Research Press Release
地球科学:地球の大気の酸素レベルは10億年後には低い状態に戻る可能性がある
Nature Geoscience
2021年3月2日
地球の酸素に富んだ大気は、およそ10億年後には、酸素が少なくメタンに富んだ組成に戻る可能性があることを報告する論文が、Nature Geoscience に掲載される。この知見は、大気中の酸素が、生命が存在可能な世界で永続するものではないことを示唆しており、他の地球型惑星における生命の探索に影響を及ぼす。
惑星における生命の可能性の指標は、検出可能で、酸素に富んだ大気であり、こうした大気は植物や光合成の存在を示唆している。酸素を多く含む現在の地球大気は、その生物圏の特徴である。しかし、地球大気における酸素に基づくこうした生命存在の指標の寿命は、特に遠い将来においては定かではない。
今回、東邦大学の尾﨑和海(おざき・かずみ)講師とChristopher Reinhardは、気候や生命過程・地質過程などの地球のシステムをモデル化し、地球の大気条件の時間スケールを検証した。その結果、地球の酸素に富んだ大気は、今後およそ10億年は継続するが、その後は急速な還元作用によって約25億年前の大酸化事変以前の初期地球を思わせるような大気になることが明らかになった。尾崎たちは、地球上で大気中の酸素を検出できるのは、地球の寿命の20~30%にすぎないと示唆している。尾崎たちは、同じことが他の惑星にも当てはまるならば、地球外生命の探索には、さらに別の生命存在の指標が必要になると述べている。
doi:10.1038/s41561-021-00693-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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