセボ対照試験により、このような所見は疑問視されている4。
薬剤溶出BELLESにおいて、短期の単剤療法と古いCAC定量化手法によっては治療群間の差は示されなかったが、これは冠動脈石灰化の複雑さを考慮すれば意外なことではない。そのうえこの研究は、プラセボ比較ではなく実薬比較試験であった。しかし、これらの限界にもかかわらず、BELLESは興味深い問題を提起している。積極的療法群のLDLコレステロール値は望ましいものとみなされたが(平均2.4mM[92.2mg/dL])、それでも冠動脈石灰化は1年間で15.1%増加した。また標準的療法群では、LDLコレステロール値はそれほど良好ではなかったにもかかわらず(平均3.3mM[129mg/dL])、石灰化の増加は同程度であった(14.3%)。さらに、CACの変化率とLDLコレステロール低下率とのあいだに相関関係はみられなかった。
LDLコレステロールを1.8mM(70mg/dL)以下に低下させることは、2.6mM(100mg/dL)前後に低下させることに比べて、大幅にリスクを減少させることが研究によって立証されている。したがって、1年を通じた冠動脈石灰化の遅延を示すには、LDLコレステロールを、BELLESの結果より大幅に低下させることが必要かもしれない。あるいは、冠動脈石灰化は、積極的にリスクを減少させる方法の有効性を示すよりは、その候補者を特定するうえで有効であることが証明されるのかもしれない。
以上興味深いことに、Raggiらの発見によると、閉経後女性に対する積極的療法と標準的療法はどちらも適度に安全であり、またホルモン補充療法は冠動脈石灰化の進行に影響を及ぼさなかった。そのうえ、両スタチン投与群における冠動脈石灰化はきわめてわずかで、スタチン非投与患者における報告よりも少なかった4。
スタチンはさまざまな患者の心血管罹患率と死亡率を低下させる。これはベースライン時に心血管リスクの高かった患者で顕著である5。したがって、冠動脈石灰化に与え得る影響がどのようなものであっても、スタチン療法は依然としてきわめて有用である。さらにBELLESでは、冠動脈石灰化においてスタチンが果たし得る役割は否定されておらず、基本的メカニズムと治療上の意義に関してさらなる研究が必要である。
Acknowledgments
The synopsis was written by Hannah Camm, Associate Editor, Nature Clinical Practice.
References
- Toumpoulis IK et al. (2004) European system for cardiac operative risk evaluation predicts long-term survival in patients with coronary artery bypass grafting. Eur J Cardiothorac Surg 25: 51–58 | Article | PubMed |
- Toumpoulis IK et al. (2005) EuroSCORE predicts long-term mortality after heart valve surgery. Ann Thorac Surg 79: 1902–1908 | Article | PubMed | ISI |
- Toumpoulis IK et al. (2005) Does EuroSCORE predict long-term mortality after cardiac surgery? Circulation 111: e315 | ISI |
- Nilsson J et al. (2004) EuroSCORE predicts intensive care unit stay and costs of open heart surgery. Ann Thorac Surg 78: 1528–1534 | Article | PubMed | ISI |
- Pinna PP et al. (2003) Can EuroSCORE predict direct costs of cardiac surgery? Eur J Cardiothorac Surg 23: 595–598 | PubMed |
