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複素環脂質によるmRNAワクチンの送達はSTINGを介する免疫細胞活性化によって抗腫瘍効果を高める
Nature Biotechnology 37, 10 doi: 10.1038/s41587-019-0247-3
治療用のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは抗原全体の送達を可能とする。これはペプチドワクチンに対する優位点となり得る。しかし、最適な効果には、抗原の翻訳を可能にするための細胞内送達と、適切な免疫活性化の両方が必要である。今回、in vivoのmRNA送達を促進して強力かつ特異的な免疫活性化を生じるmRNA送達媒体を発見するために、イオン化する脂質様物質のコンビナトリアルライブラリーを構築した。三次元多成分反応系を用いることで、1000種類以上の脂質製剤のワクチン候補を合成し、その評価を行った。最有力の候補製剤は強力な免疫応答を誘発し、黒色腫およびヒトパピローマウイルスE7のin vivo腫瘍モデルで腫瘍の増殖を阻害して生存期間を延長させることができた。最高の能力を示す脂質群は、不飽和脂質の尾部、ジヒドロイミダゾールのリンカー、環状アミンの頭部という共通の構造を有している。そうした製剤は、Toll様受容体ではなく細胞内のSTING(stimulator of interferon genes)経路を介して抗原提示細胞の成熟を誘導し、限定的な全身性サイトカイン発現および高い抗腫瘍効果を生じる。