HIGHLIGHTS
スピン、回転、損失
大きないじめっ子
太陽系には波瀾万丈の歴史がある。移動や重力による接近遭遇によって、原始惑星物質は太陽系内縁部へ投げ込まれたり、太陽系外部へ完全に放り出だされたりすらしてきた。J H DebesとS Sigurdssonは、不運にも巨大なガス巨星の力の影響を受ける地球サイズの原始惑星と月サイズの衛星が置かれた窮状について検討した。
DebesとSigurdssonのシミュレーションによると、哀れな衛星は、木星のような巨星の周りを逆行する共鳴軌道に取り込まれる可能性がある(これは海王星の衛星であるトリトンに起こったことかもしれない)。また、原始惑星がはじき出されて、内部太陽系と交差する離心軌道に入る可能性もある。他にも、ガス巨星との度重なる接近遭遇により、惑星と衛星が対になって太陽系から放り出されることも起こりうる。
興味深いことに、これらの束縛された天体間のスピンと角運動量の潮汐散逸は放射壊変による熱と共に惑星の熱源となり、適当な大気条件下では液体の水や、潜在的には生命の形成が可能になるかもしれない、とDebesとSigurdssonは述べている。暖めてくれる恒星をもたないこのような「浮遊する地球」が、次世代のマイクロレンズ効果を利用した観測によって発見される可能性がある。
重い金属
天然アルミニウム(27Al)は「軽い」金属である。しかし、T Baumannらによると、アルミニウムの原子核やこの陽子数に連なる他の原子核の重さの限界は、今まで考えられていたものより重い可能性がある。Baumannらは、天然同位元素より中性子を15個多く束縛した原子核である42Alの生成に成功した。
所与の数の陽子に束縛されうる中性子数の限界は、「中性子ドリップライン」と呼ばれており、その決定は現在進行中の理論的研究と実験的研究の課題である。42Alの存在は、この原子核は束縛されないとする従来のモデルによる予測と矛盾する。しかし他のモデルでは、42Alは束縛されると予想されているが、アルミニウムの質量は47か48にまで達する可能性もあると示唆されている。言い換えれば、アルミニウムやより重い原子のドリップラインは、現在稼働中の核研究施設では到達できず、次世代の研究施設でも到達できない可能性がある。
損失の推定
CERNの大型加速器(LHC)は、陽子-陽子相互作用による高エネルギーのフロンティアの探索に加え、重イオンに関するプログラムも行う。クォーク・グルーオン・プラズマの生成を研究するため、その運転時間の一部が鉛原子核の衝突にあてられる予定である。
ブルックヘブン国立研究所の相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)では既に研究が進展しており、今回R Bruceらは、RHICのデータを用いてLHCにおけるビーム損失の考えうるメカニズムを調べた。
Bruceらは、「bound-free対生成」を懸念していた。このシナリオは次のようなものである。2つの裸の原子核が互いに接近すると、仮想光子を交換する。この光子は電子陽電子対へ変換される。電子は原子核の1つによって軌道に捕らえられ、陽電子は逃れる。このように生成された単一電子原子核は、ビームラインから放り出されて周囲の加速器部品に入る。
ビーム粒子の損失以外に、これは低エネルギーのRHICでは問題ないが、極度に冷却されたLHC装置では許容できない熱を発生させる可能性がある。心強いことに、BruceらのRHICでの計測では、LHCでのbound-free対生成の理論的な予測は正しい桁であることが示されている。
クラックの回転
強度は高いが極めて短いレーザーパルスを物質に集中させると、たとえその物質が光学的に透明であっても、奇妙なことが起こりうる。P Corkumらは最近、溶融石英ガラスに直線偏光した高強度フェムト秒レーザーパルスを連続して照射すると、意外なことに周期的に配列した平行ナノクラックが焦点の周辺に形成されることを示した(Phys. Rev. Lett. 96, 057404; 2006)。さらに不思議なことに、Corkumらは今回、パルスの偏光を回転して同じ領域に集中させると、以前に形成されたクラックは消え、その向きが偏光ビームの向きに従う新しいクラックが形成されることを示している。
Corkumらは、ビームによって物質中に「ナノプラズマ」が発生したために生じた、極端に非線形な光学的挙動によってこの現象が引き起こされたと説明している。このようなナノプラズマによって入射光の吸収が局所的に強まり、ランナウェイプロセスが起こって光の波長よりはるかに小さい構造の形成が可能になる。
量子スピンホール効果
情報処理の手段として電荷ではなくスピンを使用する利点の1つは、原理的にはエネルギー損失がほとんど、あるいは全くないことである。しかし、これまで実証されたスピントロニクスデバイスの多くは、純粋なスピン電流の操作ではなく、移動電荷のスピン偏極のフィルタリングによって動作する。これは、本来的に損失を生じる方法である。求められている純粋なスピン電流を発生させる方法として、ある種のバンド絶縁体中の散乱が印加電場に垂直なスピンの集積を引き起こすスピンホール効果が提案されている。
M Königらは、さらに先を目指し、テルル化水銀量子井戸において量子スピンホール効果が発生したことを示す証拠を報告した。従来の量子ホール効果と同様に、量子スピンホール効果は、エキゾチックな量子のトポロジカル挙動を示す準粒子状態を裏付けていると推測される。
