Practice Point

アトルバスタチンは慢性進行性腎疾患患者の心血管の転帰にいかなる有益な効果ももたらさない

原論文

Stegmayr BG et al. (2005) Low-dose atorvastatin in severe chronic kidney disease patients: a randomized, controlled endpoint study. Scand J Urol Nephrol 39: 489-497

PRACTICE POINT(診療のポイント)

透析患者におけるスタチン療法のベネフィットは証明されていないが、現在透析を受けていない腎疾患患者には、一般的に容認された適応としてスタチンによる治療を行うべきである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

重度の慢性腎疾患(CKD)の転帰に対するスタチンの効果に関してデータは不足している。

OBJECTIVES(目的)

ステージ4または5のCKD患者において、アトルバスタチン治療により心血管の転帰が改善し、全死因死亡率が低下するか否かを判定すること。

DESIGN(デザイン)

1998年2月以降、本無作為化対照試験のために、糸球体濾過率(GFR)測定値が30mL/分/1.73m2未満の患者を前向きに募集した。6カ月の余命が見込めない患者、移植待機中の患者、移植が成功し透析を受けていない患者は除外した。

INTERVENTION(介入)

患者を1日10mgのアトルバスタチン投与あるいはプラセボ投与に無作為に割り付けた。血清総コレステロールおよびLDLコレステロールを、ベースライン、1カ月後、3カ月後、6カ月後、その後合計最長3年間の追跡期間中は6カ月ごとに評価した。intention-to treatの原則に従い、データを分析した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要エンドポイントは、急性心筋梗塞、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、および全死因死亡率とした。

RESULTS(結果)

無作為化した患者143例のうち70例をアトルバスタチン投与(平均年齢67.8歳、平均追跡期間31カ月)に、73例をプラセボ投与(対照)(平均年齢69.4歳、平均追跡期間35カ月)に割り付けた。糖尿病、狭心症、心筋梗塞の既往歴のある患者と、PTCAまたはCABGを受けた患者の割合、あるいは男女の比率について両群に有意差はなかった。LDLコレステロール値は、アトルバスタチン群ではベースラインから1カ月後に(-35%、P<0.001)、また対照群では30カ月後にかなり低下し、両群で試験終了時まで低値が維持された。アトルバスタチン群では対照群と比べて、1カ月後から30カ月後の間に総コレステロール値が有意に低下した(P<0.05)。エンドポイントは患者106例に発生した(74%、アトルバスタチン群49例と対照群57例)。アトルバスタチン群と対照群で、エンドポイント発生までの平均期間の有意差はなかった(29カ月と25カ月)。対照群と比較して、アトルバスタチン群ではあらゆるエンドポイントについて補正オッズ比(OR)は0.87であった(95% CI 0.59~1.29)。性別、糖尿病の有無、ベースラインの総コレステロールあるいはLDLコレステロールのいずれにも、エンドポイントを経験するリスクへの重大な影響はなかった。エンドポイントは、透析患者110例のうち88例(80%)に、透析を受けていない患者33例のうち18例(55%)に発生した。どちらのサブグループにおいても、アトルバスタチン群の患者と対照群でエンドポイントを経験する可能性の有意差はなかったが、対照群と比較すると、アトルバスタチン群では透析導入前のグループにリスク減少の傾向がみられた(OR 0.41、95% CI 0.16~1.07)。アトルバスタチンの投与中止の原因となった副作用は患者16例(23%)に起こり、消化不良、筋肉痛、嘔気などであった。横紋筋溶解症の症例は確認されなかった。

CONCLUSION(結論)

アトルバスタチンはLDLコレステロール値と総コレステロール値を効果的に低下させるが、進行性CKD患者においては心血管イベントあるいは死亡の可能性を減少させることはない。

KEYWORDS(キーワード)

アトルバスタチン、慢性腎疾患、透析、死亡率、スタチン

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COMMENTARY(解説)

Bryce A Kiberd

CKDに関連する心血管疾患によるきわめて高い死亡率については、熱心に研究が行われ臨床上の関心が集まっている。無作為化対照試験により、スタチンが心血管イベントの一次予防と二次予防に対して非常に有効であることを示す情報が多数もたらされている1。中等度のCKD患者(ステージ3、GFR 30~59 mL/分/1.73 m2)におけるこのベネフィットの効果量は、腎機能が正常な個人におけるベネフィットに匹敵する2。さらにスタチンは、腎臓移植をうけた集団の心血管イベントのリスクに有益な効果をもたらすとのエビデンスがある3

血液透析を受けている糖尿病患者において、スタチン療法の心血管の転帰への効果を検討した大規模な無作為化対照試験の否定的な結果は、この研究分野の多くの人々にとってまったくの驚きであった4。Stegmayrらによる試験は、スタチンが進行性CKDの患者(透析を受けている患者など)にベネフィットをもたらさない可能性があるとのエビデンスを支持するものである。病態生理学上・疫学上の多くのエビデンスに基づく最高に科学的な論証であっても、対象とする集団における適切にデザインされた比較臨床試験が実施されなければ単なる推測にすぎないことが、これらの試験により改めて思い起こされる。

Stegmayrらにより報告された結果については全体像を捉えなければならない。ステージ4のCKDを有し透析を受けていない参加患者数は少数である(n=33)。アトルバスタチンの死亡率への影響は有意なものではないが(OR 0.41、95% CI 0.61~1.07)、統計的検出力が不十分なため重要なベネフィットを見逃している可能性がある。さらに著者らは、患者の多くはすでにスタチンの投与を受けていたため、試験に適格でなかったと述べている。これは、本試験はもとよりWannerと同僚らによる試験の一般化を阻む強力な事実である4。試験を実施した医師たちがスタチン療法の中止を好まないために、両試験から相当数の患者が除外されたとすれば、母集団は偏りのあるサンプルである。両試験において何人の患者が試験開始前にスタチン投与を中止されたか、参加施設あるいはプログラムにおいてどの程度スタチンが利用されていたかは報告されていない。

ステージ3および4のCKD患者のサブグループは、透析を受けているCKD患者のサブグループよりはるかにリスクの高い集団である。ステージ3のCKD患者の多くについては、スタチンによる治療を支持する十分なエビデンスが存在する。ステージ4のCKD患者について、スタチンに関する大規模な無作為化対照試験が必要とされるが、一方でこの集団に対してスタチン療法を中止あるいは否定するのは時期尚早であろう。同様に、スタチンを服用していて末期の腎疾患を発現した患者、特に心血管疾患があり腎移植の候補となり得る患者は、上記の報告書を根拠に治療を中止してはならない。他方で、スタチンを投与されていない透析患者はこれらの薬剤の導入によりベネフィットを得ることはないと予想され、このような患者は実際副作用を起こす可能性があるとのエビデンスも集まっている。したがって、より多くの情報が得られるまで、医師は透析患者の治療にスタチンが必須であると考えるべきではない。

Acknowledgments

The synopsis was written by Chloë Harman, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Baigent C et al. (2005) Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins. Lancet 366: 1267–1278  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Tonelli M et al. (2004) Effect of pravastatin on cardiovascular events in people with chronic kidney disease. Circulation 110: 1557–1563  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Holdaas H et al. (2005) Long-term cardiac outcomes in renal transplant recipients receiving fluvastatin: the ALERT extension study. Am J Transplant 5: 2929–2936  | Article | PubMed | ChemPort |
  4. Wanner C et al. (2005) Atorvastatin in patients with type 2 diabetes mellitus undergoing hemodialysis. N Engl J Med 353: 238–248  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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