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量子ドットリガンドがもたらすerbB/HER受容体媒介型シグナル伝達の新たな知見

Nature Biotechnology 22, 2 doi: 10.1038/nbt929

膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(RTK)であるerbB/HERファミリーは、上皮成長因子(EGF)および関連リガンドに対する細胞応答を媒介する。生細胞内の初期のRTK依存性シグナル伝達を、(i)可視蛍光タンパク質(VFP)と融合したerbB1/2/3の恒常発現、(ii)蛍光量子ドット( Q D ) に上皮成長因子を固定したもの(EGF-QD)、および(iii)連続共焦点レーザー走査顕微鏡およびフローサイトメトリーを利用して画像化した。本論文では、EGF受容体(erbB1)がEGF-QDと特異的に強く結合して活性化され、能動輸送および大規模な融合を行うエンドソームにEGF-QDが迅速に取り込まれることを示した。糸状仮足に発現するerbB1に結合したEGFQDによって、細胞体への逆行性輸送がもつ未知のメカニズムが明らかにされた。erbB2-単量体黄色蛍光タンパク質(mYFP)またはerbB3-単量体シトリン(mCitrine)をerbB1と共発現させた場合、EGF-QDおよびRTK-VFPのエンドサイトーシス速度および規模から、EGF刺激を与えるとerbB2のみがerbB1とのヘテロ二量体を形成し、これによってEGF誘導性シグナル伝達を調節していることが示された。QD-リガンドは基礎研究およびバイオテクノロジーの技術開発で広範囲に利用されると考えられる。

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