Research Highlights

酵母Saccharomyces cerevisiae代謝ネットワークの転写制御原理

Nature Biotechnology 22, 1 doi: 10.1038/nbt918

細胞ネットワークは包括的制御を受けており、構成要素間の連絡の起こりやすさおよび効率が外部条件に応じて調節される。これまで、大規模ネットワークの研究では連結性が注目され、連結性の調節がネットワークの特性をいかにして決定するかは検討されてこなかった。この問題に取り組むため、我々は、酵素の協調的発現がいかにして酵母Saccharomyces cerevisiaeの代謝ネットワークを成り立たせているかを解析した。大規模発現データを代謝ネットワークの構造情報と統合することによって、代謝経路の転写制御が体系的に解明された。この解析では、代謝遺伝子制御の設計原理と考えられる重出パターンが明らかにされた。まず、転写制御系では、代謝分岐点の特定分岐経路のみを共発現することによって、代謝の流れが直線的となる方向に偏ることがわかった。次に、個々のアイソザイムはそれぞれの過程で別々に共調節され、共通の反応を用いる経路同士の交錯を減少させる手段となっていることが多かった。最後に、転写制御系によって、代謝経路は、多様な発現干渉性をもつグループの階層構造として規定された。今回の結果は、制御に関する情報を大規模細胞ネットワークの特性解析に組み込むことの有用性を強く主張するものである。

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