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遺伝子操作による線虫の全親ゲノムの非メンデル遺伝
Nature Biotechnology 34, 9 doi: 10.1038/nbt.3643
遺伝の分離の法則を変えることができれば、育種からエピジェネティクスまで、バイオテクノロジーの多岐にわたる分野に新たな可能性が開かれると考えられる。今回我々は線虫Caenorhabditis elegansで、接合子の第一細胞分裂中に紡錘体の構造を変化させることにより、父母の全ゲノムの非メンデル遺伝を実現した。保存された微小管力調節因子GPR-1という単一タンパク質の生殖系列特異的な過剰発現により、紡錘体極を引っ張る力を強化して、1つの双極紡錘体を2つの単極紡錘体に変換した。これにより、片方の細胞が母親の染色体のみを、もう片方の細胞が父親の染色体のみを持つ2細胞胚が生じた。胚の発生が進行すると、生殖細胞を含む各細胞は一方の親の遺伝物質のみを含み、ハイブリッドのF1動物が生じた。このF1の子(F2)は、F0母かF0父のどちらか一方の染色体のみを受け継ぎ、祖父母のいずれかの配偶子のみに由来するものとなった。