神経障害性疼痛に対するさまざまな薬物療法の有効性のエビデンスはどの程度確実か?
原論文
Finnerup NB et al. (2005) Algorithm for neuropathic pain treatment: an evidence based proposal. Pain 118: 289-305
PRACTICE POINT(診療のポイント)
神経障害性疼痛は、三環系抗うつ薬とオピオイドにより患者2~3人に1人が、プレガバリンおよびガバペンチンにより4人に1人が50%の軽減をみる。一方、選択的セロトニン再取り込み阻害薬ははるかに効果が低い。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
神経障害性疼痛を引き起こすメカニズムの性質は不均一なため、個々の患者に対して適切な治療を選択することは困難である。系統的レビューによって神経障害性疼痛に対する最新の治療の選択肢が概説されているが、その後複数の試験が行われ、これらのレビューに示されている治療必要数(NNT)の見直しが必要となっている。
OBJECTIVES(目的)
神経障害性疼痛に対する有効な治療法について治療必要数(NNT)および加害必要数(NNH)の計算を見直すこと、およびこれらの疼痛の治療についてエビデンスに基づいたアルゴリズムを提案すること。
DESIGN(デザイン)
系統的レビューには、患者10人以上の神経障害性疼痛に対する長期的薬剤投与について調査した無作為化二重盲検プラセボ対照試験が含まれた。これらの試験は、MEDLINE、EMBASE、コクランレビューおよびコクラン比較臨床試験登録データベース(Cochrane CENTRAL)から特定された。過去のレビュー、および特定した論文の参考文献リストからさらに試験を検索した。各試験から抽出されたデータには、研究デザイン、参加者数、組み入れ基準と除外基準、薬剤の用量、脱落例の記述、実薬またはプラセボを用いた治療により得られた疼痛の軽減などがあった。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要評価項目は、NNTにより評価した疼痛の50%の軽減とした。また、脱落例についてNNHを評価した。
RESULTS(結果)
全体のうち評価に適する試験105件を解析した。評価の頻度がもっとも高かった薬剤は、抗けいれん薬(試験39件)、抗うつ薬(試験26件)、オピオイドおよびカプサイシン(試験各11件)であった。脳卒中後の中枢性疼痛、疼痛を伴う多発性神経障害、脊髄損傷による疼痛、帯状疱疹後神経痛、多発性硬化症の患者が含まれた。中枢神経障害による疼痛に関するデータは限られていたが、末梢神経障害による多くの疼痛例に関してNNTを算出した。三環系抗うつ薬(TCA)のNNTは2~3と、調査されたすべての薬剤クラス中でもっとも低く、TCA全体の複合NNHは14.7であった(95%CI 10.2~25.2)。オピオイドは次に疼痛軽減効果が高く、モルヒネのNNTは2.5(95%CI 1.9~3.4)、オキシコドンでは2.6(95%CI 1.9~4.1)、トラマドールでは3.9(95%CI 2.7~6.7)であった(複合NNH 9.0、95%CI 6.0~17.5)。ガバペンチン、プレガバリンなどの抗けいれん薬の一部(NNT~4、患者1,000人以上のデータに基づく)に、また小規模試験のみを基準とした場合、カルバマゼピン、ラモトリジン、フェニトインに同様の有効性がみられた。プレガバリンのNNHは11.7であり(95%CI 8.3~19.9)、一方ガバペンチンでは脱落率が低かった(NNH 26.1、95%CI 14.1~170)。トピラメートのNNTは7.4と比較的高値であり(95%CI 4.3~28.5)、試験脱落率は高かった(NNH 6.3、95%CI 5.1~8.1)。選択的5-hydroxytryptamine(5-HT、セロトニン)再取り込み阻害薬は全体的なNNTが7近くあり、試験脱落の相対危険度は有意とはいえなかった。
CONCLUSION(結論)
研究デザインには限界があったが、神経障害性疼痛に対してはTCAが最も有効な治療法であり、オピオイド、さらにガバペンチンとプレガバリンがそれに続いた。神経障害性疼痛の治療に用いられる薬剤の安全性と有効性に関する直接比較試験が必要である。
COMMENTARY(解説)
Eija Kalso
抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイドは、神経障害性疼痛の治療に効果があることが明らかになっている。疼痛の軽減に関係する作用機序には、セロトニンとノルエピネフリン両方のバランスの取れた再取り込みの阻害や、ナトリウムイオンチャネルの遮断などがある。その他の機序として、興奮性神経伝達システムの阻害(グルタミン酸受容体およびN-methyl-D-aspartate受容体による)、抑制性神経伝達システムの活性化(オピオイドあるいはグリシンによる)抑制性神経伝達システムの活性化などがある。
Finnerupらによる系統的レビューでは、神経障害性疼痛の薬物療法に関する無作為化対照試験(RCT)すべてが解析され、治療のアルゴリズムが提案された。そこでは三環系抗うつ薬が第一選択治療として支持され、ガバペンチンあるいはプレガバリンがそれに続いている。オピオイドは第二あるいは第三選択薬と考えられている。レビューによると、末梢神経障害による疼痛では三環系抗うつ薬が疼痛の軽減に最大の効果をもたらし、おおよそ2~3人に1人の患者が50%以上の疼痛の軽減を達成したことが示されている。少数の小規模臨床試験が、一部のナトリウムイオンチャネル遮断薬とオピオイドに関して同様の効果を示唆している。ガバペンチンとプレガバリンは、シナプス前カルシウムイオンチャネルの特異な2-サブユニットを修飾し、神経伝達物質の放出を抑制する。1,000人以上の患者由来のエビデンスからは、これらの薬剤により4人に1人の患者が50%以上の疼痛の軽減を達成することが示唆される。選択的セロトニン再取り込み阻害薬およびトピラメートは効果がないようである。選択的セロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込み阻害薬(デュロキセチンなど)は有効性を示しており1、三環系抗うつ薬より安全であると考えられる。
NNTを算出するために用いられた転帰は50%の疼痛の軽減であった。通常、患者は30%の疼痛の減少で「軽快した」と感じる2。大部分の無作為化対照試験は、糖尿病神経障害あるいは帯状疱疹後神経痛について検討しているが、たとえば外傷後の神経痛に関する試験は存在せず、中枢性疼痛を取り上げたものはわずかである。1つの診断単位において有効性を示す薬物療法は、疼痛を伴う他の末梢神経障害の病態に対しても処方可能であることが示唆される3。しかし、HIV神経障害に関する臨床試験では、この病態がFinnerupらが提案したアルゴリズムで推奨された薬剤にはあまり反応しないことを示している。
副作用の評価はさらに興味を引く。FinnerupらによるレビューのNNHは、副作用による脱落例の患者に適用されている。現実には患者は利益と害の相反性に対処しており、比較的軽度の副作用が患者のコンプライアンスにとって重要である可能性もある。まれではあるが命を脅かす可能性のある副作用は、通常無作為化対照試験では見つかることはない。特にオピオイドに関しては、長期的有効性と安全性に関する試験が必要である。クリニックでは薬剤の併用がよく行われるが、そのような治療戦略を評価する臨床試験はほとんどない4。
本論文のアルゴリズムは申し分のない出発点である。しかしその治療法は、有効性と安全性の両面においてそれぞれの患者に対して個別化される必要がある。高齢者は便秘、尿閉、口内乾燥、心血管への影響などの症状により、三環系抗うつ薬の有効量に耐性がない可能性がある。他方では三環系抗うつ薬は安価であり、多くの患者は一部の新薬を購入することができない。大多数の抗うつ薬と抗けいれん薬は、チトクロームP450酵素を介した薬物動態上重大な相互作用を有する。ガバペンチンとプレガバリンにはこの問題がない。
新しい作用機序に基づいた新規の治療法が必要とされている。Finnerupらにより提案されたアルゴリズムが患者の治療に慎重に適用されるならば、そのような薬剤が入手可能となるまで、神経障害性疼痛のある大多数の患者は疼痛のかなりの軽減を得ることができよう。
References
- Goldstein DJ et al. (2005) Duloxetine vs. placebo in patients with painful diabetic neuropathy. Pain 116: 109–118 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Farrar JT et al. (2001) Clinical importance of changes in chronic pain intensity measured on an 11-point numerical pain rating scale. Pain 94: 149–158 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Hansson PT and Dickenson AH (2005) Pharmacological treatment of peripheral neuropathic pain conditions based on shared commonalities despite multiple etiologies. Pain 113: 251–254 | Article | PubMed | ISI |
- Gilron I et al. (2005) Morphine, gabapentin, or their combination for neuropathic pain. N Engl J Med 352: 1324–1334 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
