Practice Point

HER2過剰発現は進行癌に対する内分泌療法の奏効に影響を及ぼすか?

原論文

De Laurentiis M et al. (2005) A meta-analysis on the interaction between HER-2 expression and response to endocrine treatment in advanced breast cancer. Clin Cancer Res 11: 4741-4748

PRACTICE POINT(診療のポイント)

HER2の過剰発現を伴う乳癌は悪性度が高く、内分泌療法への耐性を有し、綿密な管理が必要である。標的薬剤による内分泌療法に関する無作為化対照試験が求められる。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

実験的データにより、増殖する乳癌細胞におけるヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)・チロシンキナーゼ経路とエストロゲン受容体(ER)経路間の複雑なクロストークの存在が示唆されている。HER2過剰発現がみられる腫瘍細胞は、タモキシフェンのような選択的ER調節薬に耐性をもつ可能性があり、臨床試験の結果はさまざまである。

OBJECTIVES(目的)

この研究の目的は、関連の既刊論文のメタアナリシスにより、転移性乳癌におけるHER2過剰発現と種々の内分泌療法の奏効との関連を検討することである。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

「breast cancer(乳癌)」と「c-erbB-2」「c-erbB2」「Neu」「HER2」のいずれかを組み合わせてワード検索し、Medline、CancerLit データベース(1966~2002年)、EMBASEデータベース(1990~2002年)から論文を特定した。また、米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)のAnnual Meeting Proceedings(1998~2002年)の抄録も調査の対象とした。さらに、検索された論文の総説と引用も調べた。論文は、進行乳癌、内分泌療法、HER2発現の評価(方法は問わず)の記載があるものとした。それ以外の情報は、必要に応じて研究責任者に問い合わせた。個々の研究におけるHER2発現と治療の失敗率との関連を、HER2陰性の腫瘍と比較したHER2陽性の患者における治療失敗の相対リスク(RR)で表した。RR>1の場合は、HER2陽性の腫瘍のある患者で治療の失敗率が高いことを示す。RRの蓄積推定値をMantel-Haenszel法を用いて求めた。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

評価項目は、発症から6カ月以内の癌の進行と定義される治療の失敗とした。

RESULTS(結果)

12件の研究をメタアナリシスの対象とした(患者2,379例)。HER2の発現はさまざまな方法で評価されていたが、HER2陽性の腫瘍の有病率はどの研究でもほぼ一定であった(19~35%)。全体のRRは1.42(95%CI 1.32~1.52;P<0.00001)であり、腫瘍におけるHER2過剰発現と治療失敗のあいだのきわめて有意な相関を示している。タモキシフェンが用いられた試験では、蓄積RRは1.33であった(95%CI 1.20~1.48;P<0.00001)。他の内分泌療法に関する試験の蓄積RRは1.49であった(95%CI 1.36~1.64;P<0.00001)。研究の質を示すスコア、HER2発現の評価方法は、どちらもこの相関に影響しなかった。10件の否定的な仮説論文を解析に加えたが、HER2過剰発現と治療失敗のあいだの相関に影響することはなく、発表バイアスは限られていた。ER陽性、ERの状態不明、ER陰性でプロゲストロン受容体陽性の腫瘍だけを対象とした二次的なメタアナリシスでも、結果は同様であった。

CONCLUSION(結論)

HER2過剰発現は、タモキシフェンおよび他の内分泌療法の高い失敗率と関連している。ER陽性あるいはHER2陽性の転移性乳癌患者に対して内分泌療法を単独で行うべきではないが、化学療法単独、トラスツズマブ+化学療法または内分泌療法の併用療法は効果がある。

KEYWORDS(キーワード)

乳癌, HER2, ホルモン療法, メタアナリシス, 奏効

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COMMENTARY(解説)

Andrew M Wardley and Anthony Howell

HER2腫瘍蛋白質の過剰発現は、結果として進行性乳癌の表現型をもたらす。HER2とステロイドホルモン受容体は共発現する可能性がある。De Laurentiisらが行った既刊論文のメタアナリシスは、転移性乳癌の治療開始から6カ月以内に、HER2過剰発現が内分泌療法失敗のRRに影響するか否かを評価したものである。

方法は適切であり、未発表の論文を入手するために地道な試みが行われた。データの妥当性を評価するために複数の方法が用いられた。研究の質を示すスコア(個々の試験の規模に従って分類された)、治療の流れ、HER2発現の評価方法とは無関係に、全体的な推定RRはほぼ安定していた。10件の否定的な模擬研究を解析に加えた後も、HER2過剰発現と治療失敗のあいだの相関は統計的に有意であった。

メタアナリシスの欠点としては、HER2過剰発現の測定法の不一致およびカットオフ値の違いなどがある。しかしHER2陽性の乳癌の比率は予想された範囲内であった(19~35%)。使用された薬剤のタイプはかなり多様であり、薬剤を第一選択治療、第二選択治療のどちらで用いたかも一定ではない。使用された薬剤が明記されない場合、試験は「非タモキシフェン群」に分類された。以上のような欠点はあるが、乳癌のHER2過剰発現と内分泌療法の失敗のとのあいだのきわめて有意な相関を示した全体の結果において、研究の方法はそのような難点を補うものであった(RR 1.42、95%CI 1.32~1.52;P<0.00001)。ERあるいはプロゲストロン受容体の発現が陽性、またはERの状態が不明(16.1%)である8件の試験(n=1,925)に解析を限定したさいも、結果は同様であった。不均一性の検定では各研究間の差違、あるいはタモキシフェン群と非タモキシフェン群の差異は示されなかった。非タモキシフェン群では、さまざまな背景で異なる治療法が行われていたため、不均一性の傾向がみられた(P=0.08)。

著者らは、HER2過剰発現のみられる転移性乳癌に対する内分泌療法失敗のリスクが40%以上の場合は、内分泌療法は不適切であること、またこれらの患者には化学療法単独、あるいはトラスツズマブとの併用を行うべきであると示唆している。一般に、内分泌療法はHER2陰性の乳癌患者より陽性の患者で効果が低いと考えられるが、既存の薬剤には断定的な言及が許されるだけの十分なデータがない。実際この研究では、非タモキシフェン群では、さまざまな治療法により異なる奏効率が得られることが示唆されている。一次薬物療法とファーストラインの転移性乳癌治療薬における無作為化対照試験では、ステロイドホルモンとHER2が共発現する乳癌患者において、第三世代のアロマターゼ阻害薬により相当な効果が得られることが示唆されている1-3。アナストゾールとトラスツズマブの併用・非併用に関する臨床試験はまもなく結果が出る予定であり、レトロゾールとトラスツズマブの併用・非併用に関する試験は参加者を募集中である。アロマターゼ阻害薬と小分子のチロシンキナーゼ阻害薬の併用を調査するため、また内分泌耐性の発現に関与する成長因子とステロイドホルモン受容体のクロストークにおいて重要であることが動物モデルで判明した成長因子経路の下流メディエーターを調査するために、現在合理的にデザインされた試験が多数進められている。ERのダウンレギュレーターであるフルベストラントは、ステロイドホルモン受容体とHER2が陽性の乳癌に対して非臨床試験で作用を示し、無作為化対照試験での評価が求められる4。やがて、これらの患者に対する最適な治療法が明らかになるであろう。

Acknowledgments

The synopsis was written by Petra Roberts, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Lipton A et al. (2003) Serum HER-2/neu and response to the aromatase inhibitor letrozole versus tamoxifen. J Clin Oncol 21: 1967–1972  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Ellis MJ et al. (2001) Letrozole is more effective neoadjuvant endocrine therapy than tamoxifen for ErbB-1- and/or ErbB-2-positive, estrogen receptor-positive primary breast cancer: evidence from a phase III randomized trial. J Clin Oncol 19: 3808–3816  | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Dowsett M et al. (2005) Biomarker changes during neoadjuvant anastrozole, tamoxifen, or the combination: influence of hormonal status and HER-2 in breast cancer—a study from the IMPACT trialists. J Clin Oncol 23: 2477–2492  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  4. Hutcheson IR et al. (2003) Oestrogen receptor-mediated modulation of the EGFR/MAPK pathway in tamoxifen-resistant MCF-7 cells. Breast Cancer Res Treat 81: 81–93  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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