Article ヒトES細胞の増殖および分化を制御するシグナル伝達ネットワークのトランスクリプトーム解析による解明 2004年6月1日 Nature Biotechnology 22, 6 doi: 10.1038/nbt971 ヒト胚性幹(hES)細胞は、代償療法用の細胞を無尽蔵に供給するものとして期待されている。今回、hES細胞の特徴を分子レベルで明らかにするために、未分化hES細胞およびこれに由来する3種類の分化細胞集団から発現配列タグ(EST)148,453個を得た。hES細胞が発現していた転写物32,000種類以上が同定され、このうち16,000個以上はUniGene公共データベースのいずれの遺伝子とも類縁関係になかった。Unigeneデータベースへの照会の結果、未分化hES細胞には、有意に発現が増大した遺伝子が532個、有意に発現が低下した遺伝子が140個確認された。今回得たデータから、hES細胞が分化するときに起こる転写ネットワークの変化が浮き彫りになった。特異的な調節を受ける遺伝子のなかには、シグナル伝達経路の構成要素および転写調節因子のものが複数含まれ、hES細胞の増殖および分化に重要な役割を果たしていると考えられる。本論文に示すゲノムデータを利用すれば、臨床的に有用な細胞のhES細胞からの誘導が促進される可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る