Practice Point

群発頭痛の現在の診断基準は臨床診療で用いるには限定的すぎるのか?

原論文

van Vliet JA et al. (2006) Evaluating the IHS criteria for cluster headache—a comparison between patients meeting all criteria and patients failing one criterion. Cephalalgia 26: 241–245

PRACTICE POINT(診療のポイント)

国際頭痛学会が定めた群発頭痛の診断基準に対し、注意すべき少数の患者群は完全には合致しないため、この診断基準はある程度柔軟に適用しなければならない

Top

SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

国際頭痛学会(IHS)は群発頭痛(CH)を、1日おきに1回~1日8回の頻度で発生し15分間~3時間続く重度で厳密に片側性の頭痛と定義している。発作は、少なくとも1つの頭部自律神経症状または不穏を伴う。CHは体内時計と関連があると考えられ、多くの患者は日周期性―とくに夜間発作の傾向―を示す。発作は患者の大部分において周期性発作として発現する。

OBJECTIVES(目的)

IHSが定めた現在のCH診断基準について、臨床診療ではより柔軟に適用すべきかどうかを検討すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

IHSの定義に合致したCH患者とCHに類似した臨床像を呈する患者を対象に、オランダで全国調査が実施された。合計1,452例が1998年5月~2001年3月に登録され、CHのIHS基準と、日周期的な発作パターンなど別の症状に関する項目を含む2つの質問票に回答した。IHSの診断基準の全項目を満たした患者群(1,163例、IHS-CH群)と、基準の1項目を除く全項目を満たした患者群(289例、IHS-CH-1群)の間で臨床症状を比較した。2群の患者は、頭痛発現時の平均年齢は同等であったが、男性に対する女性の比はIHS-CH-1群のほうが低かった(P<0.001)。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要評価項目は調査参加者の臨床症状とした。

RESULTS(結果)

IHS-CH-1群の患者のほとんど(185例、64%)は、発作の持続時間が3時間を超えていた(平均持続時間5時間、範囲190分~5日間)ことが原因で、IHSによるCHの定義に満たなかった。全体で、発作がより長時間続く傾向が認められた患者の42%が、発作のうち数回は3時間より短かったことを報告しており、したがってCHのIHS基準は満たされていた。通常CHに伴うその他の症状は、3時間を超える発作を報告した患者群のほうが、IHS基準の全項目を満たした患者群より発生頻度が低く(P<0.005)、概日リズム49%対64%、夜間発作67%対78%、エピソード的な発作パターン65%対78%、発作中の不穏64%対76%であった。しかし、片頭痛様の症状は、発作持続時間が長い患者群のほうがIHS-CH群より発生頻度が高く(P<0.005)、悪心38%対27%、羞明または音恐怖67%対54%であった。IHSの定義に満たなかった理由として2番目に多かったのは、発作頻度が1日おきに1回より少なかったことであった(46例、16%、平均で週に2回の発作)。しかしこのような患者における個々の発作は、CHのIHS基準を満たしていた。

CONCLUSION(結論)

3時間以上続く頭痛を呈するが、IHSが定めたCH診断基準のその他の項目、たとえば不穏やエピソード的発作パターンなどを満たしている患者では、CHに特異的な治療が奏効する可能性がある。発作頻度はCHの診断基準として有用ではない可能性がある。

KEYWORDS(キーワード)

群発頭痛、診断基準、評価、片頭痛

Top

COMMENTARY(解説)

Manjit S Matharu

CHは比較的よくみられる定型的な一次性神経血管性頭痛である。この病態は、おそらく人類が知っている痛みの中でもっとも激しいものの1つであり、このひどく苦しい症候群に伴う破壊的な障害と、治療の有効性が優れていることとを考え合わせれば、迅速な診断が重要となることは明らかである1,2。広く受け入れられているIHS基準は、臨床診療における診断の重要な枠組みとなっている3

van Vlietらは、CHのIHS基準について、オランダで大規模な全国調査を実施し、基準の全項目を満たす患者群と、1項目を満たさない患者群とを特定して比較することにより、評価を行った。基準の1項目を満たさない患者はコホートの20%を占め、このような患者の大部分は持続時間と頻度の基準を満たしていなかった。さらにこの患者群は、CHの基準全項目を満たした患者群と比べて、女性の比率が低く、片頭痛様の症状(羞明、音恐怖、悪心)が著明で、典型的なCH症状(日周期性、夜間発作、不穏)の発生頻度が低かった。著者らは、発作頻度はCHの基準として有用ではないこと、また3時間という発作持続時間の上限は延ばすべきであることを提案した。

今回の疫学的研究により、CHの臨床スペクトルはこれまで考えられていたより広い可能性が示唆されている。この見解は、CH患者の家系においてCHに類似した同様の非典型的症例の発生率が高いことを報告した最近のスウェーデンでの研究によって、さらに裏づけられている4

van Vlietらの研究では、感度と特異度の問題によって診断基準に生じる固有の限界が明らかにされている。診断ガイドラインは、真の症例をすべて含める必要性と、偽の症例を除外する必要性とのバランスを精細に保つものでなければならない。したがって、IHSの診断基準ではCH患者コホート全体がとらえられず、そのため臨床診療においては診断基準の柔軟な解釈が求められるという事実は、必ずしも驚くべきことではない。

今回の研究には重大な限界もある。本研究は質問票を用いた研究であり、著者らは患者本人の面接や診察を行って診断を確定したわけではなかった。本研究でCH診断基準を満たさなかった患者の一部はおそらく、片側性片頭痛などの他の頭痛症候群を患っていたと考えられる。この見解は、これらの患者をCHのIHS基準の全項目を満たした患者と比べると、片頭痛様症状の発生頻度が高く、典型的なCH症状の発生頻度が低かったという点において、本研究の結果からある程度裏づけられている。これに代わる説明として、CH診断基準を満たさなかった患者における頭痛の表現型は、片頭痛の生物学的機序によって修飾されていることも考えられるが、著者らは対象とした2群について、片頭痛の既往歴または家族歴がある患者の割合を示さなかった。

こうした診断上の懸念があるとしても、本研究に基づいてIHSの基準を変更することは軽率であろう。IHS診断基準の変更を求める提案は、適切な能力のある医師による個別の面接と診察を受け、診断が確定した患者を対象にした、質の高いデータに基づくものでなければならない。さらに、発作頻度の基準を破棄し、発作持続時間の基準を延長することによって、片側性片頭痛の患者を誤ってCH患者と診断してしまう可能性もある。

References

  1. Matharu MS et al. (2003) Management of trigeminal autonomic cephalgias and hemicrania continua. Drugs 63: 1637–1677  | Article | PubMed | ChemPort |
  2. Bahra A and Goadsby PJ (2004) Diagnostic delays and mis-management in cluster headache. Acta Neurol Scand 109: 175–179  | Article | PubMed | ChemPort |
  3. Headache Classification Subcommittee of the International Headache Society (2004) The international classification of headache disorders: 2nd edition. Cephalalgia 24 (Suppl 1): S9–S160
  4. Sjostrand C et al. (2005) Familial cluster headache. Is atypical cluster headache in family members part of the clinical spectrum? Cephalalgia 25: 1068–1077  | Article | PubMed | ChemPort |

Main navigation

NPG リソース

Main navigation


Extra navigation

.
ADVERTISEMENT