脳卒中前の社会的孤立と脳卒中後の転帰との間に関連はあるか?
原論文
Boden-Albala B et al. (2005) Social isolation and outcomes post stroke. Neurology 64: 1888–1892
PRACTICE POINT(診療のポイント)
社会的孤立は、脳卒中患者の死亡または将来的な血管事象の高リスクと関連しており、たとえば単項目の社会的孤立の指標を用いて評価することができる。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
脳卒中の高死亡率は、低い社会経済的状態および民族(アフリカ系アメリカ人対白人)と関連付けられている。しかし、カリブ系ヒスパニック、アフリカ系アメリカ人コホートにおける、社会的支援を含む脳卒中前の社会的資源が脳卒中の転帰に及ぼす影響については、十分に解明されていない。
OBJECTIVES(目的)
脳卒中の転帰(脳卒中再発、心筋梗塞[MI]、死亡を含む)と、一般社会で暮らしている多民族の虚血性脳卒中患者における脳卒中前の社会的孤立との関連を確認すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
1993年7月から1997年6月までのあいだに、北マンハッタン在住の40歳を超える全初発虚血性脳卒中患者(n=687)を本前向きコホート研究に登録した。脳卒中発症後24時間~48時間以内にリスク因子と発症前の社会的資源を評価し、神経学的検査を実施した。「家を訪問するほど十分に親しい人の数が3人未満」である患者を、社会的孤立と定義した。婚姻の有無および学歴を含むその他の社会的影響を調査した。転帰事象は5年間の追跡調査中に記録した。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要評価項目は、社会的孤立が初発脳卒中後の最初の脳卒中再発、MI、または死亡を予測できる可能性とした(Kaplan-Meier生存曲線とCox比例ハザードモデルを用いて評価した)。
RESULTS(結果)
追跡調査の対象とした患者655例には、ヒスパニック354例(54%)、アフリカ系アメリカ人177例(27%)、白人114例(17%)が含まれた(平均追跡調査期間4.6年)。完全に追跡不能となった患者は3例のみであった。最初の転帰事象として、脳卒中再発(n=83、13%)、MI、または死亡を含む合計265件(42%)が記録された。社会的孤立は、患者164例(25%)で記録された。本研究の患者では、高血圧(70%)、冠動脈疾患(40%)、糖尿病(31%)を含む血管リスク因子の有病率が高かった。リスク因子で調整していない単変量モデルにおいて、転帰事象の発生率は、ヒスパニックのほうが白人に比べて有意に低く(ハザード比[HR]0.6、95%信頼区間[CI]0.5~0.9、P=0.005)、アフリカ系アメリカ人と白人では同等であった。単変量モデルでは、転帰事象の発症率は、脳卒中前の社会的孤立患者では、社会的孤立と定義されなかった患者に比べて高かった(HR1.4、95%CI 1.1~1.7、P=0.01)。未調整モデルでは、転帰事象のその他の有意な予測因子は、脳卒中初発前の家事手伝い、年齢70歳超、冠動脈疾患、心房細動、運動不足であった。Kaplan-Meier解析を用いると、30日後の転帰事象発生率は、社会的孤立患者で13%、非社会的孤立患者で5%であり、1年後にはそれぞれ31%、18%に上昇した。多変量モデルにより、社会的孤立、心房細動、脳卒中前の家事手伝いが、年齢で調整した転帰事象の独立した予測因子として特定された(人種-民族は含まれなかった)。
CONCLUSION(結論)
脳卒中前の社会的孤立は、脳卒中後の有害な転帰事象の高発生率の予測因子であった。
COMMENTARY(解説)
Eric Cheng and Barbara Vickrey
学歴などの社会的因子は脳卒中死亡率と関連付けられているが、社会的支援が脳卒中の転帰に及ぼす影響についてはほとんど知られていない。Boden-Albalaらは、観察的な前向きコホート研究において、脳卒中前の社会的孤立という1つの指標(「家を訪問するほど十分に親しい人が3人未満」)と、発症後5年間の有害転帰(MI、脳卒中再発、または死亡)との関連を報告した。この知見は、より少ない社会的関係またはより小さい社会的ネットワーク(異なる指標を使用)と、脳卒中を含む心血管死亡率の上昇との関連を報告した過去の文献と一致している1-4。
どうしてこの脳卒中前の社会的孤立という指標が、脳卒中後の不良転帰と関連しているのかは依然として不明である。仮定される1つの理由としては、社会的孤立によってケアの質が低くなることがあげられる。つまり、社会的に孤立した人は、医療提供者を訪れるために必要な援助を得ることができず、また、投薬レジメンに従ったり、喫煙・運動・食生活を改善したりするための励ましや機会を十分に得ることができない可能性がある。しかし、本研究におけるその他の脳卒中前の社会的孤立の指標である1人暮らしは不良な転帰と関連しておらず、結婚の有無も同様であった。その他の仮説として、社会的に孤立した人は、うつ病に罹患しやすく、精神的ストレスを受ける可能性が高いことがあげられる。脳卒中後のうつ病は、死亡率の上昇と関連付けられており5、ストレスは神経内分泌系を活性化させ、アテローム性動脈硬化症の進行の原因となる可能性がある3。しかし、本研究では、有害転帰の差は脳卒中発症30日後までにすでに認められており、アテローム性動脈硬化の進行と結びつけるには期間が短すぎる。その他の説明として、社会的孤立は、実は今回評価されなかった不良転帰を引き起こす別の因子と関連していることが考えられる。もしこれが事実なら、社会的孤立だけを「是正」しても、転帰は改善されない可能性がある。
高齢男性28,369例を対象とした非実験的観察的コホート研究において、親しい友人の数や宗教儀礼への参加などの社会的孤立指標の時間をかけた改善は、2年間の死亡リスクの減少と関連していることが示された3。しかし、1カ月に会う親しい友人または親族の数や社会グループへの参加などの、その他の関連する指標の改善は、死亡率の変化と関連していなかった。われわれの知る限りでは、社会的孤立を改善するための介入が脳卒中の転帰に及ぼす影響を検討した無作為化対照試験は行われていない。
Boden-Albalaらが用いた単項目の社会的孤立指標は、臨床現場で患者に対して適用することができるだろう。有害転帰の高リスク患者を特定する予後予測の有用性を考えると、臨床医が脳卒中患者の社会的孤立状態を確認することを提案するのは妥当である。このことにより、服薬コンプライアンスに対するより身近な指導、生活習慣のリスク因子カウンセリングに関するフォローアップ、脳卒中後のうつ病の評価と治療などの、脳卒中後に推奨される医療ケアのあらゆる部分から利益を得られる患者に対する臨床家の認識が高められるであろう。脳卒中患者の社会的ネットワークを拡大させることを最終的に推奨する前に、社会的孤立と脳卒中の不良転帰との関連の背景にあるメカニズムをより深く解明する必要がある。こういったすべての推奨には、このような介入の有効性に関する実験的エビデンスが必要であろう。
