Practice Point

脱髄性ニューロパチーの評価に皮膚生検を用いることはできるか?

原論文

Li J et al. (2005) Skin biopsies in myelin-related neuropathies: bringing molecular pathology to the bedside. Brain 128: 1168–1177

PRACTICE POINT(診療のポイント)

皮膚パンチ生検は、無髄神経線維と同様に有髄神経線維の研究にも使用することができる。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

現在、脱髄性ニューロパチーの形態的・分子的評価は、侵襲的な腓腹神経生検に頼って行われている。皮膚生検は低侵襲的で、感覚性ニューロパチーにおける無髄神経線維の評価に用いられて成功しているが、脱髄性ニューロパチーにおける有髄神経の評価に使用できるか否かは明らかでない。

OBJECTIVES(目的)

脱髄型のシャルコー‐マリー‐トゥース(CMT)病患者において、有髄神経の形態的・分子的特性の評価に皮膚生検を用いることができるか否かを検討すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

もっともよくみられる脱髄型のCMT(CMT1A[5例]、X連鎖性優性CMT[CMTX1][1例]、圧迫性麻痺の傾向を有する遺伝性ニューロパチー[HNPP][3例])を有する患者9例(男性5例、女性4例)と、健常対照者8例(男性6例、女性2例)を本研究に登録した。最初に、対照被験者に対して複数部位の皮膚生検を施行し、皮膚生検材料から容易に有髄神経を同定できるか否かを検討した。続いて患者の上肢の無毛部皮膚(glabrous)に対して皮膚生検を施行した。光学顕微鏡を用いて有髄線維を含む神経束を同定し、電子顕微鏡(EM)を用いて組織超薄切片の形態分析を行った。免疫組織化学法と蛍光顕微鏡法により生検標本の形態を詳細に分析し、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて分子解析を行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

皮膚生検組織にみられる形態的・分子的異常、腓腹神経生検所見との整合性、CMTのさまざまな遺伝子亜型との相関。

RESULTS(結果)

指と前腕の無毛部皮膚の生検によって、皮膚機械受容器を神経支配する個々の有髄線維が容易に可視化された。EMにより、皮膚神経のミエリン鞘間の距離は10~12nmであることが判明した(腓腹神経での距離と同等)。腓腹神経の直径は大小さまざまであるが、皮膚神経線維の直径は一様に小さかった(多くが<7m)。絞輪間ミエリンは、腓腹神経が400~1,000mであるのに対し、無毛部皮膚では約70mであった。無毛部皮膚生検材料の評価では、検査した全例において既知の形態的異常、たとえば、CMT1A患者とCMTX1患者の薄い髄鞘に覆われた軸索、HNPP患者のソーセージ様過形成(tomaculum)などが認められた。無毛部皮膚標本における末梢ミエリン蛋白22(PMP22)のmRNA発現量と蛋白発現量は、それぞれリアルタイムPCRと免疫電子顕微鏡法で測定したところ、ヒト腓腹神経から得られた値と同等であり、既知の遺伝的異常に一致した。無毛部皮膚生検標本では、パラノード部と傍パラノード部の分子構造にこれまで明らかにされていなかった異常が同定された。

CONCLUSION(結論)

無毛部皮膚生検は有効かつ忍容性が良好で、繰り返し施行できる手法であり、もっともよくみられる型のCMTにおける形態的・分子的異常の同定に用いることが可能である。

KEYWORDS(キーワード)

シャルコー‐マリー‐トゥース(CMT)病、脱髄性ニューロパチー、有髄神経、皮膚生検、腓腹神経生検

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COMMENTARY(解説)

Michael Polydefkis

CMT病とは、軸索蛋白またはミエリン蛋白をコードする30個以上の遺伝子に数多くの変異を有する、一群の遺伝性末梢性ニューロパチーを表す。疾患ごとに認められる表現型はますます幅広いものとなっており、特異的な遺伝的原因の同定によって、診断や、自然経過に関する認識は大きく改善している。シュワン細胞と有髄軸索の分子間相互作用が次第に解明されており、この相互作用の複雑さは、神経筋接合部における運動軸索と筋細胞の相互作用と類似しているようである。

今日までの研究は、臨床的表現型と特定の遺伝的異常の関連を立証することに重点がおかれてきた1,2。多数の遺伝子変異との構造的な相関に関する情報は大幅に欠けている。トランスジェニック動物モデルではいくつかの例でこの解明がなされているが、あまりにも多くの変異が存在するため、すべての例でこの手法を実行することはできない。CMTの診断は通常、腓腹神経の生検(後天性の脱髄性ニューロパチー患者の評価に用いられる)を行わずに下されるため、ヒト神経組織が得られないことが制限要因となっている。しかしLiらは、状況が変わりつつあることを示唆している。著者らは、CMT1A患者、CMTX1患者、HNPP患者の無毛部皮膚から採取した皮膚パンチ生検材料を用いて、真皮内部の有髄神経線維を分析することによって、これらの患者から採取した腓腹神経生検材料で認められているものと同じ構造的特徴、たとえばHNPP患者の著明なソーセージ様過形成などを検出した。さらに著者らは、リアルタイムPCRと免疫電子顕微鏡法により、皮膚神経組織と腓腹神経組織では蛋白発現プロファイルが類似していることも立証した。

CNSと比べて末梢神経系へのアクセスは容易で、そのため生理学的にも、また程度の差こそあれ病理学的にも、直接的に繰り返し評価することができるという利点がある。皮膚の知覚線維に対する評価法が不完全であったため、この利点には限界があった。また、腓腹神経生検は侵襲的で、1時点で1部位しか評価できない。皮膚生検は、診断ツールや研究ツールとして魅力的な選択肢である。生検は忍容性が良好で、侵襲性が比較的低く、さまざまな部位の神経に対して長期にわたって繰り返し標本採取を行うことが可能である。最近まで、生検の使用は無髄C線維侵害受容器による表皮の神経支配に集中しており、皮膚生検は、古典的に末梢性異常感覚を呈するが神経伝導検査の結果は正常な患者の小径線維ニューロパチーに対する診断ツールとして使用されるようになってきた。Liらやその他の研究者3が証明したように、この手法を真皮深層内部の有髄A線維やA線維の研究に適用して、脱髄性ニューロパチーの研究を行うことが可能である4。これらの研究で使用された手法の多く―リアルタイムPCR、免疫電子顕微鏡法、共焦点顕微鏡法など―は難しく、診断目的で日常的に行われる可能性は低いが、Liらの研究が意味するところは、新たなCMT変異の1つ1つが、ミエリン‐シュワン細胞の相互作用から疾患が生じる仕組みを明らかにするような、構造に関する情報をもたらす可能性をもつことである。この情報によって、あらゆる末梢神経疾患の機構に関するわれわれの理解が深まるであろう。また、遺伝性ニューロパチーを対象とした臨床試験で使用できる、構造に関する新たな評価項目が得られる可能性がある。

References

  1. Thomas PK et al. (1997) The phenotypic manifestations of chromosome 17p11.2 duplication. Brain 120: 465–478  | Article | PubMed | ISI |
  2. Plante-Bordeneuve V et al. (1999) The Roussy-Levy family: from the original description to the gene. Ann Neurol 46: 770–773  | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Nolano M et al. (2003) Quantification of myelinated endings and mechanoreceptors in human digital skin. Ann Neurol 54: 197–205  | Article | PubMed | ISI |
  4. Lombardi R et al. (2005) IgM deposits on skin nerves in anti-myelin-associated glycoprotein neuropathy. Ann Neurol 57: 180–187  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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