Practice Point

減圧術により転移性脊髄硬膜外圧迫症患者の転帰は改善するか?

原論文

Patchell RA et al. (2005) Direct decompressive surgical resection in the treatment of spinal cord compression caused by metastatic cancer: a randomized trial. Lancet 366: 643–648

PRACTICE POINT(診療のポイント)

転移性脊髄硬膜外圧迫症患者における減圧術は、余命6カ月以上の患者を対象として、慎重に判断したうえで実施すべきである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

転移性脊髄硬膜外圧迫症(metastatic epidural spinal-cord compression:MESCC)患者のうち、現行の放射線療法とコルチコステロイドによる標準治療後に歩行能力を維持できる者は半数のみである。

OBJECTIVES(目的)

MESCC患者の治療において、外科的切除による減圧術と術後放射線療法の併用が、放射線療法単独より有効かどうかを検討すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

本非盲検試験は、米国内の7カ所の施設で実施され、MRIにより癌とMESCCの診断が確定した患者(年齢の中央値60歳、男性69%)を対象とした。患者を放射線療法または放射線療法+外科的切除による減圧術に無作為に割り付けた。最小期待生存期間は3カ月とした。少なくとも1つのMESCCの神経学的症状が認められ、歩行不可能な場合には、登録の48時間以上前から完全な対麻痺を呈していなかった患者を対象とした。無作為化は1992年9月から2002年12月の間に実施した。診断後、放射線療法または手術施行前に、全患者にコルチコステロイド(デキサメタゾン)を投与し、放射線療法が終了するまで減量して継続投与した。放射線療法群の患者には、30Gyを10回に分割して照射した。照射は無作為化から24時間以内に開始した。手術群の患者には、無作為化から24時間以内に、個々の患者に合わせた脊髄圧迫の軽減を目的とする手術を施行し、手術後14日以内に同じ放射線療法レジメンを施行した。神経学的評価は、施行前、施行中、施行直後と、追跡調査終了時または死亡まで4週ごとに実施した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要評価項目は歩行能とした。副次的評価項目は、生存期間、排尿自制、オピオイド鎮痛薬またはコルチコステロイドの必要性、FRANKEL分類、ASIA運動機能スコアとした。

RESULTS(結果)

適格性を評価した患者123例中101例を本試験に登録した。中間解析を実施した結果、治療後に歩行可能であったのは、手術群の患者で84%(42/50)であったのに対し、放射線療法群の患者では57%(29/51)であった(P=0.001)。P値が事前に決定した試験中止基準(P<0.0054)を下回ったため、本試験を中止した。追跡調査期間の中央値は、手術群で102日、放射線療法群で93日であった。手術群の対麻痺患者のほうが、歩行能を回復した割合が有意に高かった(P=0.012)。登録時に歩行可能であった患者では、手術群のほうが放射線療法群と比べて歩行能が長期間維持された(中央値153日対54日、P=0.024)。また、手術は、排尿自制、筋力、機能性の有意な改善とも関連しており(それぞれP=0.016、P=0.001、P=0.0006)、鎮痛薬への依存も有意に減少した(デキサメタゾン、P=0.0093;モルヒネ、P=0.002)。手術群の30日後の生存は、有意ではなかったが増加傾向を示し、入院期間に関しては両群間に差は認められなかった。

CONCLUSION(結論)

ファーストライン治療としての減圧術と術後放射線療法を併用するほうが、放射線療法単独よりMESCCに対する有効性が高い。

KEYWORDS(キーワード)

歩行運動, 減圧術, 転移, 放射線療法, 脊髄圧迫症

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COMMENTARY(解説)

Jonathan Knisely and John Strugar

MESCCは転移癌の絶望的な合併症である。脊椎への骨転移が大きくなると疼痛が起こり、最終的にはMESCCは、失禁、麻痺、圧迫レベル以下の感覚喪失をもたらす。転移癌に起因するMESCCの腫瘍管理は、腫瘍治療を目的とした分割照射法と、浮腫治療を目的としたコルチコステロイドに頼るところが非常に大きい1,2。放射線療法後に基礎疾患である悪性腫瘍に対する適切な全身管理が行われる。しかし、分割照射法とコルチコステロイド投与レジメンに関するさまざまな評価が行われているが、患者の転帰における大きな差は示されていない。さらに、余命が限られている患者に対する侵襲的な外科的介入が適切であるかどうかが議論されてきた。小規模研究や後ろ向き研究では、手術の実施に関する疑問に対する答えは得られていない。したがって、この緊急とまではいかないにせよ、急を要する問題として頻繁に持ち上がるこの問題に関しては、結論が出ないまま過去数十年間ほとんど進展がみられていない。

MESCC患者の転帰に影響を及ぼす因子としては、治療前の歩行状態、脊椎転移癌の広がりなどの症状併発、脊髄圧迫を引き起こしている転移の位置、骨圧迫および脊椎不安定性の存在、衰弱状態の継続期間などが示されている1-3。MESCCの発現後と治療後の歩行能は、QOLの改善と生存期間の延長と関連する4-5

Patchell らは、多施設共同第III相試験を実施し、圧迫部位が1カ所のMESCC患者に対する早期の減圧術により、患者の歩行能を回復または維持できる可能性が高いことを示した。手術群では、排尿自制が維持できる高い可能性、高い機能的能力、筋力の改善も認められた。さらに、生存の改善傾向も認められた。複数の隣接する椎体のMESCC、またはMESCCを引き起こさない脊椎内のその他の転移癌は、本試験の除外基準ではなかった。入院期間に関しては、手術群と放射線療法群のあいだに差は認められなかった。手術群では鎮痛薬とコルチコステロイドの使用量が減少した。放射線療法の照射点は示されていないが、放射線療法による管理は両群で同じであった。本試験では、放射線療法群の転帰は、過去に報告されているいくつかの試験の放射線療法群と比べて劣っていた5

本研究では登録患者数を増加させるのに10年以上かかっており、1つの施設における増加が顕著であった。このことが何らかの選択バイアスをもたらしたかどうかは確かではない。治療法の併用によるMESCCの管理が、限られた数の施設だけで実施可能であるとは考えにくい。

本試験の知見を適格患者群以外に拡大するのは難しいだろう。脊椎外科医が、圧迫部位が複数存在するMESCC患者、慢性的に全身状態が不良な患者、または余命3カ月未満の患者の手術を実施する可能性は低い。余命6カ月以上の患者では、本研究の結果によって治療法が変わる可能性がある。これにより、減圧術と固定術が最初に推奨される介入方法となり、次に術後補助放射線療法が施行される。しかし、これらの介入方法はどちらも緩和療法であり、手術には術後の疼痛増加と合併症の可能性が伴うため、中心的治療法としての放射線療法は、ほとんどの診療の場において主要な手法であり続けるだろう。

GLOSSARY(用語)

FRANKEL分類
脊髄損傷後の神経学的損失の重症度分類に用いられる臨床尺度
AMERICAN SPINAL INJURY ASSOCIATION (ASIA)運動機能スコア
American Spinal Injury Association(ASIA)機能障害尺度の構成要素で、脊髄損傷後の神経学的損失の重症度分類に用いられる臨床尺度

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