Perspective テラプレビルの発見と開発:慢性C型肝炎ウイルス遺伝子型1型を治療するためのNS3-4Aプロテアーゼ阻害剤 2011年11月1日 Nature Biotechnology 29, 11 doi: 10.1038/nbt.2020 C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、世界で1億7,000万人以上が罹患する重大な医学的問題である。罹患率および死亡率の高さは肝臓での疾患発現(肝硬変および肝細胞がん)と関連があり、これはHCVに感染してから20年以上経過した患者で発生頻度が上昇する。肝臓外の発現を伴うHCV疾患(糖尿病、B細胞増殖障害、うつ病、認知障害、関節炎およびシェーグレン症候群)の負荷は、あまり知られていない。HCV遺伝子型1型感染患者では、ポリエチレングリコール修飾インターフェロン(ペグインターフェロン)αおよびリバビリン(PR)を用いる治療の奏効率が低く(40~50%)、治療を制限する重大な副作用が見られ、治療期間が長い(48週間)。ここ15年間の大幅な科学的進歩により、直接作用性抗ウイルス剤、またはC型肝炎特異的標的抗ウイルス療法(STAT-C)とも呼ばれる新しい種類のHCV治療法の開発が実現された。慢性HCV遺伝子型1型の治療用として、HCVのNS3-4Aプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビルをPRと併用する方法は、米国、カナダ、欧州連合、および日本で最近承認された。PRと比較して、テラプレビル併用療法はウイルス治癒率が大幅に向上し、さまざまな患者集団で治療期間が短縮される可能性がある。革新的な薬剤の開発者は、方向を示すわずかな検証済みの道しるべを頼りに、新しい道を切り開く必要がある。実際、テラプレビルの開発は、標準的なIC50試験の成績によっていったん中断されたことがある。それ以上の投資を正当化し、臨床試験の失敗リスクを低下させるためには、新しい仮説および新規の実験によるデータが必要であった。さらに、テラプレビルの薬剤としての特性には問題があり、製造および製剤のチームが薬剤を完成させるためには、それを克服しなければならなかった。最後に、有効性を改善し、連続ではなく並行とすることで治療期間を短縮するため、新しい臨床試験計画が立案された。テラプレビルの開発から得られた教訓は、革新的な薬剤の製造会社が、従来の薬物探索基準のみに依存せず、成功に向けて科学的指針に基づく革新的な経路を切り開かなければならないことを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る