Research Abstract
RSS1はストレス条件下でイネの細胞周期を調節し、メリステムの活性を維持する
本論文では、イネのタンパク質であり、その安定性が細胞周期に依存した制御を受けるRSS1が、塩濃度の高い条件下での分裂細胞の活性、および生存能にかかわっていることを明らかにする。
RSS1 regulates the cell cycle and maintains meristematic activity under stress conditions in rice
2011年4月12日 Nature Communications 2 : 278 doi: 10.1038/ncomms1279
植物の成長発達はメリステム(分裂組織)中で連続的に起こる細胞分裂により維持されているが、このような分裂はさまざまな環境ストレスの影響を受ける。メ リステム機能の維持には、細胞分裂が細胞の分化と協調して行われることが不可欠である。しかしながら、ストレス条件下で、分裂組織での細胞増殖能や、細胞 分裂と分化の協調がどのようにして維持されるのか、その仕組みはわかっていない。本論文では、イネのタンパク質であり、その安定性が細胞周期に依存した制 御を受けるRSS1が、塩濃度の高い条件下での分裂細胞の活性、および生存能にかかわっていることを明らかにする。RSS1のこのような働きはG1-S期 の移行の調節によるもので、おそらくはRSS1とプロテインホスファターゼ1の相互作用を介してなされ、また、植物ホルモンであるサイトカイニンによって 仲介される。RSS1は、真性双子葉類以外の植物系譜で広く保存されており、このことはRSS1に依存する機序が被子植物の進化的放散が起きたときに特定 の系譜で採用されてきたことを示唆している。
- 名古屋大学 生物機能開発利用研究センター
- 農業生物資源研究所
- 理化学研究所 植物科学研究センター
- 名古屋大学大学院 生命農学研究科
Plant growth and development are sustained by continuous cell division in the meristems, which is perturbed by various environmental stresses. For the maintenance of meristematic functions, it is essential that cell division be coordinated with cell differentiation. However, it is unknown how the proliferative activities of the meristems and the coordination between cell division and differentiation are maintained under stressful conditions. Here we show that a rice protein, RSS1, whose stability is controlled by cell cycle phases, contributes to the vigour of meristematic cells and viability under salinity conditions. These effects of RSS1 are exerted by regulating the G1–S transition, possibly through an interaction of RSS1 with protein phosphatase 1, and are mediated by the phytohormone, cytokinin. RSS1 is conserved widely in plant lineages, except eudicots, suggesting that RSS1-dependent mechanisms might have been adopted in specific lineages during the evolutionary radiation of angiosperms.