Article
超高輝度の近赤外IIb希土類ナノ粒子による免疫療法のin vivo分子撮像
Nature Biotechnology 37, 11 doi: 10.1038/s41587-019-0262-4
近赤外IIb域(NIR-IIb;1500~1700 nm)は哺乳類の深部組織の光学撮像に最適であるが、高輝度の生体適合性プローブが存在しない。今回我々は、マウスのがん免疫療法の動的撮像用に、約1600nmで高輝度のダウンコンバージョン・ルミネセンスを示す生体適合性の立方相(α相)エルビウム系希土類ナノ粒子(ErNP)を開発した。架橋親水性高分子層で官能化したErNPを抗PD-L1(programmed cell death-1 ligand-1)抗体に結合させ、PD-L1の分子撮像用に大腸がんマウスモデルで用いると、腫瘍対正常組織で約40というシグナル比が得られた。ErNPはルミネセンスの寿命が長い(約4.6 ms)ため、同じ約1600 nmの波長域で発光する硫化鉛量子ドットとの同時撮像が可能であった。PD-L1およびCD8のin vivo NIR-IIb分子撮像により、免疫療法に対応する腫瘍微小環境の細胞傷害性Tリンパ球が発見されるとともに、免疫活性化による腫瘍および脾臓のCD8シグナルの変化が明らかになった。マウスでは架橋官能化層によってErNPの90%が2週間以内に排出され、検出可能な毒性は認められなかった。