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加齢黄斑変性に対する胚性幹細胞由来網膜色素上皮パッチの第I相臨床試験
Nature Biotechnology 36, 4 doi: 10.1038/nbt.4114
加齢黄斑変性(AMD)は今なお失明の大きな原因であり、疾患進行の中核は網膜色素上皮(RPE)の機能障害および喪失である。我々は、被覆人工基底膜上で完全に分化したヒト胚性幹細胞(hESC)由来のRPE単層からなるRPEパッチを作製した。目的に合うように設計したマイクロサージェリー用ツールを用いて、重度の滲出型AMD患者2例のそれぞれの片眼の網膜下腔内にこのパッチを導入した。主要エンドポイントは、有害事象の発生率および重症度、ならびに最高矯正視力の改善が15文字以上の被験者の割合とした。RPEパッチが問題なく導入されて残存したことが生体顕微鏡法および光コヒーレンストモグラフィーで確認され、患者2例には12か月間でそれぞれ29文字および21文字の視力改善が認められた。長期的に用いられた免疫抑制は局所的なもののみであった。本論文では、試験の承認を導いた前臨床外科試験、細胞安全性試験、および腫瘍原性試験も紹介する。本研究は、AMDの再生戦略としてのhESC-RPEパッチ移植の実施可能性および安全性を支持している。