早期メラノーマにおける術中リンパ節マッピングおよびセンチネルリンパ節生検は有効かつ安全か?
原論文
Morton DL et al. (2005) Sentinel node biopsy for early-stage melanoma: accuracy and morbidity in MSLT-I, an international multicenter trial. Ann Surg 242: 302–311
PRACTICE POINT(診療のポイント)
リンパ節マッピングおよびセンチネルリンパ節生検は、原発性皮膚メラノーマ患者の所属リンパ節流域の病期判定を行ううえで、安全かつ正確で合併症発生率の低い方法である。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
リンパ節に転移した乳癌、メラノーマ、結腸癌、肺癌およびほぼすべての固形癌の研究により、転移細胞は、原発部位からリンパ系を通り1~2個の所属リンパ節(センチネルリンパ節)に順次移動することが確認されている。リンパ節マッピングおよびセンチネルリンパ節生検(LM/SLNB)を用いて、潜在性リンパ節転移を同定するとともに、これにより所属リンパ節流域(regional nodal basin)の病期判定を行い、リンパ節完全郭清(CLND)が奏効すると思われる患者群を絞る。LM/SLNBはメラノーマの病期判定を行ううえで重要かつ十分に確立された手技になっている。
OBJECTIVES(目的)
所属リンパ節流域の病期判定をするうえでLM/SLNBの精度と臨床効果を評価すること、ならびにLM/SLNBが早期メラノーマ患者の合併症発生に及ぼす影響を明らかにすること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
国際的第III相試験である多施設共同選択的リンパ節郭清試験(Multicenter Selective Lymphadenectomy Trial:MSLT-1)では、11年にわたり18~75歳の原発性皮膚メラノーマ患者(ブレスロー厚さ1mm以上かつクラークレベルIII以上、またはブレスロー厚さの如何を問わずクラークレベルがIVまたはV)を登録した。メラノーマの部位は体幹部、頭頸部、四肢、足底部、手掌部または爪下部であった。連続30症例を用いた「学習期」(learning phase)では、米国、欧州、オーストラリアの18施設がそれぞれセンチネルリンパ節(SLN)同定率を85%の精度で示す必要があった。患者は、広範切除(WE)+観察およびCLND(のちにリンパ節転移が臨床的に明らかになった場合)を行う群、またはWE+LM/SLNBに加えてあらゆるSLN転移に対して直ちにCLNDを行う群に無作為に割り付けられた。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
LM/SLNBの精度と早期合併症発生率を評価した。
RESULTS(結果)
中央値54カ月間(範囲3カ月~10年)の追跡調査後、患者1,973人を解析対象とし、そのうち800人をWE+観察群、1,173人をWE+LM/SLNB群に割り付けた。LM/SLNBによるSLN同定率は全体では95.3%で、頸部よりも鼠径部および腋窩部で高かった(84.5%対99.3%および96.6%)。SLN転移陰性患者944人のうち、59人(6.3%)に所属リンパ節での再発が認められ、うち11人はサンプル採取されなかったリンパ節流域での再発であった。52人に局所転移またはin-transit転移が認められたが、これは、8人の患者ではリンパ節での再発が認められる以前に生じたものであった。本試験において計918人を登録していた10施設では、切除したリンパ節流域に再発が認められた割合は最初の25症例で10.3%、次の25症例で5.2%であった。手技に関連する死亡例はなく、WEによる手術合併症例は少なく、LM/SLNBは原発部位の手術による合併症発生率に影響を及ぼさなかった。LM/SLNBを施行した患者では、CLNDの追加により、切除リンパ節流域における合併症発生率が10.1%から37.2%に増加した(P<0.0001)。
CONCLUSION(結論)
LM/SLNBは潜在性リンパ節転移を正確に同定することができ、これに伴う合併症発生率は低い。このような臨床症状を伴わないリンパ節転移病変は、放置すると、より進行した触知可能リンパ節病変に進展する可能性が高い。
COMMENTARY(解説)
Marco Gipponi
皮膚メラノーマ患者において、所属リンパ節の腫瘍細胞の状態は、唯一のもっとも重要な予後因子である1。1990年代初頭、所属リンパ節流域のCLNDが所属リンパ節転移を同定できる唯一の方法であったが、この方法には2つの重大な欠陥があった。第1に、CLNDを受けた患者の約80%にリンパ節転移がなかったため、病期判定や生存率に対する利益は得られなかったと思われ、CLNDにより急性または慢性の合併症発生リスクが増大した。第2に、1個または数個のSLNに絞った分析と比べて、すべての所属リンパ節の病期判定では所属リンパ節転移率を14%も過小評価していた2,3。このためLM/SLNBは、局所リンパ節流域の病期判定によって、潜在性転移を発見して早期に治療的CLNDを実施できるようにするための、最小侵襲性の外科手技として提案されている。
MSLT-1の結果は、無作為化臨床試験内でのLM/SLNBの実施可能性、精度、合併症発生率を明確にしている。全体のSLN同定率は95.3%で、鼠径リンパ節流域がもっとも高く(99.3%)、ついで腋窩リンパ節領域(96.6%)と頸部リンパ節領域(84.5%)が続く。頸部領域でSLN同定率が低いのは頭頸部のリンパ排液が複雑なためであろう。転移陰性SLN患者において、同定の精度は、同流域のリンパ節の再発率評価により推定した。全体では、転移陰性SLN患者944人中59人(6.3%)に局所リンパ節転移が認められたが、このうち11人の転移は採取されなかったリンパ節流域での再発であった。944人中52人(5.5%)に局所再発またはin-transit再発が認められ、8人ではリンパ節再発以前に生じたものであった。これは、以前に切除したリンパ節流域への転移(「生物学的失敗」)が原因であったと思われる。注目すべきことは、切除リンパ節流域の再発率が試験の最初の25症例では10.3%であったが、次の25症例では5.2%に低下したことである。これは「学習期」以降に外科医がこの手技に習熟したことを示唆している。MSLT-1では、30症例を用いた「学習期」を強制的に設け、外科医はそれぞれ最低でも連続15症例を記録に残していたため、年間数症例しかメラノーマ患者の治療にあたっていない外科医は、高度に正確なマッピングに必要となる経験がなかったようであった。LM/SLNBは原発部位における合併症発生率に影響を与えず、局所性および全身性の合併症はほとんど増加しなかった一方で、LM/SLNB後に直ちにCLNDを行った場合には、切除リンパ節流域における合併症が有意に多く発生した(合併症発生率はそれぞれ10%、37.2%。P<0.0001)。
確かに、MSLT-1の生存分析の最終結果が大きな関心をもって待たれるところだが、予備データは、リンパ節転移を有する患者の生存率に利益があることを示しているようである4。多人数の患者の無作為によって、確実に予後因子が試験各群に均一に分布し、観察群においては、転移陽性SLNの発生率と臨床的リンパ節再発率がほぼ同じであった。後者の知見により、LM/SLNBを用いれば、臨床的に明らかなリンパ節転移が認められ、治癒の可能性が低いかなり進行した潜在性リンパ節転移患者の早期同定が可能になることが示唆される。
Acknowledgments
The synopsis was written by Petra Roberts, Associate Editor, Nature Clinical Practice.
References
- Balch CM et al. (2001) Final version of the American Joint Committee on Cancer staging system for cutaneous melanoma. J Clin Oncol 19: 3635–3648 | PubMed | ISI | ChemPort |
- Cochran AJ et al. (1988) Occult tumor cells in the lymph nodes of patients with pathological stage I malignant melanoma: an immunohistological study. Am J Surg Pathol 12: 612–618 | PubMed | ISI | ChemPort |
- Giuliano AE et al. (1995) Improved axillary staging of breast cancer with sentinel lymphadenectomy. Ann Surg 222: 394–401 | PubMed | ISI | ChemPort |
- Morton DL et al. (2005) Interim results of the Multicenter Selective Lymphadenectomy Trial (MSLT-I) in clinical stage I melanoma. J Clin Oncol 23 (Suppl 16): S7500
