Practice Point

腹膜透析患者と血液透析患者の死亡リスクに差はあるか?

原論文

Jaar BG et al. (2005) Comparing the risk for death with peritoneal dialysis and hemodialysis in a national cohort of patients with chronic kidney disease. Ann Intern Med 143: 174–183

PRACTICE POINT(診療のポイント)

腹膜透析と血液透析のどちらか一方が確実に生存に有利であるとは言えないため、透析方法の決定は、説明を受けた患者の選好に基づいてなされるべきである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

透析方法が末期腎疾患患者の生存に影響を及ぼすかどうかは明らかにされていない。

OBJECTIVES(目的)

血液透析患者と腹膜透析患者の死亡リスクを比較すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

1995年10月から1998年6月の間に、米国CHOICE研究に、17歳を超える新規透析導入患者を前向きに登録した。これらの患者を最高7年間追跡した。ベースラインの人口統計学的データ、臨床データ、および臨床検査データを記録し、透析導入前の糸球体濾過率をMDRD推定式を用いて推定した。ベースラインの透析方法は、登録の4週間後に使用されていた方法とした。他の透析方法への切り替えは、透析技術を切り替えて新しい方法が30日以上継続して使用された場合と定義した。Cox回帰分析を用いて、血液透析患者と腹膜透析死亡の相対リスク(RR)を比較した。主要解析はintention-to-treatで行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要エンドポイントは死亡とした。

RESULTS(結果)

米国19州において患者(n=1,041)を透析導入時から中央値45日後に登録し、中央値2.4年間追跡した。ベースラインでの腹膜透析患者274例は、血液透析患者767例より有意に若く、casemix profileが優れていた。調整前の解析結果では、血液透析患者と比較した場合の腹膜透析患者の死亡リスクは高かったが有意ではなかった(1.10)。しかし、ベースラインの人口統計、臨床、および臨床検査の変数で調整後には1.61に増加した(95%信頼区間[CI]1.13~2.30)。追跡期間について各年別に解析した場合、死亡の調整RRは、2年目は腹膜透析患者のほうでかなり高かったが(2.34;95%CI 1.19~4.59)、1年目は高くなかった(1.39;95%CI 0.64~3.06)。腹膜透析に導入される傾向によって、患者を三分位群に分けたところ、血液透析患者と比較した場合の死亡の調整RRは、第2三分位群のみでかなり増加していた(2.21;95%CI 1.07~4.59)。血液透析患者と比較した場合の腹膜透析患者の死亡リスクは、心血管疾患患者では非心血管疾患患者より高かったが(RR 2.10、95%CI 1.36~3.25対RR 0.83、95%CI 0.38~1.81)、心血管疾患、年齢、糖尿病と、腹膜透析患者対血液透析患者の死亡のRRとの間に有意な交互作用は認められなかった。全体では、腹膜透析患者の24.8%と血液透析患者の5%で透析技術の切り替えが行われた。現行の透析の種類によって患者の解析を行った場合(それまでの切り替えはすべて無視する)、腹膜透析患者の死亡リスクは血液透析患者より高かった(RR 1.41;95%CI 1.00~1.98)。切り替えを治療の失敗としてカウントした場合、腹膜透析患者の死亡のRRはさらに増加した(2.81;95%CI 2.04~3.86)。

CONCLUSION(結論)

腹膜透析患者の調整後の死亡リスクは、1年目には血液透析患者と同等であったが、2年目には増加した。

KEYWORDS(キーワード)

末期腎疾患, 血液透析, 腹膜透析, 生存

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COMMENTARY(解説)

Beth Piraino and Joanne Bargman*

CHOICE研究は、血液透析患者と腹膜透析患者の生存を比較することを目的とした観察研究であるが、そのデザインのために、これら2集団の死亡率に関する結論を出すことは難しい。患者は透析開始から中央値45日後に登録されている。患者の選択方法について本論文には記載がないが、腹膜透析患者が血液透析患者よりはるかに高い割合で登録されたのは明らかである。登録前に死亡した患者、または病状が非常に悪いために登録できなかった患者は除外されたはずである。このような系統的な除外は、血液透析患者の良好な転帰に有利に働く。なぜなら、共存疾患で調整した場合、透析導入後の数カ月間の死亡率は、血液透析患者のほうが腹膜透析患者よりはるかに高いためである1。さらに、CHOICE研究で血液透析を受けていた大部分の患者は、透析カテーテルを用いて治療を開始した(66%)2。カテーテルにより透析に導入された場合、動静脈瘻を用いた場合に比べて、導入後の90日間の死亡リスクが2倍以上になる3。したがって、透析導入後の45日を試験から除外した場合、血液透析に有利なバイアスを招くことになる。

さらに、この解析は、就業状況やC反応性蛋白(CRP)値など、透析方法の選択により影響を受けた因子で調整していた。働く能力は使用される透析の種類に左右されるため、この調整がCHOICE研究の結果に影響を与えた可能性がある。透析導入から中央値5カ月後に測定されたCRPは、血液透析患者のほうが腹膜透析患者より有意に高かった(3.92mg/L対3.18mg/L;P<0.005)。CRP値は死亡のリスク因子であり、血液透析によって増加する4。したがって、CRPで調整することにより、血液透析により引き起こされる炎症の影響が統計学的に打ち消される。残存腎機能は、実際の糸球体濾過率の推定値によってではなく、患者に対して尿量が1日に250mL以上であったかどうかを質問することにより判定された。大部分の腹膜透析センターでは定期的に24時間尿サンプルを採取しているため、腹膜透析患者は血液透析患者に比べて自分の尿量をはるかに正確に把握している。このような定義に基づき、本研究で残存腎機能が報告された割合は、腹膜透析患者のほうが血液透析患者より多かった(88%対81%;P=0.015)。残存腎機能は解析において調整された臨床パラメータの1つであるが、このデータが不正確である可能性を認識する必要がある。

登録された患者の多くのが透析方法の選択肢を与えられていなかったであろうことを考えると、本研究の名称が「CHOICE」となっているのは皮肉である5。患者が透析の選択肢について説明を受けた場合、いずれかの手法に対して強い選好を示すことが多く、たとえ透析方法の切り替えによって生存率が100%に増加するとしても、30%を超える患者は切り替えを行わないであろう6。患者は利用可能な選択肢について十分な情報を提供されるべきであり、透析方法の決定は、患者の意思を尊重してなされるべきである。さらに、人生の選択のすべてが生存を最大にするためになされる必要はない。さもなければ、われわれは外出したり、道路を横断したり、高速道路を運転したりできなくなってしまうだろう。

Acknowledgments

The synopsis was written by Chloe Harman, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Fenton SS et al. (1997) Hemodialysis versus peritoneal dialysis: a comparison of adjusted mortality rates. Am J Kidney Dis 30: 334–342  | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Astor BC et al. (2005) Type of vascular access and survival among incident hemodialysis patients: the Choices for Healthy Outcomes In Caring for ESRD (CHOICE) Study. J Am Soc Nephrol 16: 1449–1455
  3. Xue JL et al. (2003) The association of initial hemodialysis access type with mortality outcomes in elderly Medicare ESRD patients. Am J Kidney Dis 42: 1013–1019  | PubMed |
  4. Korevaar JC et al. (2004) Effect of an increase in C-reactive protein level during a hemodialysis session on mortality. J Am Soc Nephrol 15: 2916–2922
  5. Bass EB et al. (2004) How strong are patients' preferences in choices between dialysis modalities and doses? Am J Kidney Dis 44: 695–705  | PubMed |
  6. Rubin HR et al. (2004) Patient ratings of dialysis care with peritoneal dialysis vs hemodialysis. JAMA 291: 697–703  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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