Practice Point

切除を受けた早期非小細胞肺癌患者において補助的化学療法により生存は改善するか?

原論文

Winton T et al. (2005) Vinorelbin plus cisplastin vs. observation in resected non-small-cell lung cancer. N Engl J Med 352: 2589-2597

PRACTICE POINT(診療のポイント)

外科的切除を受けたIB~IIIA期の非小細胞肺癌で薬物治療の適応となる患者は、再発と死亡のリスクを低減させるために、プラチナベースの補助的化学療法を受けるべきである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

外科的切除は早期小細胞肺癌(NSCLC)に選択される治療法だが、5年生存率は30~60%にすぎない。補助的化学療法による生存の改善はわずかであり、標準的な術後のケアは経過観察しかない。

OBJECTIVES(目的)

補助的ビノレルビン+シスプラチン併用投与が、切除を受けたIB期あるいはII期のNSCLC患者の生存を改善するか否かを評価すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

この第III相試験では、完全切除を受けたT2N0、T1N1、T2N1のNSCLCがありECOG一般状態(ECOG PS)が0または1の成人患者を、術後6週間以内に補助的ビノレルビン+シスプラチン併用投与あるいは経過観察のみに無作為に割り付けた。シスプラチン(50mg/m2)は1日目と8日目に4週間毎4クール投与し、ビノレルビン(25mg/m2)は週に1度16週間投与した。すべての患者に、オンダンセトロンを、通常コルチコステロイドを加えて投与した。過去5年以内に治療を受けた腎細胞癌、乳癌、メラノーマ、その他の癌のある患者、心臓機能が十分でない患者は試験から除外した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

全生存を主要エンドポイントとした。無再発生存、安全性と毒性も研究対象とした。生存のエンドポイントはKaplan-Meier解析を用いて推定した。

RESULTS(結果)

追跡期間は、化学療法群(n=242)で1.5~9.3年(中央値5.1年)、経過観察群(n=240)で0.4~9年(中央値5.3年)であった。年齢(中央値61歳)、性別、ECOG PS、組織学的特徴は両群で同等であった。化学療法により、全生存期間の中央値は73カ月(95%CI 48~未到達)から94カ月(95%CI 73~未到達)に延長した(ハザード比[HR]0.69、95%CI 0.52~0.91、P=0.009、補正後の中間解析でP=0.04)。絶対生存利益は5年で15%であり、全生存の確率はビノレルビン+シスプラチン併用群で69%(95%CI 62~75%)であったのに対し、経過観察のみの場合は54%(95%CI 48~61%)であった(P=0.03)。IB期のNSCLC患者は、化学療法を用いても全生存に改善はみられなかった。患者206例(42.7%)が再発し、内訳は化学療法群で87例(36%)、経過観察群で119例(49.6%、P=0.003)であった。化学療法群では、経過観察と比較して無再発生存期間が延長した(未到達対46.7カ月、再発のハザード比0.60、95%CI 0.45~0.79、P<0.001)。ビノレルビン+シスプラチンを1回以上併用投与された患者の88%で好中球減少症が発現し、このうち7%はグレード3の発熱性好中球減少症であった。患者2例が毒性作用により死亡した(0.8%)。非血液学的なの副作用には、倦怠感、嘔気、食欲不振、知覚神経障害、嘔吐、便秘などがあった。

CONCLUSION(結論)

ビノレルビン+シスプラチン併用による補助的化学療法は、毒性を抑え、外来でのNSCLC治療に有益である。また、完全切除後のIB期あるいはII期のNSCLCで、一般状態の良好な患者に対する標準的治療とすることができるだろう。

KEYWORDS(キーワード)

シスプラチン、非小細胞肺癌、生存、ビノレルビン

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COMMENTARY(解説)

Christopher G Azzoli

早期の非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のためには、局部再発のリスクが減少するため、解剖学的切除により、部分切除と比べて治癒の見込みが大きい1。しかし、大多数の患者に遠隔再発が起こる。再発性の転移性NSCLCは治癒不可能であり、生存期間の中央値は1年未満である。

NSCLC治療のための化学療法には毒性があり、効果も限られるため、この治療法を検証した過去30年の15件の臨床試験では、術後化学療法による明らかな利点が見出されなかった。しかし、この2年間により効果的な化学療法を用いた4件の独立した無作為化前向き臨床試験が行われ、切除を受けたIB~IIIA期のNSCLC患者に対する術後化学療法により、生存が改善したことを証明た。補助的化学療法の絶対利益は、5年生存率における4~15%の改善である。

International Adjuvant Lung Cancer Trial(IALT)は、切除を受けた病期I~III期のNSCLC患者を、シスプラチンにエトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシンのいずれかを併用する補助的化学療法群と化学療法非施行群に無作為に割り付けた2。5年全生存率は、対照群で40%であったのに対し、化学療法群では45%であり、死亡のハザード比(HR)は0.86で、補助的化学療法が有利であった(P=0.03)。Adjuvant Navelbine International Trialist Association(ANITA)試験では、切除を受けたIB~IIIA期のNSCLC患者を、高用量シスプラスチン+ビノレルビンによる補助療法群と化学療法非施行群に無作為に割り付けた。5年全生存率は、対照群で43%であったのに対し、化学療法群では51%であった(HR 0.79、P=0.013)3

これらとは対照的に、この総説で取り上げたられた試験(JBR. 10)は、試験への登録をIB~II期のNSCLC患者に制限し(T3N0は除外)、シスプラチンを分割した用量で投与している。5年生存率は、対照群の患者で54%であったのに対し、術後化学療法を受けた患者では69%であった(HR 0.69、P=)0.03)。

Cancer and Leukemia Group B(CALGB)試験9633は、完全切除を受けたIB期(T2N0M0)のNSCLC患者を、カルボプラチン+パクリタキセル併用投与群と化学療法非施行群に無作為に割り付けた4。計画された中間解析のさいに、化学療法群では有意な生存上の利益が観察され、試験は早期に打ち切られた。4年後の全生存率は、手術単独による治療群で59%、化学療法群で71%であった(HR 0.62、P=0.028)4。ANITAおよびJBR.10の事後解析では、IB期の患者における利益を証明することはできなかったが、CALGBのデータの説得力は、これらサブグループの解析結果にまさるものである。

これらすべての臨床試験は、プラチナベースの化学療法は大多数の患者にとって安全であると結論付けた。注意すべきは、IALT、ANITA、JBR.10で好中球減少症が多くみられたことと、化学療法に関連する毒性のため1~2%の患者が死亡したことである。毒性による死亡はCALGB 9633では報告されなかった。これらの臨床試験において治療を受けた患者の年齢中央値は60歳で、ベースライン時の一般状態は良好であり、すべての患者が術後2カ月以内に化学療法を開始した。

米国ではNSCLC患者の年齢中央値は68歳で上昇中であり、多くの患者に併存疾患があり術後の一般状態も思わしくない。腫瘍学者にとって、とくに高齢者と虚弱な患者において、どの時点で化学療法のリスクが利益を上回るかを判定する助けとなる情報は不足している。

現在のデータは、補助療法にはシスプラチンとビノレルビン併用(用量と投与計画は多様である)、IB期の癌のためにカルボプラチン+パクリタキセルを当てることを支持している。シスプラチンまたはカルボプラチンと第三世代薬剤の併用、非プラチナ製剤の併用、口腔上皮成長因子受容体阻害薬、血管形成阻害薬は、それぞれ転移NSCLCにおける有効性が確立されているが、補助療法においてはいまだ研究段階である。

References

  1. Ginsberg RJ and Rubinstein LV (1995) Randomized trial of lobectomy versus limited resection for T1 N0 non-small cell lung cancer. Lung Cancer Study Group. Ann Thorac Surg 60: 615–622 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Arriagada R et al. (2004) Cisplatin-based adjuvant chemotherapy in patients with completely resected non-small-cell lung cancer. N Engl J Med 350: 351–360 | Article | PubMed | ISI |
  3. Douillard JY et al. (2005) ANITA: Phase III adjuvant vinorelbine (N) and cisplatin (P) versus observation (OBS) in completely resected (stage I-III) non-small cell lung cancer (NSCLC) patients (pts): Final results after 70-month median follow-up. On behalf of the Adjuvant Navelbine International Trialist Association. [abstract #7013] J Clin Oncol 23: 624s | ISI |
  4. Strauss GM et al. (2004) Randomized clinical trial of adjuvant chemotherapy with paclitaxel and carboplatin following resection in stage IB non-small cell lung cancer (NSCLC): report of Cancer and Leukemia Group B (CALGB) Protocol 9633. [abstract #7019] J Clin Oncol 22: 621s | ISI |

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