Research Press Release

気候変動:AMOC(大西洋子午面循環)は将来の温暖化に耐えられるかもしれない

Nature

2025年2月27日

大西洋子午面循環(AMOC:Atlantic Meridional Overturning Circulation)は、将来の地球温暖化に耐えることができ、崩壊を回避できる可能性があるモデリング研究を報告する論文が、Nature に掲載される。この重要な海流は地球の気温を調節する役割を担っている。この研究結果によると、地球温暖化シナリオでは循環が弱まる可能性が高いものの、他の海洋プロセスが崩壊を防ぐ可能性がある。これらのプロセス間の相互作用を理解するには、さらなる研究が必要である。

AMOCは、大西洋における熱の北への輸送に重要であり、熱伝達と炭素吸収において重要な役割を果たしている。これらは地球規模および地域的な気候変動に影響を及ぼす。予測では、温室効果ガス濃度の増加と、グリーンランド氷床(Greenland Ice Sheet)の融解水や気候変動に関連する降水パターンの変化による淡水流入により、この循環システムが弱まる可能性があることが示唆されている。しかし、これらの予測は様々であり、AMOCの今後の推移は不明である。

Jonathan Bakerらは、温室効果ガス濃度と北大西洋の淡水レベルの極端な変化に対するAMOCの反応を評価するために、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change;気候変動に関する政府間パネル)の結合モデル相互比較プロジェクト第6段階の34のモデルを使用した。こうした条件下で、著者らは、AMOCは気候変動に対して回復力があり、崩壊しないことを発見した。著者らは、AMOCは弱体化した状態が続くとし、検討したすべてのモデルで横ばい状態にあると指摘している。また、南氷洋の風によって駆動される北大西洋深層水の湧昇が循環を維持し、崩壊を防ぐと提案している。さらに、著者らは、この湧昇は大西洋または太平洋における深層への沈降とバランスが取れていなければならないとし、太平洋子午面循環(PMOC:Pacific Meridional Overturning Circulation)が発達した場合にのみ、AMOCは崩壊する可能性があると指摘している。著者らが検討したすべてのモデルでこの循環は発生するものの、それは南大洋の湧昇流と釣り合うには弱すぎることが示されており、今世紀中にAMOCが崩壊する可能性は低いことを示している。

Bakerらは、AMOCの将来を正確に予測するためには、南大洋とインド太平洋の循環について、その影響を理解するためのさらなる研究が必要であると結論づけている。

Baker, J.A., Bell, M.J., Jackson, L.C. et al. Continued Atlantic overturning circulation even under climate extremes. Nature 638, 987–994 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08544-0
 

 

doi:10.1038/s41586-024-08544-0

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度