急性骨髄性白血病における抗体と薬剤のコンジュゲート
原論文
Larson RA et al. (2005) Final report of the efficacy and safety of gemtuzumab ozogamicin (Mylotarg) in patients with CD33-positive acute myeloid leukemia in first recurrence. Cancer 104: 1442-1452
PRACTICE POINT(診療のポイント)
ゲムツズマブオゾガマイシンの認可は、癌に対する免疫療法の突破口の象徴といえるが、急性骨髄性白血病における有効性を改善し、毒性と抵抗性を減少させるためにさらなる研究が必要である。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
化学療法は、急性骨髄性白血病(AML)の再発時に長期寛解導入を目的として用いられ、造血幹細胞移植(HSCT)を容易にするほか、症状を緩和し一時的に延命できる。ごく少数の患者しかHSCTを受けられない。HSCTなしでは、概して二次寛解の期間は短い。ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)は、60歳以上のCD33陽性(CD33+)AML患者の初回再発に対する治療に認可された抗体標的化学療法薬剤である。
OBJECTIVES(目的)
AML患者においてGOの有効性と安全性を評価すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
初回再発のCD33+AML患者に対し、1997年5月12日から2000年8月28日まで、GO単剤療法の3施設共同非盲検単群第II相試験を行った。GOは1回量9 mg/m2を2時間かけて静脈内投与し、2~4週間隔を空けて2回投与した。すべての患者は初回再発時CD33+AMLであり、ECOG performance statusは0~2で、十分な肝機能・腎機能があり、末梢白血球数は30×109/Lであった。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要評価項目は完全寛解(CR)率とした。CRの定義は、骨髄内白血病芽球5%以下かつ末梢血に白血病芽球を認めず、好中球1.5×109/L以上、血小板100×109/L以上、ヘモグロビン90mg/L以上の回復を認め、赤血球と血小板の輸血を必要としない場合である。全寛解(CRの患者と血小板の回復以外のすべての項目を満たす患者の合計)、生存率、試験治療下で発現した有害事象も評価項目とした。
RESULTS(結果)
GOで治療した患者277例(年齢の中央値61歳)中、全寛解は71例(26%)であった。血小板も回復したCRは35例(13%)みられ、血小板が完全に回復しなかったCRは36例(13%)みられた。無再発生存期間の中央値は、血小板も回復したCRで6.4カ月、血小板が回復しなかったCRで4.5カ月であった。試験治療下で発現した有害事象としては、悪寒、敗血症、悪心または嘔吐、肺炎、呼吸困難、無気力、乳酸デヒドロゲナーゼの増加、低血圧、高血圧、発熱がみられた。Grade 3または4の好中球減少症は患者の98%、血小板減少症は患者の99%で起こったが、Grade 3または4の敗血症(17%)や肺炎(8%)の発症率は比較的低かった。9例では頭蓋内出血が起こり、うち8例はこの有害事象によって死亡した。Grade 3または4の高ビリルビン血症が29%、肝アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加が18%、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加が9%でみられた。肝静脈閉塞症(VOD)は、治療の前後いずれにもHSCTを受けなかった患者の0.9%でみられ、VODの16例(患者の5%)は、すべてGO投与299クールのあいだに発症した。
CONCLUSION(結論)
GOは再発したAMLに対する単剤療法として有効であり、良好な安全性プロファイルを有する。
COMMENTARY(解説)
David A Scheinberg, Joseph G Jurcic and Peter Maslak
癌細胞に対する毒素や化学療法薬剤の選択的デリバリーは、25年以上にわたって実験的治療の目標であった。したがって、抗癌・抗生物質であるカリケアマイシンの誘導体に、ヒト化抗CD33抗原モノクローナル抗体を化学的に結合したコンジュゲートであるGOをFDAが認可したことは、癌免疫療法において画期的な出来事であった。
本稿は、Larsonらによる、AMLを再発した患者277例に対するGO単剤療法の報告である。全寛解率は26%(CRと血小板の回復が不完全なCRの合計)であり、毒性(骨髄抑制、血小板減少症、感染、肝不全)については、この薬物に関する以前の報告と有意な違いは認められなかった。したがって本解説では、この、抗体と薬剤のコンジュゲートの使用に当たって生じる問題点に焦点を当てていきたい。
CD33は、初期の正常および白血病骨髄前駆細胞いずれにも発現され得る1。したがって、GOが多種多様な患者にCRを導入できることは驚くべきことであり、説明しがたい。本研究での寛解は概して短かった(中央値で5カ月未満)ものの、いくつかの症例では、白血病の病態維持に必要な主要な細胞が確実にCD33を発現していた一方で、正常前駆細胞は発現していなかったようだ。あるいは、他の生体内作用によって正常細胞の選択的増殖が可能であろう。
GOの毒性プロファイルはAML治療に用いられる典型的な化学療法薬剤のそれと異なる。ほとんどすべての患者に骨髄抑制が生じたが、敗血症や出血はそれほど目立たなかった。しかし、好中球減少症や血小板減少症はCRに至った患者の13%で概して非常に長引いた(好中球1.5×109/Lに至るのに7週、血小板25×109/Lに至るのに5週以上)。以前はみられなかったGOの毒性として、全患者の29%に生じた高ビリルビン血症と、はるかに少数の患者ではあるが肝VODがある。GO治療後にHSCTを受けた患者のうち、17%はVODを発症し、そのうち半数以上がこの合併症で亡くなった。興味深いことに、60歳以下の患者において、最後のGO投与後1カ月以内の死亡率は14%であった。それゆえ、この新しい標的薬物をもってしても、AMLの治療は臨床的に問題が残る。
モノクローナル抗体の選択性は、毒性を減少させるという点では有利に働くものの、制限にもなり得る。なぜなら、この薬剤では、表面上に広範なCD33発現を示さない白血病を治療することがおそらく期待できないからである。したがって、本研究の対象となったすべての患者は、白血病芽球の少なくとも80%に高レベルのCD33を発現していることが必要であった2。この高い選択性のために、再発または新たに診断されたAML患者に典型的にみられる1兆個の細胞を、単剤ですべて殺すことはできそうもない。したがって、抵抗性を避けるためにGOを多剤併用化学療法に取り入れていくことがますます重要になる。このような薬剤に対する抵抗性の別の形としては、カリケアマイシンに対する既知の多剤耐性がある3。
今後、白血病に対する抗体と薬剤のコンジュゲートの研究は、正常および白血病幹細胞の表現型と持続的反応との関係を解明すること、薬剤に対する抵抗性のメカニズムを(免疫学および薬理学的に)より良く説明すること、標的部位の飽和を妨害する全身組織腫瘍量の役割を決定すること、この薬を安全に治療計画に取り入れるために毒性のメカニズムをより良く理解すること、新たな毒性や、毒性の蓄積がなく、非交差耐性の治療効果を得られるような、別の抗体をベースとした構造物の使用を追究することに焦点を合わせる必要があるだろう4。
References
- Taussig DC et al. (2005) Hematopoietic stem cells express multiple myeloid markers: implications for the origin and targeted therapy of acute myeloid leukemia. Blood 106: 4086–4092 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Sievers EL et al. (2001) Efficacy and safety of gemtuzumab ozogamicin in patients with CD33-positive acute myeloid leukemia in first relapse. J Clin Oncol 19: 3244–3245 | PubMed | ISI | ChemPort |
- Linenberger ML et al. (2001) Multidrug-resistance phenotype and clinical responses to gemtuzumab ozogamicin. Blood 98: 988–994 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Jurcic JG (2005) Immunotherapy for acute myeloid leukemia. Curr Oncol Rep 7: 339–346 | PubMed | ChemPort |
