Practice Point

閉経後女性の血管石灰化を遅らせるには、積極的脂質低下療法と標準的脂質低下療法のどちらがより有効か?

原論文

Raggi P et al. (2005) Aggressive versus moderate lipid-lowering therapy in hypercholesterolemic postmenopausal women: Beyond Endorsed Lipid Lowering with EBT Scanning (BELLES). Circulation 112: 563–571

PRACTICE POINT(診療のポイント)

冠動脈石灰化の進行に対する効果はみられなかったにもかかわらず、スタチン療法は依然として有用である。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

理論上は、アテローム性硬化のマーカーである冠動脈カルシウム(CAC)の蓄積は、脂質低下療法によって遅らせることができる。しかし、女性に限定した脂質低下療法の効果を調べた試験はわずかしかない。

OBJECTIVES(目的)

脂質低下療法は、高コレステロール血症の閉経後女性において、血管石灰化を遅らせることが可能かどうか、またCACの蓄積を遅らせるうえで、積極的療法は標準的療法より効果があるかどうかを明らかにすること。

DESIGN(デザイン)

多施設共同二重盲検無作為化前向き試験であるBeyond Endorsed Lipid Lowering with Electron Beam Tomography Scanning(BELLES)試験では、55~75歳の閉経後(ホルモン補充療法を受けたことのある、または1年以上月経のない)女性を対象とした。適格基準は、冠動脈性心疾患(CHD)、CHDと同等のリスク、または2つ以上の危険因子と10~20%のCHD10年リスクをもつ女性で、LDLコレステロールが3.1mM(130mg/dL)以上であることとした。CHD危険因子が2つ以上でCHD10年リスクが10%未満の女性の場合は、LDLコレステロール値は4.1mM(160mg/dL)以上とした。除外基準は、スタチンに対する禁忌、コントロール不良の1型または2型糖尿病、および試験開始前3カ月間の脂質低下薬による治療とした。

INTERVENTION(介入)

全患者に試験の開始時に電子ビームCT(EBT)を実施し、カルシウム量スコア(CVS)を測定した。試験への組み入れには30以上のCVSを必要とした。適格患者を、アトルバスタチン毎日80mg投与群(積極的治療群)、またはプラバスタチン毎日40mg投与群(標準的治療群)に無作為に割り付けた。追跡調査には、12ヵ月後のEBTスキャンなどを実施した。EBT結果の評価は盲検化した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

有効性の主要評価項目は、試験開始時と終了時の間の冠動脈の総CVSの変化率とした。有効性の副次評価項目として、試験期間中の冠動脈CVSの絶対変化と変化率、各血管における総CVSの絶対変化、および試験期間中の脂質プロファイルの変化を測定した。

RESULTS(結果)

合計615例の女性を適格とし、うち475例が試験を完了した。218例を積極的脂質低下療法に、257例を標準的脂質低下療法に割り付けた。試験終了時、積極的治療を受けた患者の平均LDLコレステロール値は、標準的療法を受けた患者より有意に低かった(2.4mM[92mg/dL]対3.3mM[129mg/dL]、P<0.0001)。LDLコレステロールの目標値に達した患者数は、積極的治療群のほうが標準的療法群より有意に多かった。さらに総コレステロール、トリグリセリド、アポリポ蛋白Bの値も、積極的療法群の方が標準的療法群より有意に低かった(すべてP<0.0001)。総CVSの変化率は両群で差はなく、LDLコレステロール値の変化とCVSの変化のあいだに関連はみられなかった。

CONCLUSION(結論)

閉経後女性において、積極的脂質低下療法は標準的療法に比べてLDLコレステロールを低下させたが、CAC蓄積の遅延に関しては標準的療法より有効とは言えなかった。

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COMMENTARY(解説)

Karol E Watson, Benjamin Ansell, and Gregg C Fonarow

FRISC冠動脈石灰化は心血管イベントの予測を可能にし、また石灰化の進行は将来のイベントを予測することが示されている1。脂質低下療法は心血管イベントリスクを減少させるため、高脂血症の閉経後女性に対して積極的脂質低下療法を行えば、標準的脂質低下療法よりも効果的に冠動脈石灰化を遅延させるであろう、というのがBELLESの前提であった。1年後、両治療群では石灰化の速度に差はなかった。しかしこれは、冠動脈石灰化の知見に照らして道理にかなっているであろうか。

細胞生物学的、分子生物学的研究によって、冠動脈石灰化は、リン酸カルシウム結晶が受動的に蓄積されるのではなく、制御された過程であることが明らかになっている。研究により、この過程の制御における、脂質と炎症刺激の予想される役割が特定され、また疫学的研究により、高脂血症と血管石灰化との関連が示されている。冠動脈石灰化は、年齢に関係なくLDLコレステロールと相関し、またin vitroでは、炎症刺激によって血管内皮細胞の石灰化が促進される。酸化を抑えたLDLコレステロールとイソプロスタグランジンE2、および炎症性サイトカイン、単球-マクロファージ系の活性化は、骨芽細胞マーカーであるアルカリホスファターゼの発現と石灰化を促進する2。以前の研究では、脂質低下療法はサルとヒトにおいて、冠動脈石灰化を阻止することが示唆された3。しかし現在では、Aradらの無作為化プラセボ対照試験により、このような所見は疑問視されている4

薬剤溶出BELLESにおいて、短期の単剤療法と古いCAC定量化手法によっては治療群間の差は示されなかったが、これは冠動脈石灰化の複雑さを考慮すれば意外なことではない。そのうえこの研究は、プラセボ比較ではなく実薬比較試験であった。しかし、これらの限界にもかかわらず、BELLESは興味深い問題を提起している。積極的療法群のLDLコレステロール値は望ましいものとみなされたが(平均2.4mM[92.2mg/dL])、それでも冠動脈石灰化は1年間で15.1%増加した。また標準的療法群では、LDLコレステロール値はそれほど良好ではなかったにもかかわらず(平均3.3mM[129mg/dL])、石灰化の増加は同程度であった(14.3%)。さらに、CACの変化率とLDLコレステロール低下率とのあいだに相関関係はみられなかった。

LDLコレステロールを1.8mM(70mg/dL)以下に低下させることは、2.6mM(100mg/dL)前後に低下させることに比べて、大幅にリスクを減少させることが研究によって立証されている。したがって、1年を通じた冠動脈石灰化の遅延を示すには、LDLコレステロールを、BELLESの結果より大幅に低下させることが必要かもしれない。あるいは、冠動脈石灰化は、積極的にリスクを減少させる方法の有効性を示すよりは、その候補者を特定するうえで有効であることが証明されるのかもしれない。

以上興味深いことに、Raggiらの発見によると、閉経後女性に対する積極的療法と標準的療法はどちらも適度に安全であり、またホルモン補充療法は冠動脈石灰化の進行に影響を及ぼさなかった。そのうえ、両スタチン投与群における冠動脈石灰化はきわめてわずかで、スタチン非投与患者における報告よりも少なかった4

スタチンはさまざまな患者の心血管罹患率と死亡率を低下させる。これはベースライン時に心血管リスクの高かった患者で顕著である5。したがって、冠動脈石灰化に与え得る影響がどのようなものであっても、スタチン療法は依然としてきわめて有用である。さらにBELLESでは、冠動脈石灰化においてスタチンが果たし得る役割は否定されておらず、基本的メカニズムと治療上の意義に関してさらなる研究が必要である。

Acknowledgments

The synopsis was written by Hannah Camm, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Greenland P et al. (2004) Coronary artery calcium score combined with Framingham score for risk prediction in asymptomatic individuals. JAMA 291: 210–215  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Parhami F et al. (1997) Lipid oxidation products have opposite effects on calcifying vascular cell and bone cell differentiation: a possible explanation for the paradox of arterial calcification in osteoporotic patients. Arterioscler Thromb Vasc Biol 17: 680–687  | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Callister TQ et al. (1998) Effect of HMG-CoA reductase inhibitors on coronary artery disease as assessed by electron-beam computed tomography. N Engl J Med 339: 1972–1978  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  4. Arad Y et al. (2005) Treatment of asymptomatic adults with elevated coronary calcium scores with atorvastatin, vitamin E, and vitamin C. J Am Coll Cardiol 46: 166–172  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  5. Heart Protection Study Collaborative Group (2002) MRC/BHF Heart Protection Study of cholesterol lowering with simvastatin in 20,536 high-risk individuals: a randomised placebo-controlled trial. Lancet 360: 7–22  | Article |

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