Practice Point

経口グルタミンは造血幹細胞移植を受ける小児の粘膜炎を予防できるか?

原論文

Aquino VM et al. (2005) A double-blind randomized placebo-controlled study of oral glutamine in the prevention of mucositis in children undergoing hematopoietic stem cell transplantation: a pediatric blood and marrow transplant consortium study. Bone Marrow Transplant 36: 611–616

PRACTICE POINT(診療のポイント)

グルタミン懸濁液によるすすぎは、幹細胞移植前処置によって誘導される粘膜炎症状を軽減し得る。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

口腔粘膜炎は造血幹細胞移植(HSCT)の患者を衰弱させる一般的な副作用である。この合併症に対して現在行われている対策としては、経静脈麻酔薬と高カロリー輸液(TPN)の使用がある。これまでの研究からは、非必須アミノ酸であるグルタミンの予防的投与によって、化学療法を受けている一部の患者、とくに小児において粘膜炎を予防し得ることが示唆されている。

OBJECTIVES(目的)

グルタミンの経口補充が、HSCTを受けている小児患者の粘膜炎を予防あるいは軽減できるか否かを決定すること。

DESIGN (デザイン)

この二重盲検無作為化プラセボ対照研究には、1998年4月から2002年12月のあいだに小児血液骨髄移植コンソーシアムの参加施設において同種もしくは自家HSCTを受けることになった年齢21歳以下の患者が登録された。患者には、グレードIIIまたはIVの粘膜炎が50%以上発症するリスクと関連する各種前処置が施された。患者が静脈閉塞性疾患の既往歴を有している場合、またはバンコマイシンペースト、非吸収性抗生物質もしくはグルタミン補充TPNを使用している場合には登録から除外した。

INTERVENTION(介入)

移植の日から開始して28日間、経口グルタミンまたはプラセボの経口グリシンを500 mg/mLの溶液中、2 g/m2の投与量で1日2回それぞれ服用するように、患者を無作為に割り付けた。処置の際に患者を毎日検査し、修正ウォルシュスケールに基づいて粘膜炎の判定を行った。患者が精神状態に変化を示した場合、または90 μmol/Lを超える血清アンモニアレベルを示した場合は、患者を研究から離脱させた。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要評価項目は、粘膜炎の平均スコアとした。また、粘膜炎の最高スコアも計算した。

RESULTS(結果)

合計120例の小児が解析に適格とされ、うち57例にグルタミンを投与し、63例にグリシンを投与した。年齢、性別、診断、移植の型または幹細胞源に関して2群間に有意な差はなかった。ただし、プラセボ群では単純ヘルペスウイルスについて血清陽性の患者が有意に多かった(P¬=0.04)。グルタミン服用患者の平均粘膜炎スコアに関しては、軽減に向かう非有意な傾向が示されたのみであったが、TPN(P=0.02)および経静脈麻酔薬(P=0.01)の使用日数に関しては、この群ではプラセボ群と比較して有意な短縮がみられた。粘膜炎スコアの最高値、菌血症のエピソード数、病院で過ごした日数および100日死亡率には、2群間で有意差は見られなかった。グルタミン過剰に関連する毒性は観察されなかった。

CONCLUSION(結論)

HSCTを受けている小児に対するグルタミンの補充は安全であり、ルーチンの粘膜炎対処法の使用の減少から示されるように、粘膜炎の重症度を低下させているように思われる。著者らは、経口グルタミンをこのような患者における標準治療とみなすべきであると推奨している。また今後、グルタミンの補充について、paliferminまたはTraumeel®(ドイツ・バーデンバーデン所在のBiologische Heilmittel Heel社製)による口腔リンスとの組み合わせで試験すべきであるとも提案している。

KEYWORDS(キーワード)

グルタミン造血幹細胞移植粘膜炎小児科学

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COMMENTARY(解説)

Stephen T Sonis

グルタミンは天然に豊富に存在するアミノ酸であり、ヒト体内における遊離アミノ酸プールの約3分の2を占めている。グルタミンは組織、とくに胃腸粘膜の維持および治癒に役割を有することが知られている。したがってこのアミノ酸が、放射線療法や化学療法に関連する粘膜損傷に対する介入法として研究されてきたことは意外ではない。グルタミンは粘膜細胞保護剤および治癒促進剤として、局所製剤(すすぎ後に嚥下する口腔リンス)、経口および非経口製剤中で用いられてきた。AquinoらはHSCTに関連する粘膜炎のグルタミン治療について報告しているが、グルタミンはさまざまな化学療法レジメンや放射線療法に反応して生じる粘膜炎の治療に関しても評価されている。しかし、これら試験の結果は一貫性に欠けるものであった。

グルタミンについて、また粘膜炎の治療薬として研究された他のさまざまな薬剤については、相反する効能結果が得られている。これは多くの場合、調剤、投与の経路および量、試験デザインならびにエンドポイントの矛盾を反映したものである。Ziegler1はHSCT患者の粘膜炎を対象とした9件の研究を再検討しているが、それらの試験ではグルタミンは経静脈もしくは経口の経路またはすすぎ後の嚥下により送達されており、投薬レジメンは6種類あった。また、試験デザインも複数あり、エンドポイントは検査による臨床転帰から、口腔内の不快感を患者が報告する主観的な評価までとさまざまであった。このような差異はしばしば結論を難しくする。9件の研究のうち7件では薬効は示されず、2件がポジティブな結果を示した。それでもなお、グルタミンの薬効が示された試験では、すすぎよる局所的な粘膜への取込みが決定的であったと思われる。

HSCTの前処置を受けている患者、とくに前処置に全身照射または高用量のメルファランが含まれている患者では、口腔粘膜炎のリスクが高い2。これらの患者における粘膜炎は、さまざまな健康上および経済上の不利な結果と関係している3。局所グルタミンはAquinoらによる試験の他にも、少なくとも2件の研究でHSCT患者における粘膜炎治療薬として評価されている。自家HSCTに先立ちパクリタキセルとメルファランの前処置を受けた患者の後向き非盲検連続試験では、グルタミン懸濁液(4時間ごと、1日あたり24 g)をすすぎ後に嚥下した患者12例が対照患者9例と比較されている4。この著者らは、グルタミンによって、粘膜炎のピーク等級と持続期間の減少ならびにオピエート使用日数の短縮がもたらされると報告した。またAndersonらは、自家HSCTを受けた87例の小児と成人におけるすすぎと嚥下によるグルタミン療法(1 g/m2)の薬効について報告している。これは、患者の自己報告とオピエートの使用期間によって評価された。ただし、このような薬効は同種HSCTを受けた96例の患者においてはみられなかった5。Aquinoらの研究とは対照的に、これらの試験はいずれも、高カロリー輸液と比較したグルタミンの薬効については言及していない。

2つの因子がAquinoらの報告した結果の程度に影響を及ぼした可能性がある。第一に、この調査ではドナーの型によって患者を層別化していないため、報告された有効性が自家移植と同種移植の各コホート間で異なっていた可能性がある。第二に、粘膜炎の重症度を評価するために使用されたスケールには、スコアにおける粘膜損傷の程度を希薄化あるいは不明瞭化し得るパラメーター(外唇の特性、歯肉の健康状態、口腔衛生、および唾液の産生)が含まれていた。

粘膜炎は依然としてがん治療の強度を制限しており、グルタミンはその症状を抑えるうえで有用となりうる。これはさらなる研究に値すると思われる。

References

  1. Ziegler TR (2001) Glutamine supplementation in cancer patients receiving bone marrow transplantation and high dose chemotherapy. J Nutri 131 (Suppl): S2578–S2584
  2. Sonis ST et al. (2004) Perspectives on cancer therapy-induced mucosal injury: pathogenesis, measurement, epidemiology, and consequences for patients. Cancer 100 (Suppl): S1995–S2025
  3. Sonis ST et al. (2001) Oral mucositis and the clinical and economic outcomes of hematopoietic stem-cell transplantation. J Clin Oncol 19: 2201–2205  | PubMed | ISI | ChemPort |
  4. Cockerham MB et al. (2000) Oral glutamine for the prevention of oral mucositis associated with high-dose paclitaxel and melphalan for autologous bone marrow transplantation. Ann Pharmacother 34: 300–303  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  5. Anderson PM et al. (1998) Effect of low-dose oral glutamine on painful stomatitis during bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplant 22: 339–344  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |

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