Practice Point

急性冠症候群患者に対する早期侵襲的治療は選択的侵襲的治療に勝るか?

原論文

Fox KA et al. (2005) 5-year outcome of an interventional strategy in non-ST-segment elevation acute coronary syndrome: the British Heart Foundation RITA 3 randomized trial. Lancet 366: 914-920

PRACTICE POINT(診療のポイント)

非ST上昇型急性冠症候群を呈する高リスク患者において、早期侵襲的治療は主要な心イベントのリスクを有意に減少させる。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

ST部分の上昇がみられない急性冠症候群(ACS)の高リスク患者には、保存的治療戦略ではなく早期侵襲的治療戦略が有益であると考えられるが、その長期的効果は明らかにされていない。

OBJECTIVES(目的)

保存的治療戦略より早期侵襲的(介入的)治療戦略により、非ST上昇型のACS患者でより良好な長期的転帰がみられるか否かを検討すること。

DESIGN(デザイン)

英国で実施された多施設共同の不安定狭心症無作為化介入試験(multicenter Randomized Intervention Trial of unstable Angina:RITA)3では、ST部分の上昇のないACS患者を組み入れた。心臓マーカー血清値の上昇、あるいは心電図・動脈造影により確認された冠動脈疾患に伴う心臓痛のある患者を適格とした。患者に血管再建術が必要な場合は除外し、保存的治療戦略と早期侵襲的治療戦略の両方に適格と代行医が判断した場合のみ、治療に割り付けた。

INTERVENTION(介入)

すべての患者を、初回の心臓痛から48時間以内に、介入的治療戦略あるいは保存的治療戦略に無作為に割り付けた。介入的手法に割り付けた患者には、その後72時間以内に血管造影を施行し、その所見を治療法決定のための指針とした。血管径の70%以上の狭窄がみられる病変があった場合、あるいは左冠状動脈に50%以上の狭窄があった場合、血管再建術を実施した。保存的治療に割り付けられた患者へは、運動試験、負荷心臓超音波検査、核血流スキャン(nuclear perfusion scanning)により虚血が観察された場合、あるいは抗狭心症薬の投与にもかかわらず狭心症を発現する場合、血管造影法を施行した。解析はすべて、intention to treat方式で行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要エンドポイントは、死亡あるいは非致死的心筋梗塞(MI)の複合とした。

RESULTS(結果)

患者1,810例のうち895例が介入的治療を、915例が保存的治療を受けた。追跡調査期間の中央値は5年であった。介入的治療群の患者は、保存的治療群の患者よりも試験開始後28日間の血管再建術の施行数が多かった(45%対13%)。1年後、主要エンドポイントの発生は2群で同様であった。しかし5年後、死亡した患者あるいはMIを発現した患者は、介入的治療群のほうが保存的治療群よりも少なく、主要エンドポイントに到達したのは介入群では142例(16.6%)であったのに対し、保存群では178例(20.0%)であった(オッズ比0.78、95%CI 0.61~0.99、P=0.044)。心血管関連の死亡あるいはMIの発生数も、介入群のほうが保存群よりも少なかった(105例対139例、オッズ比0.74、95%CI 0.56~0.97、P=0.03)。とくに、リスクによって解析すると、死亡あるいはMIの高リスク患者が、介入的治療戦略により最大の利益を得ていた(P=0.039)。

CONCLUSION(結論)

非ST上昇型ACS患者に対する早期侵襲的治療は、とくに高リスク患者に対して長期にわたる追加的利益をもたらす。したがって、患者に徴候が現れたさいに実施すべきである。

KEYWORDS(キーワード)

急性冠症候群, 血管造影, 血管再建術

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COMMENTARY(解説)

Michael E Bertrand

過去10年においてACSは医療における大きな問題点の1つとなり、毎年何百万もの患者が入院している。2000年には非ST上昇型のACSを呈する患者管理のためのガイドラインが欧州心臓学会議(European Society of Cardiology:ECS)、米国心臓学会議(American College of Cardiology:ACC)、米国心臓協会(American Heart Association:AHA)により発表され、2002年に新版が出された1,2。これらのガイドラインは、ACSを呈する高リスク患者に対して侵襲的手技、すなわち体系的な血管造影法と、必要な場合は経皮的冠動脈インターベンションあるいは冠動脈バイパスグラフト手術による血管再建術を推奨している。この戦略は、介入的(侵襲的)治療と保存的(非侵襲的)治療を比較した5件の臨床研究の結果に基づいて案出された。TIMIIIIB(Thrombolysis in Myocardial Infarction IIIB)試験とVANQWISH(Veterans Affairs Non-Q-Wave Infarction Strategies in Hospital)試験が冠動脈ステントの普及以前に実施されているが、これらの試験による知見は現在ではあまり取り上げられない。しかしFRISCII(Fragmin and Fast Revascularization during Instability in Coronary Artery Disease II)試験3、TACTICS(Treat Angina with Aggrastat and determine Cost of Therapy with an Invasive or Conservative Strategy)試験4、RITA3研究は、侵襲的戦略の利益を実証した。

RITA3は、非ST上昇型ACS患者に対する侵襲的治療と保存的治療を比較した3件の大規模試験のうちの1つであり、その中で追跡調査期間が最長である(患者群の91%に4年間、59%に5年間の追跡調査を実施している)。共通の主要エンドポイントは、4カ月後の死亡・非致死的MI・治療不応性虚血の複合と、1年後の死亡・非致死性MIの複合であった。4カ月後の死亡・非致死性MI・治療不応性虚血といった共通のエンドポイントの発生は、侵襲的戦略群のほうが保存的戦略群より有意に少なかった(リスク減少0.66、95%CI 0.51~0.85、P<0.001)。1年後の死亡と非致死性MIの発生は両治療群で同等であったが、RITA3の開始以降MIの定義が改訂された。MIの新基準を適用した場合、TACTICS試験4やFRISCII試験3と同様に、RITA3のデータは侵襲的戦略群における死亡とMIの発生に有意な減少を示すと考えられる。

RITA3に関するこの論文において、Foxらは非ST上昇型ACS患者における介入的戦略の長期的転帰を報告している。5年の追跡調査後、死亡あるいはMIを複合した率は、介入的治療群のほうが保存的治療群より有意に低かった(P=0.044)。

RITA3は3点の重要な知見を強調している。まず第1に、過去の試験における追跡調査期間は比較的短期であり(TACTICS4で6カ月、FRISCII3で2年、ICTUS5(Invasive versus Conservative Treatment in Unstable Coronary Syndrome)で1年)、初期の利益は一時的にすぎない可能性がある。死亡とMIの減少の点では、利益は長期にわたり増加することをRITA3は証明している。

第2に、高リスク患者における介入的治療の利益が広く観察され、ESC、ACC/AHAガイドラインにも記述されているように、侵襲的治療法はこれらの患者に対して概ね適切である。最後に、より重要な点は、介入的戦略により非ST上昇型ACS患者の生存の改善が示されるのはこれが2度目ということである。FRISCII試験では、介入的戦略による2年の追跡調査後の生存の改善が証明された。しかし、われわれはいまやRITA3のデータを手にしており、そこでは介入的治療において保存的治療と比較したさいに、追跡調査5年後の死亡率低下(24%)への有意ではないが確かな傾向が示されている。

Acknowledgments

The synopsis was written by Hannah Camm, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Bertrand ME et al. (2002) Management of acute coronary syndromes in patients presenting without persistent ST-segment elevation. Eur Heart J 23: 1809–1840  | Article | PubMed | ISI |
  2. Braunwald E et al. (2002) ACC/AHA 2002 guideline update for the management of patients with unstable angina and non-ST-segment elevation myocardial infarction—summary article: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association task force on practice guidelines (Committee on the Management of Patients With Unstable Angina). J Am Coll Cardiol 40: 1366–1374  | Article | PubMed | ISI |
  3. Lagerqvist B et al. (2002) A long-term perspective on the protective effects of an early invasive strategy in unstable coronary artery disease: two-year follow-up of the FRISC-II invasive study. J Am Coll Cardiol 40: 1902–1914  | Article | PubMed | ISI |
  4. Cannon CP et al. (2001) Comparison of early invasive and conservative strategies in patients with unstable coronary syndromes treated with the glycoprotein IIb/IIIa inhibitor tirofiban. N Engl J Med 344: 1879–1887  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  5. de Winter RJ et al. (2005) Early invasive versus selectively invasive management for acute coronary syndromes. N Engl J Med 353: 1095–1104  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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