Practice Point

NIH Stroke Scaleのスコアは脳卒中患者の動脈閉塞の存在を予測するか?

原論文

Fischer U et al. (2005) NIHSS score and arteriographic findings in acute ischemic stroke. Stroke 36: 2121-2125

PRACTICE POINT(診療のポイント)

NIH Stroke Scaleを用いた神経障害の数値化は、血管内の血管再生手技に関する臨床研究に適格な頭蓋内動脈閉塞患者の特定に有用である。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

画像上明らかな脳血管閉塞のある脳卒中患者は、動脈内血栓溶解療法の候補となり得る。予備的なエビデンスにより、血管閉塞が血管造影上可視的か否かを予測するうえでNIH Stroke Scale(NIHSS)は有益である可能性が示された。この仮説が確認されれば、医師は救急治療室において血管造影を行う患者を選択するためにNIHSSを利用することができる。

OBJECTIVES(目的)

NIHSSのスコアと、脳卒中の発症から1時間以内に行った血管造影による所見の関連を評価すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

動脈内血栓溶解療法に適すると考えられる急性虚血性脳卒中患者226人(平均年齢62±12歳)を本研究に組み入れた。CTまたはMRIによる評価では、頭蓋内出血のある患者はなかった。脳卒中の重症度を15項目から成るNIHSSを用いて評価した。結果は患者全員が4点以上を得点するか、または失語症、半盲のいずれかを単独で呈した。閉塞を確認するため、患者に症状の開始から6時間以内(頸動脈閉塞の患者が189人)と12時間以内(脊椎脳底動脈閉塞の患者が37人)にデジタルサブトラクション動脈造影(DSA)を行った。中枢部の閉塞を、内頸動脈(ICA)、中大脳動脈(MCA)のM1部とM2部、脳底動脈(BA)の閉塞と定義した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

動脈内におけるDSA上の閉塞、とくに主要な閉塞の予測に対するNIHSSの感度と特異度。

RESULTS(結果)

患者の大多数(n=200、88.5%)がDSA上で動脈閉塞を示し、171例の閉塞が中枢部の、29例が末梢部のものであった。それ以外の患者(頸動脈閉塞が19例、脊椎脳底動脈閉塞が7例)には肉眼で見える閉塞はなかった。NIHSSスコア中央値は14であった(3~38の範囲)。中枢部の閉塞のある患者では、末梢部位の閉塞がある患者、肉眼で見ることのできない閉塞がある患者、閉塞がない患者よりスコアが高かった(P<0.001)。DSA上で閉塞を予測する感度および特異度の曲線は、NIHSSスコア10の点で交差し、スコア10以上は頸部領域と脊椎脳底領域の動脈閉塞の特定にそれぞれ97%と96%の陽性的中率を示した。DSA上の中枢部の閉塞の予測におけるNIHSSの感度と特異度を示す曲線は、NIHSSスコア12の点で交差した。スコア12以上では、中枢部の閉塞の検出に対して91%の陽性的中率を示した。「意識水準に関する質問」「注視」「下肢の運動」「無視」などのNIHSSスケールの複数の項目は、DSA上観察されるような中枢部の閉塞の有意な予測因子であった(P<0.002)。右半球の脳卒中と左半球の脳卒中の患者に、NIHSSスコアの差異はなかった(P>0.05)。

CONCLUSION(結論)

NIHSSスコアが12以上の頸動脈閉塞あるいは脊椎脳底動脈閉塞のある患者は、血管造影上観察可能な中枢部の血管の閉塞を発症している可能性が高い。

KEYWORDS(キーワード)

血管造影法NIH Stroke Scale閉塞脳卒中

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COMMENTARY(解説)

Danilo Toni and Massimiliano Prencipe

内頸動脈の頭蓋内分枝、中大脳動脈のM1路とM2路、脳底動脈の閉塞は、静脈内血栓溶解療法では奏効率が劣るため、動脈内血栓溶解療法によりもっとも成功裡に治療できるというのが大多数の脳卒中研究者に共通する意見である。しかし動脈内血栓溶解療法の有効性は、合計220人の患者を対象とした2件の小規模の無作為化対照試験(RCT)1により支持されているにすぎず、静脈内血栓溶解療法のように認められた治療法ではない。静脈内血栓溶解療法を動脈内血栓溶解療法と、あるいは両方を組み合わせた場合と比較した大規模RCTが必要とされる。そのためには、入院時にこれらの治療法に適する候補者を特定するための容易な手段があれば助けとなろう。

とくにFischerらが中枢部として分類した閉塞では、CTおよびMRIによる血管造影はきわめて正確に動脈閉塞を検出する。しかし、脳卒中患者を受け入れている多くの医療機関ではこれらの技術を利用する準備は整っていない。デジタルサブトラクション血管造影法(DSA)は、動脈閉塞を検出するためのこれに替わる方法であり、FischerらはNIHSSを用いた神経障害の数値化が、この手技に適する患者を選択する手段となり得ることを示唆している。頸部領域あるいは脳底領域に病変があり、脳卒中の発症から6時間あるいは12時間以内にDSAを行った226人の脳卒中患者では、ベースラインのNIHSSスコア10以上は動脈閉塞の高度な予測因子であった。とくにスコアが12以上の場合、内頸動脈の頭蓋内分枝、中大脳動脈のM1部およびM2部、脳底動脈の閉塞が予測された。左半球と右半球の病変ではNIHSSスコアの合計の差が異なると思われたが、意外なことにそのような差異はこの研究では見出されなかった。

NIHSSは脳卒中患者の神経障害の程度を数値化するうえで信頼性の高い手段であることが繰り返し示されており、その予後予測能を報告する文献の数は増加し続けている。動脈閉塞の存在とその位置を予測するNIHSSの有効性は、MR血管造影法2およびDSA3を用いた過去の研究によりすでに示唆されている。最近では、NIHSSスコアと拡散強調MRI上の病変の大きさのミスマッチという概念が、将来の神経症状の悪化と梗塞の増大のリスクがきわめて高く、血栓溶解療法あるいは神経保護療法がもっとも適した患者を特定する新たな方法として提案された4。NIHSSスコアが高得点であるほど、血管造影上で大きな頭蓋内動脈閉塞が、またMRI上で治療可能な境界域組織がみられる可能性が高いことを、これらの研究は一貫して示している。

薬理学的血管再生と機械的な塞栓除去5、あるいはその両方を検討するRCTが将来実施されれば、患者を臨床試験に組み入れる前に、また血管造影を行う前にNIHSSをスクリーニングに活用することが可能となろう。それにより、臨床的に患者が適応でない場合、害を及ぼす可能性のある診断法および治療法を回避することができる。

References

  1. Wardlaw JM et al. (2003) Thrombolysis for acute ischemic stroke. The Cochrane Database of Systemic Reviews, Issue 3, Art. No CD000213
  2. Derex L et al. (2002) Early detection of cerebral arterial occlusion on magnetic resonance angiography: predictive value of the baseline NIHSS score and impact on neurological outcome. Cerebrovasc Dis 13: 225–229  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Mohammad Y et al. (2004) Qureshi grading scheme for angiographic occlusions strongly correlates with the initial severity and in-hospital outcome of acute ischemic stroke. J Neuroimaging 14: 235–241  | Article | PubMed | ISI |
  4. Davalos A et al. (2004) The clinical-DWI mismatch: a new diagnostic approach to the brain tissue at risk of infarction. Neurology 62: 2187–2192  | PubMed | ISI | ChemPort |
  5. Smith WS et al. (2005) Safety and efficacy of mechanical embolectomy in acute ischemic stroke: results of the MERCI trial. Stroke 36: 1432–1438  | Article | PubMed | ISI |

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