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単一細胞レベルの解析法によるヒト結腸腫瘍の転写不均質性の証明

Nature Biotechnology 29, 12 doi: 10.1038/nbt.2038

がんは正常組織の発生過程を模倣しているという見解があるものの、がん組織内の細胞の不均質性が正常組織の多系統分化プロセスとどの程度類似しているかはいまだ解明されていない。我々は、ヒト正常結腸上皮組織および原発結腸がん組織の細胞組成を詳細に分析するため、単一細胞レベルでのPCR遺伝子発現解析を行った。これにより、ヒト結腸がん組織には、正常結腸組織のさまざまな系統の細胞と転写の特徴が酷似する特有の細胞群が含まれていることが明らかにされた。さらに単一(n = 1)の細胞を皮下移植し、単クローン由来の腫瘍異種移植片を作製することにより、がん組織内に見られる転写多様性が、クローン内の遺伝子不均質性のみならず、おおむね生体内での多系統分化によって生み出されている可能性があることを実証した。最後に、多系統分化に関するさまざまな遺伝子発現プログラムが患者の生存率に強く関連することを明らかにした。我々が開発した2遺伝子分類システム(KRT20 vs CA1, MS4A12, CD177, SLC26A3)を用いることにより、病理学的悪性度判定を上回る感度で臨床転帰が推測される可能性があり、さらにこのシステムはマイクロアレイによる多系列細胞遺伝子発現解析システムと同等のハザード比を有していることが示された。

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