Perspective
低分子調節物質にかく乱される細胞状態の多重マスサイトメトリープロファイル解析
Nature Biotechnology 30, 9 doi: 10.1038/nbt.2317
マスサイトメトリーは生物活性分子がヒト検体に及ぼす影響を1細胞の分解能で高次元定量解析するのに有用であるが、その装置では複数の検体を同時に処理することができない。本論文では、n種類の金属イオンタグによる2nもの検体の多重化によってマスサイトメトリーの処理能力を向上させる「マス-タグ細胞バーコード化法(MCB)」を紹介する。我々は、7種類のタグを用いて96穴プレート全体を多重化し、MCBを用いてヒト末梢血単核細胞(PBMC)のシグナル伝達動態および細胞間情報伝達、ヒトドナー8例から得たPBMCのシグナル伝達の多様性、ならびにこのシステムに対する27種類の阻害剤の影響を解析した。各阻害剤に関して14種類のPBMCのリン酸化部位14か所を96通りの条件で測定することにより、それぞれの多重化検体から18,816通りのリン酸化レベルが定量された。この高次元なシステムレベルの研究により、細胞の種類およびシグナル伝達空間の全体にわたる解析が可能となり、阻害剤が再分類されて非特異的作用が明らかにされた。MCBによる大情報量の高処理能スクリーニングは、医薬探索、前臨床試験、およびヒト疾患のメカニズム研究に有用と考えられる。