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インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを介したがん免疫抑制が治療用酵素による全身のキヌレニン枯渇で解除される
Nature Biotechnology 36, 8 doi: 10.1038/nbt.4180
腫瘍微小環境(TME)でのトリプトファン(Trp)異化の亢進は、インターフェロン(IFN)-γ誘導性のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)や、主に肝臓に限定される酵素トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)の発現上昇に伴って、免疫抑制を生じる場合がある。こうした作用がTME内のTrp欠乏によるものなのか、それともIDO1やTDO(以下IDO1/TDO)の産物であるキヌレニン(Kyn)の蓄積によって生じるのかは、議論が続いている。今回我々は、Kynを免疫活性がなく無害で排出の容易な代謝物に分解する薬理学的に最適化した酵素(PEG化キヌレニナーゼ、以下PEG-KYNase)を投与すると、腫瘍の増殖が阻害されることを明らかにした。酵素による治療は、多機能性CD8+リンパ球の腫瘍への浸潤および増殖の著明な増強を伴った。PEG-KYNaseの投与は、承認済みのチェックポイント阻害剤や、大型のB16-F10黒色腫、4T1乳がん、もしくはCT26大腸がんの治療用がんワクチンと併用すると、高い治療効果が得られることが分かった。PEG-KYNaseは、TME内でKynを長期にわたって枯渇させ、TME内のIDO1/TDO発現上昇の調節作用を解除した。