Practice Point

血液透析量決定のための血液を基準とした最適な方法の特定

原論文

Prado M et al. (2005) Double target comparison of blood-side methods for measuring the hemodialysis dose. Kidney Int 68: 2863-2876

PRACTICE POINT(診療のポイント)

spKt/Vを求める非反復公式が2種類とeKt/Vを求める公式2種類があり、これらは2種の血液サンプルを基にして実施された透析量を算出し、透析後の尿素リバウンドを予測するために利用することができる。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

透析器および患者の観点からみると、mKt/VおよびeKt/Vを算出することにより透析量の補足的な測定値が得られる。これらの指標を計算する最適な方法は明らかでない。

OBJECTIVES(目的)

mKt/VおよびeKt/Vを算出するもっとも精度の高い方法を特定すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

本横断研究のため、週3回血液透析を受けている状態の安定した末期腎疾患患者を無作為に選択した。尿素窒素(BUN)値を、週の中ごろの透析前(BUN1)、透析の1~2分後(BUN2)、30分後(BUN3)に測定した。透析液流量を500mL/分に設定した。対象コホートを、透析の1分後または2分後にBUN2を測定した無尿患者(第1群、第2群)と、透析の2分後にBUN2を測定した乏尿患者(第3群)に分類した。two-poolまたはsingle-poolのurea kinetic modeling(UKM)を用いて算出したmKt/VおよびeKt/Vの参照値を、血液を基準とした16通りのsingle-pool法(nspUKM、nspUKM2m、spUKMの3通りの反復法と、13通りの非反復法)によって得られた推定値と比較した。利用した一部の方法の詳細は、オンラインのSupplementary Informationで提供している。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

方法の精度を一致限界として表した。残存する利尿(residual diuresis)、透析後の血液採取に要する時間、群間の変動の影響に対する方法の感度を「群内感度パラメータ」(SM)として表した。

RESULTS(結果)

全体で患者98例から採取したサンプルを解析した。すべての症例でeKt/Vの参照値はmKt/Vの参照値より低く、この差異の大きさは透析量が増えるにつれ増加した。狭い一致限界(-0.08±0.58%)、群間の変動に対する一致限界の低い感度(第2群対第1群に対するSMは-0.58と-0.12;第3群対第1群に対するSMは1.55と0.30)が示すように、mKt/Vを算出する最良の方法はnspUKMであった。BUN3の測定値を要する方法を除外した場合、nspUKM2mがもっとも精度が高く(一致限界-0.03±1.44%)、感度が低く(第2群に対するSMは1.21と0.11;第3群に対するSMは0.75と0.08)、その標準偏差はspUKMの標準偏差よりmKt/Vと関連が弱いことを示している。非反復的な公式の中では、Pradoの式1(BUN3が必要)とPradoの式2(BUN3は不要)がmKt/Vのもっとも精度の高い予測因子であった(一致限界は-1.65±1.26%と-1.93±2.09%)。これらの標準偏差にはmKt/Vとの有意な相関はみられず、それらの方法に対するSM値はすべて1未満であった。eKt/Vの推定に用いられた公式(すべて非反復的)のうち、BUN3を要する式の中ではDaugirdasの式1がもっとも精度が高かった(一致限界-2.42±1.05%;すべてのSM値1未満)。BUN3が不要な方法の中では、Daugirdasの式2がeKt/Vの参照値にもっとも近似し(一致限界1.74±0.79%)、第2群に対するSM値は-1.34と-0.17であり、第3群に対するSM値は-1.26と-0.06であった。広く利用されているLowrieの公式による両方の指標の算出値は約16%低かったが、標準偏差は低かった。

CONCLUSION(結論)

mKt/Vを算出するためには、BUN3が判明しているか否かによってPradoの式1または2を利用するとよい。また同様に、eKt/VはDaugildasの式1または2を用いて算出するとよい。

KEYWORDS(キーワード)

血液透析量、標準化透析量(Kt/V)、urea kinetic modeling

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COMMENTARY(解説)

Bernard Canaud

現在用いられている透析量の定量化公式には数学的不備がある一方、urea kinetic modelingの最適な方法について一致した見解がないことから1、Pradoらは、血液透析量(Kt/V)の二種類の指標を組み合わせて利用することによって、至適血液透析量の評価の精度を高めることができると仮定した。この手法の論理的根拠は、透析のさい血液透析患者の体内では内部の溶質の勾配が生じるという事実に基づく。この体内の不均衡は、透析中に二つの「機能的」コンパートメント―クリアランスが迅速に進行する混合が十分な表層部(細胞外空間)と、体内抵抗のためクリアランスの進行が遅い混合が不十分なコンパートメント(細胞内コンパートメント)―に生じる溶質のクリアランスの差を反映する2。この考え方に沿って、尿素は透析中に細胞内コンパートメントで捕捉され、その後活発に放出され、透析後の「リバウンド」現象をもたらすという考えが現在定着している。

患者と血液透析システムの相互作用の結果生じる複雑な尿素動態から、2つの溶質クリアランス値を明らかにする必要性が強く示唆される。すなわち、主に透析器によるin vivoのクリアランスを反映する体外クリアランス(mK;透析量の指標mKt/VはmKから算出される)と、患者の体の真のクリアランスを反映する全身クリアランス(平衡クリアランス[eKd];透析量の指標であるeKt/VはeKdから算出される)の2つである。Pradoらは、これら2つの指標の差(mKt/V-eKt/V)が、血液透析患者に生じる尿素の不均衡をもたらすことを明らかにしている。

血液サンプル2例(非反復法)または血液サンプル3例(反復計算)を基準にした、Kt/Vの算出に用いられる臨床用公式の大多数は、非常に厳格な方法で評価された。Pradoらは、透析後の血液サンプルの採取が適切であれば、これらの公式は実施された透析量を評価するための簡便かつ正確で再現性のある方法であることを確認している。本研究は、その他に臨床診療に対する2つの明確な情報を与えてくれる。第1に、single-poolのUKMを基準としたもっとも再現性のある推定値は、Pradoの式1およびPradoの式2を用いて算出した反復Kt/V(spKt/V)と、Daugirdasの式2を用いて算出した非反復spKt/Vである。最適のdouble-pool Kt/V推定値は、Daugirdasの式1あるいはTattersallの公式(spKt/Vを利用)を用いて算出したeKt/Vである。第2に、spKt/V(mKt/Vのおおよその近似値)とeKt/Vの差(spKt/V-eKt/V)から、血液透析中に生じる体内の尿素不均衡の大きさに関する付加情報を得ることができる。言い換えると、spKt/VとeKt/Vの差を縮小することは透析をより生理的にする手段となり得る。

この研究の科学的価値には疑いの余地はないが、透析の有効性は尿素の指標であるKt/Vに尽きるものではなく、代謝上の重要な目標を達成する必要があることを認識しなければならない3。緩速の限外濾過と治療時間の延長により、こうしたきわめて重要な目標が達成されよう4。質の高い医療を一貫して提供するという観点から、時間をかけて透析を実施する傾向は、いかなる単独の値よりはるかに重要である。さらに、2-マイクログロブリンを含む多くの尿毒症毒素の動態は必ずしも尿素動態と並行するものではなく、尿素に関するKt/Vがこれらの化合物に対する透析効果の予測因子ではないことを意味している5。Pradoらによる「二重標的」の概念の臨床的意義は、患者の転帰をハードエンドポイントとした多数の連続患者(血液透析カテーテルを留置している患者を含む)でのさらなる評価に値する。

Supplementary Informationは、Nature Clinical Practice Nephrologyのウェブサイトで閲覧できる。

Acknowledgments

The synopsis was written by Chloë Harman, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Saran R et al. (2004) Dose of dialysis: key lessons from major observational studies and clinical trials. Am J Kidney Dis 44 (Suppl 2): 47–53
  2. Canaud B et al. (2000) Urea as a marker of adequacy in hemodialysis: lesson from in vivo urea dynamics monitoring. Kidney Int 76: S28–S40  | ChemPort |
  3. Canaud B (2004) Adequacy target in hemodialysis. J Nephrol 17 (Suppl 8): S77–S86
  4. Saran R et al. (2006) Longer treatment time and slower ultrafiltration in hemodialysis: associations with reduced mortality in the DOPPS. Kidney Int 69: 1222–1228  | Article | PubMed | ChemPort |
  5. Leypoldt JK et al. (2004) Kinetics of urea and beta2-microglobulin during and after short hemodialysis treatments. Kidney Int 66: 1669–1676  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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