HIGHLIGHTS
メビウスの帯について明らかに
散乱の手掛かり
ビリヤードのボールは、衝突時のエネルギーと運動量の保存を学生に示すのに最適で、極低温原子や量子ドットのモデルとしても有用である。そして、多重散乱イベントを生じさせる移動界面をもつより複雑な系(マイクロ波空洞共振器など)についても、F Lenzらはビリヤードから手掛かりを得た。
Lenzらの理論研究には、変形可能な楕円形の境界が含まれている。つまり、調和的に楕円を駆動することによって、移動する標的から多重散乱を受ける集団という動的非平衡系を生成した。彼らは、105個の粒子集団について楕円の小さな穴を通る脱出率(escape rate)を計算した。これには、位相空間の4次元(空間3次元と時間1次元)マッピングが必要である。粒子は2種類の軌道に乗ることができる。この軌道は「librator」か「rotator」で、rotator軌道のみが脱出に結びつく。静的な境界とは異なり、駆動された系では脱出率は時間が経過しても飽和しないことが見いだされた。このふるまいは、2つの基本的な散乱プロセスによってlibratorがrotatorに変えられ、脱出が起こるためで、調整可能である。
干渉の証明
干渉の概念は、よく知られている2スリット実験にとどまらない。特に興味深い効果は、粒子を区別できないかぎり、完全に独立した発生源から放出されるのに干渉する粒子の効果である。I Nederらは、電子対を用いてこの効果を実証した。この実験は、恒星の無相関部分からの光の干渉を観察し、この干渉を用いて目に見える恒星の角直径を決定したH BrownとTwissの古典的実験の電子を用いた再現である。
古典的な波を使用したH Brown-Twiss効果は半世紀以上前から知られているが、独立した単一光子が干渉する実験の構築が難しいことはわかっている。特に、適切に同期させることが可能な完全に独立した単一光子源の構築が難しいためである。Nederらが示しているように、フェルミ気体が完全に縮退する温度に冷却された導体中の電子を用いれば、これらの問題により容易に取り組むことができる。
二重井戸の中の原子
光格子中に捕らえられた低温原子は、量子多体効果のシミュレーターとして成功したが、このような系は量子コンピューター用ハードウェアの対抗馬でもある。しかし、格子の個々の原子を操作する機能、つまり単一キュービットを扱う機能という必要条件がまだ満たされていない。
P Leeらは、格子を構成するレーザービームの偏光を変えることによって、単位セルを単一ポテンシャル井戸と二重ポテンシャル井戸の間で動的に変えることができる光格子について詳しく調べた。二重井戸の形状では、例えば左手の井戸にある原子の遷移周波数は、右手の井戸にある原子の遷移周波数とは異なる。このタグは原子の性質の異なる2つのサブセットを扱う、あるいは全原子を個々に扱うための手掛かりとなる。さらに、単一井戸と二重井戸の形状を切り替える機能は原子対間の相互作用を制御する手段となる。
グラフェンのpn接合
グラフェンpn接合の異常な量子ホールのふるまいに関する最近の2つの研究により、グラフェンの珍しい電子特性を調べ、おそらく最終的には利用するデバイスの構築に向けた研究が急速に進んでいる。
ほとんどの半導体において、pn接合は反対にドープした2つの領域の接合部に形成される。しかし、炭素原子でできた純粋な六角形のメッシュであるグラフェンは、従来のようにドープすることができない。第一の研究で、J Williamsらは、両端の絶縁ゲート電極を用いて単層グラフェンシートの隣接する領域の多数キャリヤーの型を静電的に調整し、この問題を解決した。彼らは、2つの領域が同じ型に調整された場合、そのデバイスは整数量子ホール効果を示したが、異なる型に調整した場合は分数量子ホール効果を示すことを発見した。これは、D AbaninとL Levitovによってそのような接合部に関する第二の研究でなされた理論的な予測と一致する。
平衡状態のメビウス
メビウスの帯の1つの面だけでできた不思議な形状はお馴染みである。しかし、平衡状態におけるメビウスの帯の正確な形を数学的に予測することがどれほど難しいかはおそらくほとんど知られていない。この問題は、1930年にM Sadowskyによって最初に提案されたが、いまだに解決されていない。
この問題を解決するため、E StarostinとG Heijdenはいわゆるinvariant variational bicomplex formalismを使用して、大きく変形した際に曲がることがあっても伸びることがないシートの平衡状態を説明する式を導き出した。彼らはこれらの式を使用して、幅および長さの異なるシートを曲げてメビウスの帯を形成した場合に発生する構造を数値的にシミュレートした。StarostinとHeijdenの方法は、未解決の数学的問題の解決法となるだけでなく、紙をくしゃくしゃにしたり織物を掛けたりしたときに生ずる3次元形状を解明するのに有用となるかもしれない。
