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ヒト病原体への指向性を高めた精密マウスモデル
Nature Biotechnology 37, 10 doi: 10.1038/s41587-019-0225-9
現在のヒト化マウスモデルには、解析を可能にするヒト特異的病原体は造血細胞に侵入するものが主体であるという大きな制約がある。一方、多くのヒト病原体は、上皮細胞、内皮細胞、間葉細胞など、別の細胞型を標的としている。本論文では、非造血性細胞など40種類もの細胞型を含むヒト肺組織を免疫不全マウスに移植すると(「肺のみヒト化マウス」)、極めて密な血管網を持つ移植肺が発達したことを明らかにする。この移植肺では、中東呼吸器症候群コロナウイルス、ジカウイルス、RSウイルス、サイトメガロウイルスなど、臨床的に重要な新興病原体がin vivoで増殖することが示された。骨髄/肝臓/胸腺ヒト化マウスに組み込むと、移植肺では自己のヒト造血細胞が再増殖した。サイトメガロウイルスに感染させると、強力で抗原特異的な体液性免疫応答およびT細胞応答が生じてウイルスの増殖が制御されることが明らかになった。肺のみヒト化マウスおよび骨髄/肝臓/胸腺・肺ヒト化マウスはin vivoで研究可能なヒト病原体の数を大幅に増加させ、治療薬のin vivo試験を促進する。