生体腎ドナーはMRIのみを使用して正確に評価できるか?
原論文
El-Diasty TA et al. (2005) Magnetic resonance imaging as a sole method for the morphological and functional evaluation of live kidney donors. BJU Int 96: 111–116
PRACTICE POINT(診療のポイント)
MRIは、生体腎ドナーの腎構造の包括的評価に利用でき、また片腎機能を測定できる可能性がある。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
腎の構造と機能の評価は、腎ドナーとしての適格性の判定に必要である。形態と機能評価を組み合わせたMRI技術は、対象者の評価を1回のセッションで行うことができ、コントラスト増強CTに伴う腎症や放射線暴露のリスクはない。
OBJECTIVES(目的)
生体腎ドナーの腎構造と腎機能の評価において、ガドリニウム磁気共鳴(MR)血管造影(MRA)、MR腎造影、MR尿路造影(MRU)を組み合わせた撮像法の精度を評価すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
2003年1月~12月、連続した腎ドナー候補者を前向きに登録した。形態評価としては、ガドジアミド3~4mL/秒の投与後、冠状面高速スポイルド3DGREシーケンスを用いて、集合管系、腎動脈、および腎静脈を撮像した。機能評価としては、ガドジアミド投与後、冠状面高速スポイルド3D GREシーケンスを用い、10回の収集を行った。腎構造のMR画像を、腎摘除術の所見と比較した。各腎臓に対する排泄率を、時間に対する増強単位としてグラフ化した。(非造影画像と比較して)グラフから得られた腎peak enhancement、腎体積、および大動脈相対peak enhancementから、糸球体濾過率(GFR)を算出した。腎実質と大動脈の増強効果、および腎体積は、画像から手作業で描いた関心領域より算出した。MRにより求めた腎排泄率を、99mTc-MAG3のクリアランスと比較した。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
エンドポイントは、腎血管系を評価するためのMRIの感度と特異度(それぞれ、MRで検出され、後に手術で発見された単一腎血管の比率、複合腎血管の比率と定義)とした。MRIにより得られたGFR測定値と、MAG3シンチグラフィにより得られたGFR測定値との間の相関関係も評価した。
RESULTS(結果)
この研究の被験者は50人であった(平均35歳、女性40%)。MRAは、30の単一動脈のすべてと20の複合動脈のうち19を正確に特定した。腎動脈の血液供給の評価に対して、MRAの感度は100%、特異度は94%、総合精度は96%であった。また、45の単一腎静脈のすべてと5本の複合静脈のうち4本を正確に特定し、腎静脈網の評価に対する感度、特異度、総合精度は、それぞれ100%、98%、98%であった。MRUは泌尿器構造を正確に分類し、全被験者中、48例がunduplicated集合管系、1例が片側duplicated集合管系、1例が片側malrotated腎盂腎杯系であった。MAG3の腎クリアランスは、MRによるクリアランスの平均25%(54~77mL/分 対 217~277単位)であったため、MRの数値に0.25を乗じてGFRを推定した。各腎臓のMAG3-GFRは、MR-GFRとの強い相関がみられ(r=0.54、P<0.01)、MAG3およびMRの平均クリアランス値は左右の腎で同等であった。重大な有害事象は報告されなかった。
CONCLUSION(結論)
ガドリニウム造影MRI、MR腎造影、およびMRUの組み合わせにより、腎ドナー候補者の腎臓の構造と機能は正確に評価された。
COMMENTARY(解説)
Vivian S Lee
腎イメージングにおいてMRIの使用は増えつつある。MRIは、用いられるガドリニウム造影剤に腎毒性がない点や、電離放射線への暴露が不要である点など、CTにまさる利点をもつ。今日まで、生体腎ドナーに対するいわゆる「包括的」アプローチによるMRI利用は、解剖学的イメージングに焦点がおかれてきた1-3。El-Diastyらは、片腎のGFR推定にMRIを用いることで、この分野の増大しつつある文献に新たな側面を付け加えてた。
生体ドナーの腎切除では腹腔鏡下腎摘出術が広まりつつあるため、ドナーの選択と手術計画には、術前の正確な指針が不可欠である。El-Diastyらの研究で、MRIがこの役割を果たすことが裏づけられた。彼らの報告によると、MRAは96%の精度で動脈の血液供給を確認できる。同様に、MR静脈造影の総合精度は98%であり、またMRUは、申し分のない正確さで腎集合管系と尿管を画像化できる。一体型MRI検査のプロトコールは単純である。ガドリニウム造影剤の静脈内投与に続き、10~15分間、高速スポイルド3D GREによる収集を繰り返す。利尿剤の使用については、本研究におけるのと同様、任意である。構造MRIの精度は、主として技術的要因に左右される。これにはたとえば、空間分解能(標的の等方向分解能は1mm)、信号対ノイズ比、動脈撮像のために造影剤をボーラス投与する正確なタイミング、体動と呼吸のアーチファクトを防ぐための患者のコンプライアンスなどである。経験を積んだ放射線科医が最新の装置を使えば、一貫して高品質の画像が提供され、本研究で報告されたような結果が得られるであろう。
MRIのある種の限界を認識すべきである。第1に、この研究では小さな腎結石は検出できていない。結石が腎提供の除外基準とみなされる場合、MRIと併用して、腹部超音波検査または非造影CTを行ってもよい。あるいは、腎機能が正常な患者では、造影CTまたは非造影CTを用いることができる。第2に、コントラスト増強MRAでは、線維筋性異形成の診断、とくに区域枝が関与する場合に精度のばらつきが示されている。第3に、ペースメーカーや頭蓋内動脈瘤クリップなどのMRIの禁忌により、一部のドナーはMRによる評価を受けられない。腹部手術クリップ(? abdominal surgical clips)や他の画像アーチファクトの原因も、対象集団のごく一部に対して腎構造の評価を制限する可能性がある。最後に、重症の閉所恐怖症の患者は、MR検査を耐えがたいと感じるかもしれない。
El-Diastyらが用いたような、従来のガドリニウム造影剤は、尿細管で分泌・吸収されることなく腎糸球体で濾過されるため、GFRなどの生理学的パラメーターの測定に利用できる4,5。しかしGFRの定量的な測定は難題である。なぜなら、CTや放射性核種イメージングと異なり、MRの信号強度とガドリニウムの濃度との関係は直線的ではなく、実際、単調変化ですらないからである。20~30mLの投与後に多くの被験者の腎集合管系でみられたように、高濃度では、信号強度は時間と共に増加せず、減少するかもしれない。濃縮されたガドリニウムは、時定数T2を短縮するからである。おそらくこれは、El-Diastyらが行ったMRによるGFRの推定と、放射性核種測定とのあいだにみられるわずかな相関(r=0.54)の一因であろう。機能検査のためには、造影剤の量を少なくすれば、この集団における個々の腎のGFRをより正確に測定できるかもしれない。しかし、これについては今後、立証する必要がある6。
References
- Hussain SM et al. (2003) MR imaging: a "one-stop shop" modality for preoperative evaluation of potential living kidney donors. Radiographics 23: 505–520
- Israel GM et al. (2002) Comprehensive MR imaging in the preoperative evaluation of living donor candidates for laparoscopic nephrectomy: initial experience. Radiology 225: 427–432
- Rusnack D and Israel GM (2004) Kidney transplantation: evaluation of donors and recipients. Magn Reson Imaging Clin N Am 12: 505–514
- Choyke PL et al. (1992) Hydrated clearance of gadolinium-DTPA as a measurement of glomerular filtration rate. Kidney Int 41: 1595–1598
- Huang AJ et al. (2004) Functional renal MR imaging. Magn Reson Imaging Clin N Am 12: 469–486
- Lee VS et al. (2001) MR renography with low-dose gadopentetate dimeglumine: feasibility. Radiology 221: 371–379
