頸動脈イメージングおよび動脈内膜切除術施行までに経過した時間、および処置の遅れが脳卒中再発リスクに与える影響
原論文
Fairhead JF et al. (2005) Population-based study of delays in carotid imaging and surgery and the risk of recurrent stroke. Neurology 65: 371–375
PRACTICE POINT(診療のポイント)
脳卒中再発リスクの低下により患者が最大の利益を得られるように、脳卒中またはTIAの診断的評価および治療は迅速に行わなければならない。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
一過性脳虚血発作(TIA)または脳卒中後に施行する頸動脈内膜切除術(CEA)により、50%以上の頸動脈狭窄を有する患者の脳卒中再発リスクは低下する。複数の無作為化対照試験によると、手術までの時間が長くなるとこの脳卒中リスクの低下は減少する。
OBJECTIVES(目的)
患者を用いた住民サンプルにおいて、TIAまたは軽度虚血性脳卒中の発症から頸動脈イメージングおよびCEAまでの経過時間を明らかにすること、ならびに処置の遅れが脳卒中再発リスクに及ぼす影響を評価すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
この住民対象研究では、約680,772人の報告、紹介状、看護記録(attendance record)をスクリーニングし、2002年4月~2003年3月に、虚血性の脳疾患または網膜疾患を新規発症したために頸動脈イメージングを受けた患者を特定した。収集データは、発症日、患者がイメージングのために紹介された日、イメージング施行日およびその結果、動脈内膜切除術施行日などであった。このうちTIAまたは脳卒中を発症し、50%以上の症候性頸動脈狭窄を有する患者92,000人すべてに追跡調査を行い、予定されたCEAの前に脳卒中が再発するリスクを求めた。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要評価項目は、発症から紹介・スキャン検査・動脈内膜切除術までの時間、動脈内膜切除術後の推定脳卒中リスク低下、CEA以前に生じる脳卒中再発のリスクである。
RESULTS(結果)
総対象患者853人中841人(98.3%)が超音波二重スキャン検査を受け、14人(1.7%)が磁気共鳴血管撮影(MRA)を受けた。発症から紹介までの時間、および発症から1回目の検査までの時間の中央値はそれぞれ9日、33日(四分位範囲はそれぞれ3~30日、12~62日)であった。CEAを受けた患者は853人中49人(6%)で、このうち70~99%の狭窄を有する患者は41人、50~69%の狭窄を有する患者は8人であった。発症から手術までの時間の中央値は100日(四分位範囲は59~137日)であった。2週間以内にCEAを施行したのは3人(6%)、4週間以内は4人(8%)、12週間以内は21人(43%)、6カ月以内は44人(90%、累積総数)であった。この研究では、その後の5年間の追跡調査期間中、49件の手術により予防できたと推定される脳卒中件数は5件であった(対象患者165人当たり1件の脳卒中を予防)。この住民対象の発生率研究で対象となった集団のうち、260人は研究期間内に頸動脈TIAまたは軽度虚血性脳卒中に罹患した。この集団では、50%以上の症候性頸動脈狭窄を有する患者が術前に脳卒中を再発するリスクは、2週間後で24%(95%CI 10~37%)、12週間後で37%(95%CI 22~53%)であった。
CONCLUSION(結論)
虚血性の脳疾患または網膜疾患が新規発症したため受診する患者の大多数は、12週間以上経過してから頸動脈内膜切除術を受けていた。このような手術までの時間の遅れは、CEA後に推定される脳卒中リスクの低下に有害な影響を及ぼす。
KEYWORDS(キーワード)
COMMENTARY(解説)
Michael J Schneck and José Biller
欧州頸動脈手術試験(European Carotid Surgery Trial:ECST)と北米症候性頸動脈内膜切除術試験(North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial:NASCET)の集積データ1から、最後に症候性疾患が発現してからCEAに無作為に割り付けられるまでの時間が、CEAによって得られる利益を改善するうえで重要な要素であることが明らかになった。CEAまでに時間がかかるほど、患者に対する利益は著しく減少した。血管径の50%以上の症候性狭窄を有する患者では、1件の脳卒中の予防に必要な治療回数は、症状発現後2週間以内にCEAを受けた患者で5回であったが、12週以上経過してからCEAを受けた患者では125回であった。
Fairheadらはこれらの知見と実際の診療を比較し、英国オックスフォードシャー州において、症候性疾患の発現後2週間以内に手術を受けた患者はわずか6%にすぎないことを明らかにした。診断と治療の遅れは、治療後のリスク低下を著しく減少させるだけでなく、検討された治療を行う前に、多くの患者に予防できる脳卒中再発リスクを負わせることにもなる。この観察結果は例外的なものではなく、他のECST実施施設でも、通常、手術までに2カ月以上(中央値)かかり、NASCETでは症状発現後1カ月以内に手術に割り付けられた患者は45%にとどまった。
医師による脳卒中患者の評価の遅れは、頸動脈疾患患者に限られたことではない。米国立神経疾患・卒中研究所の組織プラスミノゲン活性化因子に関するパイロット試験(National Institute of Neurologic Disorders and Stroke Tissue-Type Plasminogen Activator Pilot Study)2では、患者の59%は発症後3時間以内に受診した。病院への到着がもっとも早かった(平均155分)のは、自身で救急医療システムと連絡をとった患者で、最初に主治医と連絡をとった場合には病院到着が有意に遅れた(平均379分、P<0.001)。組織プラスミノゲン活性化因子の静脈内投与によって得られる利益は、最初の3時間では発症後の経過時間と逆相関を示すため、ここでもやはり治療までの時間がきわめて重要であった。
TIA後の脳卒中リスクは発症後3カ月以内で10%前後と推定されているが、最近TIAを発症した患者の管理は多岐にわたる。救急科でみられるTIAの場合、再発性脳卒中の半数は2日以内に生じている3,4。残念なことに、最近TIAを発症した多くの患者は迅速な評価を受けていない。Goldsteinらは、初回TIAまたは脳卒中を発症し、プライマリケア医を受診した患者を検討した。この報告によると、TIA患者の79%、脳卒中患者の88%が初回症状が発現した当日に受診したにもかかわらず、その日に評価入院をした患者はわずか6%にすぎなかった5。注目すべきことは、この研究で、受診日にCTまたはMRIを指示された患者は30%にとどまり、専門医が診察した患者はわずか32%であったことである。すなわち、脳神経科医の診察を受けたのはTIA患者の14%、脳卒中患者の20%であった。これらのデータは、外来診療の場であっても、TIAおよび脳卒中が緊急の問題として評価されていないことを示唆している。
急性脳卒中に対する迅速な介入のパラダイムを拡大させる必要があることは間違いない。われわれは、すべての脳卒中を迅速に評価すべきであることを強調する。さらに、冠動脈疾患の比喩を用いれば、TIAは「脳の不安定狭心症」、症候性頸動脈狭窄は「左主幹部病変」と考えて、緊急に管理すべきである。
Acknowledgments
The synopsis was written by Emma Campbell, Associate Editor, Nature Clinical Practice.
References
- Rothwell PM et al. for the Carotid Endarterectomy Trialists Collaboration (2004) Endarterectomy for symptomatic carotid stenosis in relation to clinical subgroups and timing of surgery. Lancet 363: 915–924 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Barsan WG et al. (1993) Time of hospital presentation in patients with acute stroke. Arch Intern Med 153: 2558–2561 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Johnston SC et al. (2000) Short-term prognosis after emergency department diagnosis of TIA. JAMA 284: 2901–2906 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Hill MD et al. (2004) The high risk of stroke immediately after transient ischemic attack: a population based study. Neurology 62: 2015–2020 | PubMed | ISI | ChemPort |
- Goldstein LB et al. (2000) New transient ischemic attack and stroke: outpatient management by primary care physicians. Arch Intern Med 160: 2941–2946 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
