Practice Point

活動性ループス腎炎に対する寛解導入療法:ミコフェノール酸モフェチルとシクロホスファミドの比較

原論文

Ginzler EM et al. (2005) Mycophenolate mofetil or intravenous cyclophosphamide for lupus nephritis. N Engl J Med 353: 2219-2228

PRACTICE POINT(診療のポイント)

増殖性ループス腎炎患者に対する導入維持療法として、ミコフェノール酸モフェチルはシクロホスファミドの代替薬になる。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

シクロホスファミドは安全性と有効性に欠点があるが、今なお重症ループス腎炎の標準的療法である。この代替治療薬としてミコフェノール酸モフェチルが有望であることが示されている。

OBJECTIVES(目的)

ミコフェノール酸モフェチルがシクロホスファミドと同程度に有効に活動性ループス腎炎の寛解を導入するかを明らかにし、2つの薬剤の有害作用を比較すること。

DESIGN(デザイン)

1999年12月から、生検でループス腎炎(クラスIII~V)が確認され活動性疾患の所見(例:血清クレアチニン濃度上昇、蛋白尿または顕微鏡的血尿)を示した全身性エリテマトーデス患者をこの米国非盲検多施設共同試験に前向きに募集した。除外基準は、クレアチンクリアランス<30mL/分、血清クレアチン濃度>3.0mg/dL(>265.2mol/L)、ミコフェノール酸モフェチル治療歴があることとした。

INTERVENTION(介入)

患者をプレドニゾン1mg/kg/日+ミコフェノール酸モフェチルの経口投与(初回用量を1,000mg/日とし、3,000mg/日まで増量。白血球数≧3,000/mm3を維持)またはプレドニゾン1mg/kg/日+シクロホスファミドの月1回静脈内投与に無作為に割り付けた。プレドニゾンの用量は、症状の寛解状態によって毎週または隔週10~20%減量した。12週後に寛解がみられない患者は他方の群に切り替えてもよいこととした。24週後の転帰についてintention to treat解析を行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要エンドポイントは、完全寛解(血清クレアチニン濃度、尿蛋白、尿沈渣の正常値からの≦10%の変動とする)、副次的エンドポイントは部分寛解(血清クレアチニン濃度、尿蛋白、尿沈渣の異常値の50%改善とする)であった。

RESULTS(結果)

試験に組み入れた患者140例中71例(男性14%、平均年齢32.5歳)をミコフェノール酸投与、69例(男性6%、平均年齢31.0歳)をシクロホスファミド投与に無作為に割り付けた。治療の12週後、ミコフェノール酸群56例、シクロホスファミド群42例に寛解が認められた。24週後にはミコフェノール酸群の22.5%(16例)、シクロホスファミド群の5.8%(4例)が完全寛解を示した。両群の完全寛解率の絶対差は16.7%で(95%CI 5.6~27.9%、P=0.005)、95%CIの正の下限値は、ミコフェノール酸がシクロホスファミドよりも優れていることを示した。部分寛解率は、ミコフェノール酸群とシクロホスファミド群で同様であった(29.6%対24.6%、P=0.51)。全寛解率(完全寛解+部分寛解)は、ミコフェノール酸群のほうがシクロホスファミド群よりも高かった(52.1%対30.4%、P=0.009)。治療の失敗は、ミコフェノール酸群のほうがシクロホスファミド群よりも少なかった(47.9%対69.6%、P=0.01)。ミコフェノール酸群は、シクロホスファミド群よりも死亡例や重症感染例が少なかったが(それぞれ、0対2、1対6)、下痢の症例は多かった(15対2)。

CONCLUSION(結論)

重症ループス腎炎に対する寛解導入療法として、ミコフェノール酸モフェチルはシクロホスファミドよりも有効性および忍容性に優れている。

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COMMENTARY(解説)

Christian Burchardi and Detlef Schlondorff

増殖性ループス腎炎患者に用いる治療薬の毒性を低く抑えるため、腫瘍の治療アプローチと同様に、6カ月間の導入期とその後の維持期に分けた投与計画が用いられている。これまでに最良の長期成績が得られた投与法は、月1回のシクロホスファミドの静脈内投与+ステロイド経口投与(導入期)と3カ月おきのシクロホスファミド静脈内投与またはアザチオプリン経口投与(維持期)であった。毒性が低く、しかも同等の有効性をもつ投与法を求めて、さまざまな薬剤の用法や組み合わせが評価されてきた。欧州ループス腎炎試験(Euro-Lupus Nephritis Trial)では、73カ月(中央値)の追跡調査後に、低用量シクロホスファミド(500mgを隔週6回投与)による導入は、高用量シクロホスファミドのパルス療法(月1回6回投与+年4回2回投与)と同程度に、治療失敗、腎疾患の寛解、腎疾患の再燃について有効であった1。アザチオプリンは維持療法に用いた。その後Contrerasらは、ミコフェノール酸モフェチルの連日投与は年4回のシクロホスファミド投与より毒性が低く、72カ月間の寛解維持に有効であり、少なくともアザチオプリンと同程度の有効性があることを明らかにしたが、解析された長期データのある患者数は非常に少なかった2

現在Ginzlerらは、シクロホスファミドの静脈内投与が重症ループス腎炎の基準となる寛解導入療法であることに疑問を投げかけている。中国人患者を対象にした以前の研究で、Chanらは、ミコフェノール酸とシクロホスファミドの連日経口投与による導入は同等の有効性(腎臓の部分寛解と完全寛解)をもち、ミコフェノール酸の毒性が低いことを報告している3。米国人の増殖型ループス腎炎患者を対象とした本研究で、Ginzlerらは、シクロホスファミドの静脈内投与による寛解導入療法に比べて、ミコフェノール酸の経口投与の成績は勝るとはいわないまでも同等であることを示した。しかし、そこで疑問が生じる。なぜ重症ループス腎炎の導入維持療法に、ステロイドとの併用でミコフェノール酸を使用しないのであろうか? ChanらとGinzlerらの報告は、このアプローチを支持するものである。両者の研究では、初期と最終の腎臓の治療結果(それぞれ中央値63カ月、36カ月の追跡調査期間後)が同じであるばかりか、ミコフェノール酸群で重篤な有害作用の発現が有意に少なかった。このことと、ミコフェノール酸による卵巣機能障害がみられないことから、ミコフェノール酸はシクロホスファミドよりも、女性が圧倒的に多いループス腎炎患者集団に進んで取り入れられるであろう。

しかし、Ginzlerらの研究結果に基づくと、重症ループス腎炎の寛解導入治療としてシクロホスファミドの代わりにミコフェノール酸を用いることにはいくつの制限がある。脱落率が高いこと(50%)とミコフェノール酸の用量が高いこと(3g/日)である。この用量は、非アフリカ系アメリカ人集団で用いられると思われる量よりも高い。ミコフェノール酸を投与した多数の患者の長期(10年間)有効性データがないことも懸念される。なぜなら、後期に腎症状が再燃することがあるため、寛解導入療法が腎臓の長期結果に及ぼす影響を調べるには5年以上の追跡調査を要するからである4。心血管事象に対する影響を明らかにしようとすればさらに長い時間がかかるかもしれない。さらに、腎機能不全患者に対するミコフェノール酸の用量調整は難しく、モニタリングが必要である5

以上の注意点を考慮して、また腎機能不全(Ginzlerの研究ではクレアチニンクリアランス<30mL/分および血清クレアチニン濃度>3mg/dL[>265.2mol/L])または他の重症併存症を有する患者の大部分は臨床試験から除外されたことから、ほとんどの腎臓病専門医はこのような患者群に対して、シクロホスファミドおよびステロイドの静脈内ボーラス投与を用いるであろう。

Acknowledgments

The synopsis was written by Chloë Harman, Associate Editor, Nature Clincal Practice.

References

  1. Houssiau FA et al. (2004) Early response to immunosuppressive therapy predicts good renal outcome in lupus nephritis: lessons from long-term followup of patients in the Euro-Lupus Nephritis Trial. Arthritis Rheum 50: 3934–3940  | Article | PubMed | ISI |
  2. Contreras G et al. (2004) Sequential therapies for proliferative lupus nephritis. N Engl J Med 350: 971–980  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Chan TM et al. (2005) Long-term study of mycophenolate mofetil as continuous induction and maintenance treatment for diffuse proliferative lupus nephritis. J Am Soc Nephrol 16: 1076–1084  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  4. Austin HA 3rd et al. (1986) Therapy of lupus nephritis: controlled trial of prednisone and cytotoxic drugs. N Engl J Med 314: 614–619
  5. Shaw LM et al. (2000) Pharmacokinetics and concentration-control investigations of mycophenolic acid in adults after transplantation. Ther Drug Monit 22: 14–19  | Article | PubMed | ChemPort |

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