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コンビナトリアル抗体ライブラリーから選択した抗体で再プログラム化因子を置き換える
Nature Biotechnology 35, 10 doi: 10.1038/nbt.3963
分化細胞の誘導多能性幹(iPS)細胞への再プログラム化は、通常、核内で作用する因子で外部から転写を誘導することによって行われる。対照的に、発生では、膜から開始されるシグナル伝達経路が分化を誘導する。本研究の中心的な発想は、細胞表面で作用することによって細胞の脱分化および核の再プログラム化を触媒することのできる抗体を発見することである。我々は、分泌型および膜結合型の一本鎖抗体約1億個をコードするレンチウイルスライブラリーをスクリーニングし、マウス胚繊維芽細胞のiPS細胞への再プログラム化でSox2およびMyc(c-Myc)、またはOct4のいずれかに代えて用いることのできる抗体を発見した。我々は、Sox2の代わりとなるある抗体が膜結合型タンパク質Basp1を遮断し、それによってSox2とは無関係に核因子WT1、Esrrb、およびLin28a(Lin28)を脱抑制することを示した。この経路を操作することにより、3通りのiPS細胞樹立法が見いだされた。本研究の結果から、自己分泌型コンビナトリアル抗体ライブラリーからの偏りのない選択が、新たな生物製剤の創薬ならびに多能性および細胞運命を調節する細胞膜から核内へのシグナル伝達経路の発見を行うための確かな方法であることが確認された。