局所療法の違いは早期乳癌の再発と長期生存率に対して、どのような影響を及ぼすか?
原論文
Clarke M et al. (2005) Effects of radiotherapy and of differences in the extent of surgery for early breast cancer on local recurrence and 15-year survival: an overview of the randomized trials. Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Lancet 366: 2087–2106
PRACTICE POINT(診療のポイント)
乳房または胸壁のアジュバント放射線療法は(他の死亡原因がなければ)15年の追跡調査の間に再発が4回避けられるごとに約1件の乳癌による死亡を防いでいる。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
局所領域的な再発のリスクに影響する局所的乳癌治療の違いは、乳癌による長期的な死亡率にも影響を及ぼし得る。
OBJECTIVES(目的)
局所コントロールが長期的生存率に与える影響を定量的に評価するため、1995年までに開始された乳癌の放射線療法とさまざまな外科手術の無作為化試験について共同研究によるメタアナリシスを実施すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
乳房温存手術(BCS)または乳房切除術後の放射線療法(同様な全身治療を使用)に関する78試験のデータが分析された。放射線療法を行った場合と行わなかった場合、外科手術が大規模な場合と小規模の場合(放射線療法ありまたはなし)、放射線療法なしで外科手術が大規模な場合と放射線療法ありで外科手術が小規模の場合、などが比較された。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要エンドポイントは、遠位または局所における乳癌の再発および生存率とされた。特定の原因による死亡率および全死亡率、ならびに乳癌再発前の二次性原発癌の発生率についても分析された。
RESULTS(結果)
データが利用できた42,000例の女性のうち、25,000例の女性において5年局所再発リスクが10%を超えていた。これらの女性のうち、10試験の7,300例がBCSを施され、放射線療法を受けていた(主に温存された乳房にのみ)。これらの患者(主に腋窩廓清を受け、リンパ節陰性疾患を有する)における放射線療法のあり対なしの5年局所再発率は7%対26%、15年乳癌死亡リスクは30.5%対35.9%であった(5.4%の低下、SE 1.7、2P=0.0002;5.3%の全死亡率低下、SE 1.8、2P=0.005)。また、乳房切除術、腋窩廓清および(主に胸壁および領域リンパ節に対する)放射線療法を受けたリンパ節陽性疾患の女性8,505例を含む25試験のデータが利用可能であった。放射線療法による絶対的利益はBCSを受けた群と比較すると、この群においても同様であった(6%対23%の5年局所再発リスク[17%の低下]、54.7%対60.1%の15年乳癌死亡リスク[5.4%の低下、SE 1.3、2P=0.0002;4.4%の全死亡率低下、SE 1.2、2P=0.0009])。放射線療法は大きな管理リスクが存在する場合にのみ、局所再発に大きな絶対的抑制をもたらした。たとえば、リンパ節陰性疾患の女性1,428例の場合、乳房切除術および腋窩廓清後の5年局所再発リスクは放射線療法を行わなかったときでも6%に過ぎなかった。放射線療法はこの割合を2%に下げたが(2P=0.0002)、15年乳癌死亡率は有意に低下していなかった。とくに古い放射線療法レジメンのいくつかでは、放射線療法後の女性において対側乳癌および乳癌以外の原因(主に心疾患)による死亡のリスクに増加がみられた。
CONCLUSION(結論)
早期乳癌においては、温存された乳房および他の部分(胸壁、領域リンパ節など)の局所再発の回避が、15年乳癌死亡率の観点から言ってかなり重要である。早期乳癌の管理は将来的な変化が予想されるとはいえ、局所再発が4回防がれるたびに乳癌による死亡を1回防止できることになる。
KEYWORDS(キーワード)
乳癌、放射線療法、再発、統計学、生存率
COMMENTARY(解説)
Geoffrey Cogill and Jeffrey Tobias
2000年に発表された前回のEBCTCG(Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group)メタアナリシスは、放射線療法の利益とリスクを判断するための権威あるベンチマークを提供した1。その方法論は時折批判もされているが、たいていは患者の数、治療技術、治療された腫瘍の量、および他の因子に関していくつかの試験が含んでいた欠点を理由とするものである2,3。
さらに5年が過ぎ、関係する試験からは重要な新たな情報がもたらされている。基礎的な特性の広範囲にわたる収集は、より大きな統計的検出力と組み合わさって、臨床的に重要なサブグループ解析をも可能としている。
乳房温存手術(BCS)の関係する試験から利用できる事例の数はほぼ2倍になった。こうして初めて、乳房および/またはリンパ節部位が照射を受けたかどうかに関係なく、これらが15年生存率に与える利益を示すことが可能となった。結果として、放射線療法を伴う乳房切除術と腋窩廓清について、同様な相対的利益が示されている(疾患がリンパ節陽性の場合。疾患がリンパ節陰性の場合は除く)。これらの所見は、リンパ節陰性の患者においては乳房切除術後の放射線療法を避けることができるという従来の見方を支持するものである。また、EBCTCGのデータからは、局所再発と死亡率が共に同様な比率で低下していることから、BCS後および乳房切除術後の放射線療法による局所領域的な再発回避は同様であることが示唆されている。
放射線療法を行った場合と行わなかった場合の比較における全治療方法を複合した結果(25,000例の女性における5年局所再発の10%以上の低下)は、5年局所再発率の低下と乳癌死亡率の長期(15年)的な低下が比例的であるという概念を補強するものである。さらに、2000年の概要とは対照的に、今回はこれらの低下がBCS群と乳房切除術群の両方の全死亡率に対する利益として解釈されている1。
サブグループ解析によると、BCS後に放射線療法を受けた若い患者においては局所再発の有意な改善が示されているが、リンパ節陽性疾患の乳房切除術ではそうでなかった。再発率の絶対的な低下は、T4の十分に分化していない大きな腫瘍に対応するように大きくなっていたが、BCSまたは乳房切除術後の放射線療法の患者におけるホルモン受容体の状態に関しては違いがみられなかった。放射線療法による局所コントロールは全身性治療の有無にかかわらず効果的であった。
EBCTCG解析は、放射線療法の手法や研究の期間に関係なくあらゆる試験を取り込み続けており、その結果、対側乳癌、肺癌および食道癌、白血病、肉腫および心血管疾患の小さいが有意な増加が示されている。これらのリスクは治療から5年後に始まり、完了した追跡調査の全期間に及ぶ。EBCTCGはその特質上、依然として慎重さが保たれており、これらのデータはまだ確固とした結論を下すのを可能とするだけ十分には成熟しておらず、リスクを明確化するためにはさらなる追跡調査が必要であるとされている。なお、他の研究者たちも、心血管疾患および二次性癌(対側乳癌やその他の癌)のリスクが現代の技術により低下していることを示すために、治療羅病率とその全体的死亡率に対する効果に関して、これらやその他のデータを再解析している4,5。CTプランニングや強度変調放射線療法は、これらのリスクをまたさらに減らしてくれるかもしれない。
本解析は過去のデータに基づくものであるが、これはBCSと乳房切除術とを分離し、リンパ節の状態の重要性を評価し、また、5年局所再発に10%以上の低下を示す患者のサブセットを調査しており、臨床腫瘍学者にとっても大きな重要性をもつものである。他のグループは現行の診療にとって「決定的」となる結果を得ようとして、Biologically Effective Dose5や現代の手法と過去の手法4に基づいた層別化などを行い、データを再検討している。しかし、これらの批判的研究にもかかわらず、本解析は間違いなく、早期乳癌患者における持続的な局所コントロールが全生存率に対して与える影響を確認したものと言える。
References
- Early Breast Trialists' Collaborative Group (2000) Favourable and unfavourable effects on long-term survival of radiotherapy for early breast cancer: an overview of the randomised trials. Lancet 355: 1757–1770
- Overgaard J and Bartelink H (2000) Correspondence: breast cancer survival advantage with radiotherapy. Lancet 356: 1269–1270 | Article | PubMed | ChemPort |
- Ragaz J et al. (1997) Adjuvant radiotherapy and chemotherapy in node-positive premenopausal women with breast cancer. N Engl J Med 337: 956–962 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Hooning MJ et al. (2006) Cause specific mortality in long term survivors of breast cancer: a 25 year follow-up study. Int J Radiation Oncology Biol Phys 64: 1081–1091 | Article |
- Gebski V et al. (2006) Survival effects of post mastectomy adjuvant radiation therapy using biologically equivalent doses: a clinical perspective. J Natl Cancer Inst 98: 26–38 | PubMed |
