Perspective
内耳の生体電池からのエネルギー抽出
Nature Biotechnology 30, 12 doi: 10.1038/nbt.2394
蝸牛内電位(EP)は、内耳に存在して内耳によって能動的に保持されている電池様の電気化学的勾配である。今回我々は、哺乳類のEPが電子装置の電源として利用可能であることを明らかにした。我々はそれを、EP自体を監視することができる無線センサーを組み込んだ小型の超低待機電力エネルギー回収チップを設計することで実現した。下等生物ではほかの形のin vivoエネルギー回収が報告され、熱電装置、圧電装置、およびバイオ燃料装置の哺乳類への応用が期待されているが、耳、目、または脳の近傍ではin vivoで証明された例がほとんどない。今回作製したチップは、モルモットのEPから最小1.12 nWの電力を最長5時間にわたって抽出し、2.4 GHz無線によってEPの測定値を40~360秒ごとに伝送することができた。電極の設計を最適化すれば、内耳の生体電池を利用して、難聴などの障害を診断および治療するための化学・分子センサーまたは薬物送達アクチュエーターに電力を供給することが可能になると予想される。