Article

E-カドヘリンを発現する腫瘍溶解性ヘルペスウイルスが神経膠芽腫マウスモデルの生存率を向上させる

Nature Biotechnology 37, 1 doi: 10.1038/nbt.4302

腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)は腫瘍内に十分拡散せず、自然免疫エフェクター細胞によって迅速に排除されるため、有効性に限界がある。これを克服するために、本研究では、ナチュラルキラー(NK)細胞の阻害および腫瘍内ウイルス拡散の増強という2つの手法を組み合わせた。我々はoHSVを改変して、NK細胞上に発現する抑制性受容体KLRG1のリガンドである接着分子E-カドヘリンをコードするCDH1を発現させた。OV-CDH1と命名したこの改変ウイルスは、in vitroにおいて、一般的には内因性のE-カドヘリンを持たない神経膠芽腫(GBM)細胞に侵入し、E-カドヘリンを細胞表面に高発現させた。異所的に発現したE-カドヘリンは、細胞間感染およびウイルス侵入を促進することによってOV-CDH1の拡散を増強し、OV-CDH1感染細胞をKLRG1+ NK細胞による殺傷から選択的に保護することによってウイルスの排除を抑制した。in vivoでは、OV-CDH1治療によってGBMマウスモデルの生存期間が大幅に延長したが、それはNK細胞活性の阻害ではなくウイルス拡散の改善によるところが大きかった。このように、ウイルス誘導性のE-カドヘリンの過剰発現は、がんのウイルス療法を改善する一般化可能な戦略となる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度