考古学:古代人が分業していたことを示唆する足跡化石
Scientific Reports
2020年5月15日
これまでにアフリカで収集されたヒトの化石記録の中で最大の足跡化石のコレクションについて記述した論文が、今週、Scientific Reports に掲載される。この化石コレクションは、更新世後期(12万6000年~1万1700年前)のヒトの生活についての理解をさらに深めるもので、古代のヒト社会で分業が行われていたことを示唆している。
今回、Kevin Hatalaたちの研究チームは、タンザニアのエンガレ・セロで、近隣のマサイ族コミュニティーの成員が発見していた遺跡からヒトの足跡化石408点を発掘し、それらの年代を1万9100年~5760年前と決定した。Hatalaたちは、足跡化石のサイズと間隔と向きから、17種類の足跡の軌跡が、南西方向に同じ歩行速度で一緒に移動したヒトの一群のものだと考えている。この一群は、14人の成人女性、2人の成人男性、1人の若年男性によって構成されていた可能性が高いとされる。Hatalaたちは、これらの女性たちが一緒に採餌しており、男性たちは、そこにやって来たか、女性たちの同伴者であったと推測している。こうした行動は、現代の狩猟採集民(アチエイ族やハツァ族)に見られる。今回の研究で得られた知見は、古代の人間社会において性別に基づく分業があったことを示すと考えられる。
またHatalaたちは、北東に向かう6種類の足跡の軌跡について、移動速度のばらつきが大きいと推定しており、1つのグループにまとまって移動したのではなく、一人一人がそれぞれ異なる速度で走ったり、歩いたりして移動したのではないかと考えている。
以上の新知見は、後期更新世に東アフリカで生活していた現生人類の移動と集団行動の一面を垣間見せてくれている。
doi:10.1038/s41598-020-64095-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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